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アナログ非搭載録画機の補償金問題は「消費者の問題」

−主婦連合会とMIAUが会見


10月29日開催


 主婦連合会と一般法人インターネットユーザー協会(MIAU)は29日、私的録画補償金管理協会(SARVH)による東芝に対しての補償金支払いを求める訴訟提起について、記者懇親会を開催した。

 この問題は、地上アナログチューナ非搭載のデジタル録画機器が私的録画補償金の対象となるか、という点において、権利者団体と機器メーカーの思惑の違いによるもの。日本における私的録音/録画補償金は、補償金の支払者を消費者に設定し、メーカーがデジタル録音/録画機器に補償金を上乗せして販売。消費者の製品購入価格に補償金を含むという形で徴収されている。徴収された補償金は、機器については社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が、メディアは日本記録メディア工業会(JRIA)が取りまとめ、録音補償金は私的録音補償金管理協会(sarah)に、録画補償金はSARVHに支払われる。

 東芝は、2月に発売した地上アナログチューナを内蔵しないデジタル放送専用録画機について、5月から「補償金の課金対象になるか明確になっておらず、現時点で徴収できない」という立場をとり、補償金を上乗せして販売していなかった。これを受けてSARVHは、9月30日の補償金支払い期限も補償金の支払い行なわなかったとし、10月21日の理事会で東芝に対して補償金の支払いを求める訴訟提起を決定した。

 しかし、「地上アナログチューナ非搭載のDVD録画機器を、私的録画補償金の対象機器とするか否か」については、機器メーカーと権利者団体の間で意見対立が続いていた。また、5月の著作権法改正時における文化庁の施行通知においても、「(アナログチューナを搭載していないレコーダが出荷される場合、アナログ放送終了以降において)関係者間の意見の相違が顕在化する場合には、その取扱いについて検討し、政令の見直しを含む必要な措置を適切に講ずる」と課題を認識し、調整の必要性が明文化されていた。

 だが、9月にSARVHが「アナログチューナ非搭載DVD録画機器」が政令の対象かどうかを文化庁に照会したところ、著作権課長名で対象機器である旨を回答。JEITAは、9月14日に「関係者の合意のないまま、なぜ対象といえるのか」と、文化庁に照会したところ、9月30日付で「文化庁として現行法令の解釈を示したものであり、5月22日の文化庁次長通知に則ったもの」との回答を受けたという。

 代表者を出し、文化庁の文化審議会著作権分科会 私的録音録画小委員会などで補償金問題に取り組んできた主婦連合会とMIAUがこの動きに反対する声明を出しており、主婦連合会は10月7日に発表、MIAUも13日に意見を発表していた。いずれも、施行通知を無視した一方的な見解として、文化庁長官官房著作権課長の回答を撤回し、議論の結論が出るまで保留することと、消費者や権利者、メーカーを含む公明で透明性の確保された審議の場において合意すべきと提案していた。

 しかし、文化庁の見解などを元にSARVHが訴訟提起を決定。このため主婦連合会とMIAUは共同で、問題点を周知するための会見を開催したという。

 


■ メーカー対権利者ではなく、「納得できる制度を」

主婦連合会 河村真紀子氏

 主婦連合会の河村真紀子氏は、7日に提出した意見/要望について説明し、今回の文化庁著作権課長名で出された、アナログチューナ非搭載録画機を対象機器とする文書について、「何の審議も経ずに出されたことは誠に遺憾」と表明。

 さらに「技術的に複製を制限されている無料デジタル放送を補償金の対象にすべきでない」、「公共性の高い基幹放送である地上波放送で世界で唯一複製制限技術が施させ自由を制限され、そのためのコスト負担をし、その上私的録画補償金も課されるということは消費者の権利の侵害」とし、「消費者庁も含め、もっと広く議論すべき」と語った。


MIAU津田大介氏

 MIAU代表理事の津田大介氏は、「消費者は補償金を払いたくないわけではない。ただ納得できる理由が必要。補償金が作られた経緯は、デジタルの発達で大量に複製でき、流通できるのでコピーが出回る。だからその逸失利益を補償するというもの。そのコピーの主体は消費者なので消費者から補償金徴収する、という考えだったはず。しかし、デジタル放送ではダビング10になっても、コピーは制限されており、そこでは権利者の損失は少なくなっている。“DRMが厳しくかかっているので補償金は不要”、“自由に複製できるのであれば補償金は必要”のいずれがだと思うが、権利者の方は“DRMを厳しく、複製ができるから補償金も”という主張。そこの筋をどう考えるのか」と問題点を指摘。

 さらに、5月の施行通知ついては、「『両省はこのような現行の補償金制度の有する課題を十分に認識しており(中略)今後の関係者の意見の相違が顕在化するときは必要な措置を講ずる』と書いてある。東芝の今回の機種はデジタルのダビング10にしか対応しておらず、孫コピーもできない。コピーが一般的に流通するような可能性は低い。この機器による逸失利益がどれくらいあるのか? という点で議論が分かれたので、これから話し合いましょうというのが、施工通知や両省の合意文書のはず。にもかかわらず、文化庁の課長が(補償の対象に)“含まれる”と自分の裁量で発表した。法令を行政の解釈により運用できることがいい場合もあるが、今回に関しては先走りではないかと考えている」との見解を示し、当事者間の調整なく出された回答について「いままでの議論は何だったのだという憤りを感じる」と語った。

 さらに、「補償金の支払い主体は消費者」という点を強調。「多くの記事で、“東芝が払うべき補償金を払っていない”となっているが、払うのは”消費者”でメーカーは協力義務に応えているだけ。本質はメーカー対権利者でなく、納得できる補償金を消費者が払うか、払わないか。そこで筋が通って論理的な整合性があるかどうか、ということが重要ではないか」と語った。

 裁判が起きた場合については、「どういう結末になるかわからない」としながらも、「SARVHにはメーカーの理事もいる。訴訟費用は一般会計から出すので、集めた訴訟金で、クリエーターの財産の一部を使って、内部にいるメーカーを提訴する。ある種の暴挙だと思う。訴訟になってしまったら、ほかに話し合いの場をつくってもしようがない」と言及。「その前にどうかできるのは行政しかないので、そういう場を作ってほしい」と訴えた。

 JEITAの長谷川英一 常務理事は、「JEITAとしての主張は、2月のパブリックコメントなどでも“こういう問題が起きますよ”ということは言ってきている」とし、「文化庁はメーカーが早い段階で売っていることを知っていたはず。その上で、9月になって対象機器ですよと表明されるとどうしようもない。既に売ってしまった人からは補償金は徴収できない。“顕在化したら議論しよう”ということになってたはずが、なぜ9月に突然そうなるのか」と疑問の声をあげた。

 なお、両団体の意見表明やJEITAの声明、SARVH理事会における訴訟の方針決定後も、特に行政からの動きはないとのことだが、主婦連合会やMIAUでは消費者庁や関連機関に対しても、この問題への取り組みを呼びかけていく方針。「8月に消費者庁ができて、それを取り上げてほしいということで、声明も提出した。昨日消費者庁に出向いて説明をしている(MIAU代表理事の小寺信良氏)」という。

JEITA長谷川英一常務理事 MIAU 小寺信良氏

(2009年 10月 29日)

[ AV Watch編集部 臼田勤哉]



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