ViXS、AVCで2番組同時にHD録画できる新エンコードチップ

-「XCode IV」。USB給電の小型変換ユニットも実現可能


XCode 4115

11月30日発表


 カナダのViXS Systemsは30日、HD画質でのMPEG-4 AVC/H.264変換が可能なエンコード/トランスコードチップの「XCode 4100」(XCode IV)シリーズ2製品を発表した。サンプル出荷は既に始めており、12月より量産を行なう。

 新製品のうち、「XCode 4115」は2つのフルHD MPEG-2ファイル(1080/60iまたは30p)をAVC形式へ1チップで同時にリアルタイムトランスコードできることが特徴。BDレコーダなどで2番組同時のAVC長時間録画が可能になるほか、1つの番組をAVC録画している最中に、別の番組を携帯電話用のファイルに変換することもできる。なお、シングルトランスコード時は1080/60pもサポート。BD/DVDレコーダや高機能メディアサーバーなどへの採用を想定している。

XCode 4105

 「XCode 4105」はシングルトランスコードのみだが、低消費電力化により約1.1Wでの駆動を実現。USBバスパワーで動作できるため、同チップを内蔵したUSBドングルを、レコーダなどに直挿しして携帯電話向け動画を作成するという外付けトランスコーダが製品化できるとしている。

 CPUは、両製品ともVirageLogic(ビラージロジック)のARC 1250 DMIPSプロセッサを搭載。従来のXCode IIIシリーズに比べCPU性能を高めたことで、ブロックノイズ対策など個別の項目で画質改善を行なうカスタマイズにも対応できるとしている。入力フォーマットはMPEG-2やAVC、VC-1などで、MPEG-2/4(SP/ASP)やAVCへの変換に対応する。

 デュアルAVCエンコードに対応する「XCode 4115」は、1つの番組を録画しながら、携帯電話などポータブル機器向けの動画も同時に生成する変換機能「Mirror Encode/Transcode」も向上。ポータブル向けはこれまでSD解像度への変換に限られていたが、最大でフルHD解像度のままでも変換できるようになった。


両製品の主な特徴XCode 4115はデュアルAVCトランスコードに対応低消費電力のXCode 4105は、USBバスパワーで駆動する小型エンコーダを実現可能とする

 また、XCode 4115にはDLNAサーバー(DMS)対応のソフトウェアスタックを用意。クライアント側の再生対応フォーマットに応じて、動画を変換しながら伝送し、ストリーミング再生を行なうレコーダやSTBなどが実現できる。現在、DLNA 1.0/1.5やDTCP-IP 1.0/1.1などの認証をUPnPフォーラムから得ており、DLNAによる認証も今後取得予定としている。同社はこうしたソフトウェアでの付加機能を「Xtensiv」(エクステンシブ)ソフトとして提供する。

両製品の仕様詳細。左は4115、右は41054115はDLNAサーバー機能に対応可能で、動画をトランスコードしながら配信できる
両製品の評価ボード(右)でデモ

 発表会場では、評価ボードを使用してXCode 4115のデュアルAVCエンコードなどのデモを行なった。20Mbpsで1分間のフルHD MPEG-2映像2つを、6Mbps程度のAVCに変換。実時間を下回る約55秒で変換し終えた。

 また、XCode 4105を用いた高速エンコードデモでは、同様のMPEG-2からAVCの変換が2倍速以上の約27秒で完了。さらに、バッファローのネットワークメディアプレーヤー「Link Theater」を用いて、XCode 4115評価ボードと接続したLAN HDD内の動画をDLNAで再生するデモも行なった。


XCode 4115を使ったデュアルトランスコードのデモ(Windows上で動作)1分のMPEG-2コンテンツ2個を、実時間以内で変換した変換した動画をUSBメモリに入れ、バッファローのLink Theaterで再生
XCode 4105での高速トランスコードデモ(Linux上で動作)実時間の半分以下で変換が終了したDLNA機能を使用したストリーミング再生デモも行なった


■ DLNA/DTCP-IPなどのSOC機能向上も

社長兼CEOのSally Daub氏

 日本において、ViXSのXCodeシリーズは日立の薄型テレビやシャープ製BDレコーダ/BD搭載テレビ、東芝製DVDレコーダなどに採用。画質の劣化を抑えたAVC長時間録画機能を提供している。

 社長兼CEOのSally Daub氏は、「2006年に日立のWoooハイビジョンテレビにXCode 2100シリーズが搭載されて以来、ViXSはトランスコーダ/トランスレータ製品の標準になった。今後もトランスコード技術をリードし続け、画質においても常に最高の品質を提供する」と述べた。

 また、SOCビジネスの強化にも意欲を見せ、1チップでDLNAやDTCP-IP、IPTVなどの多機能を実現できる「Xtensiv」ソフトなどの技術を今後も向上させることで、次世代のデジタルテレビやBlu-rayレコーダなどに高機能のSOCを提供するとした。


XCode 4105での高速トランスコードデモ(Linux上で動作)実時間の半分以下で変換が終了したDLNA機能を使用したストリーミング再生デモも行なった

 同日には、ViXSのパートナー企業であり、XCodeシリーズのCPUを提供しているARCを11月に買収したビラージロジックから、音声ソフト新製品「Sonic Focus Adaptive Volume」が発表された。

 これは、インターネットの動画やBlu-ray/DVDなど異なるコンテンツを再生する場合に生じるボリュームの差を補正するもので、音量に対する人間の知覚をベースにした予測アルゴリズムを採用したことが特徴。番組本編とCMの音量のバラつきを補正するほか、VoIP通話後にインターネットの動画を視聴するといった場合などに効果を発揮するという。同社プロダクトマーケティングディレクターのKaren Parnell氏が来場し、新製品の特徴を説明したほか、今後もViXSと協力関係を強めていくとした。

同日に発表された「Sonic Focus Adaptive Volume」Adaptive Volumeのほか、Sonic Focusシリーズの様々な製品がテレビの音声機能を向上させるというビラージロジックのKaren Parnell氏


(2009年 11月 30日)

[AV Watch編集部 中林暁]