ヤマハ、サウンドプロジェクタYSP最上位「YSP-5100」
-ウーファ容積拡大やツイータ追加で「音を極めた」
ヤマハ株式会社は、「デジタル・サウンド・プロジェクタ」YSPシリーズの最上位モデル「YSP-5100」を12月下旬に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は20万円前後の見込み。カラーはブラック(B)のみ。
筐体サイズは4100が1,030×90×212mm(幅×奥行き×高さ)だったのに対し、奥行きや高さは維持しながら横幅を拡大、1,200×90×212mm(同)とし、50型台のテレビや、プロジェクタを用いたホームシアターでの利用を想定したサイズとなっている。対応室内サイズは6~30畳。なお、重量も4100の10kgから、11kgに増えた。
プロジェクタとの組み合わせも想定した最上位モデル | 外からは見えないが、筐体の両端にツイータを追加している | 高さと薄さはYSP-4100と変わりない |
薄型/横長の筐体に4cm径の小型フルレンジユニットを40個搭載し、指向性の高い音をビーム状に放出することで、音を部屋の壁や天井などに反射させてユーザーの横や後から音を聴かせ、サラウンド再生を実現する「デジタル・サラウンド・プロジェクタ」。小型ユニットを挟むように11cm径のウーファも2基搭載している。
5100では横幅が拡大されたことで、左右ウーファの容積が63%増加。これにより中低域の再生能力が高まり、4100では80Hzからだった低音再生が、70Hzまで伸びた。
ユニットの配置。中央に40個のユニットを備えるほか、両端にツイータを追加した |
前面下部のディスプレイ部と操作ボタン部 | 背面の入出力端子部。基本的に4100と共通だ | 背面の端は曲線を描いたデザインになっている |
サラウンド音声のデコード機能や内蔵アンプの出力など、そのほかの機能は4100と同じ。TrueHDやDTS-HD Master AudioなどのHDオーディオ対応のデコーダを内蔵する。アンプは2W×40、20W×2。
ビームモードは7.1chサラウンドに対応。「5ビームプラス2」、「ステレオ+3ビームプラス2」、「3ビーム」の3モードに加え、5.1chサラウンド時は「5ビーム」、「ステレオ+3ビーム」、「3ビーム」が利用できる。付属マイクで部屋の音響特性を測定し、音響処理やビーム特性を最適化する「インテリビーム」も搭載する。
HDMIリンク機能にも対応。東芝の「REGZA」と、日立「Wooo」の対象薄型テレビでは、EPGと連携した「おまかせサラウンド」機能も利用可能。EPGと独自の「シネマDSP」を連携させた機能で、番組のジャンルコードに合わせて、シネマDSPの設定を自動的に行なうというもの。例えば、ジャンルコードがスポーツの場合には、自動的にシネマDSPがスポーツモードに設定される。「音楽」、「映画」、「エンターテイメント」の3モード/11プログラムを用意し、「エンターテイメント」では「ゲームモード」も利用可能。
ビームの調整画面。焦点距離なども細かく設定できる | ビームを放出する角度なども調節できる | こちらは垂直角度を調節しているところ |
番組とCMの切替時などコンテンツ間の音量差を自動的に補正する「ユニボリューム機能」も装備。独自技術を用いて、BGMでセリフが聞こえにくくなる現象を防止したり、聴感特性を考慮した周波数補正を行なっている。そのほか、低音の増強に「Bass EXT」を搭載。携帯音楽プレーヤー接続時などに利用する圧縮音声補間機能「ミュージックエンハンサー」も備える。
HDMI入力は4系統、出力は1系統装備する。そのほかの映像入力はコンポーネント×1、コンポジット×1、音声入力はアナログ×2(RCA)、光デジタル×2、同軸デジタル×1。映像出力はコンポジット×1。サブウーファ用出力端子も備える。さらに、iPodトランスミッタ「YIT-W10」用受信機や、ワイヤレスウーファキット「SWK-W10」用送信機を本体に内蔵。FMチューナも備えている。
消費電力は55W。待機時消費電力は3.5W(HDMIコントロールON/無線用電源供給ON時)、0.5W以下(HDMIコントロールOFF/無線用電源供給OFF時)。リモコンや光ケーブル(1.5m×2本)、ピンケーブルなどが付属する。
また、薄型テレビと5100を一体で壁寄せ出来る、2種類の専用スタンドもラインナップ。ロースタイルの「YTS-T500」と、床の上に直接セットできる「YTS-F500」を用意する。
ロースタイルの「YTS-T500」 | 床の上に直接セットできる「YTS-F500」 |
■ 中低音の厚みに違い
4100はHDオーディオに対応する一方で、約9cmという従来モデルと比べて約40%の薄型化を実現。設置性やデザイン性をより高めたのが特徴。その一方で、エンクロージャの容積が減ったことで中低域の厚みが出にくいという面があり、5100は筐体を横方向に伸ばすことでウーファの容積を稼ぎ、カバーしている。
試聴はヤマハの専用ルームで行なった。防音対策がとられた専用ルームでは音をうまく反射させるために、反射板を設置している |
実際に5100の音を聴いてみると、DTS-HD Master Audio 7.1chのBlu-ray 「ヘアスプレー」では、男性俳優の声が太く、腰の据わったバランスの再生音になっていることがわかる。サブウーファを加えなくても、ある程度中低域に厚みがあるため、一般的なサウンドバータイプの製品でイメージされるハイ上がりの音とは異なる。
また、サブウーファを追加した場合も、YSP側の中域が薄いとサブウーファの低音の方が目立つ事があるが、5100の場合は中域に厚みがあるため、サブウーファの低音との繋がりも自然になり、全体のバランスが良好になるようだ。
「クリス・ボッティ/ライブ・イン・ボストン」(北米版BD)では、YSPシリーズらしい、音場の高さの描写が秀逸だ。音像の定位も極めて明瞭で、“本当に”背後から聞こえてくる拍手の音に包まれる包囲感は、バーチャルサラウンド製品ではなかなか味わえないクオリティと言える。5100ではその拍手も軽くならず、中域の厚さを伴った温かみのある拍手として聴かせてくれる。
また、ツイータを追加したことで、ステレオ再生も高品位なものになっている。特にシンバルの「チーン」という澄み切った高音の伸びが美しく、ツイータを使わない場合と比べて明瞭だ。筐体にかなり幅があるため、一体型のシステムではあるが、正面中央で聴くと、ステレオ感もしっかりと感じられる。
薄型大画面テレビを導入し、「音も本格的なサラウンドにしたいが、リアスピーカーは設置したくない。手軽に済ませたい」という従来のYSPシリーズのニーズに応える一方、音楽CDなどのステレオソース聴く機会が多いという人にも訴求するモデルと言える。また、中域の厚いシッカリとしたサウンドや、サブウーファとの繋がりの良さは、プロジェクタを導入した本格的なシアターの大画面と組み合わせても見劣りしない実力と言えそうだ。
(2009年 12月 3日)
[AV Watch編集部 山崎健太郎]