パナソニック、2010年度のLEDテレビの構成比を30%に
-三洋を含む新グループ方針。「サムスンに質の面で対抗」
パナソニックは8日、大阪府枚方市の人材開発カンパニーにおいて、同社・大坪文雄社長が、2010年経営方針説明を行ない、三洋電機を新たにグループに迎えた「新パナソニックグループ」としての方向性、2018年度に迎える創業100周年に向けたビジョンなどについて発表した。
パナソニックの大坪文雄社長 |
また、2012年度までの中期経営計画についても、6つの重点事業に取り組むことなどに言及したが、具体的な計画については、内部へのガイドラインとして、9兆5,000億円の売上高を目標とすることを示した以外は、「三洋電機の子会社化に伴い発足したコラボレーション委員会での検討報告を受けた2010年3月以降、決算説明の場を通じて改めて説明する」とした。
一方、薄型テレビ事業に関しては、2010年度の出荷計画として、年間2,000万台を掲げ、そのうち37型以上が50%を占めるとした。LEDバックライトを搭載した液晶テレビの構成比は、液晶テレビ全体の30%を占めるとしたほか、フルHD 3Dテレビを50型以上で展開。ボリュームゾーン展開においては、新興国向けにはCRTテレビを32型液晶テレビで置き換えるほか、米国のプロジェクションテレビ市場を、プラズマテレビの58型、65型の商品で置き換える戦略を打ち出した。また、2012年度以降、薄型テレビ全体で年間3,000万台の出荷を目指すとした。
薄型テレビ事業 | 3D 市場導入 |
経営方針の骨格 |
パナソニックの大坪文雄社長は、新パナソニックグループの方針として、「モノづくりで社会の発展・豊かなくらしに貢献するという不変の経営理念のもと、グループ一丸となって事業活動を進めていく」と前置きし、「パナソニックは、従来からくらしに関連したエレクトロニクス事業の領域で幅広く商品を展開してきた。そこに太陽電池や二次電池のキープレーヤーであり、業務用機器やデバイスにおいて強い事業を有している三洋電機が加わることで、グループとしての一層の広がりと深みが持てるようになる。このポンテシャルを生かして、シナジーの最大化に取り組む」とした。
成長・強化の観点では、「互いに学びあい、知恵を結集し、環境・エナジー関連で先頭に立つとともに、次の成長につながる新事業戦略を大胆に描いていく」としたほか、重複・課題事業について、「客観的に互いの強みを見極めた上で、強いところを生かし、やめるべきはやめる。課題を切り出し、一気にやりきるスピードが重要であり、すべてをお客様からみてどうかという観点で判断、実行し、ベストの姿を追求していく。現時点では、なにを残して、なにをやめるかというものは決まっていない。重複しているからただちにやめるというのではなく、かぶっていてもラインアップを揃えるということもでき、お互いに補完できるものは残す。また、どちらがもともと優位だったのかということを前提に客観的に判断することも必要である。将来を見据えてシナジーを生める事業なのか、現状よりも大きくなる事業なのかという判断も重要」とした。
新パナソニックグループの方針。「モノづくりで社会の発展・豊かなくらしに貢献する」 | 「シナジーの最大化に取り組む」 |
■ 「3DテレビやLEDテレビといった新領域の開拓に注力」
2018年度の創業100周年に向けたビジョンとしては、あるべき姿を「エレクトロニクスNo.1の環境革新企業」と位置づけ、世界中の人々に持続可能で、より安心、より快適、より楽しいくらしを提案する「グリーンライフイノベーション」と、事業活動で究極の環境負荷低減を実現し、そのなかで生み出した技術やアイディアなどを社会に広く提言していく「グリーンビジネス・イノベーション」の2つを掲げ、「全事業の基軸に環境を置き、イノベーションを起こす」としたほか、目指すべきグループ経営の姿として、「グローバルネットワーク経営」、「個客接点No.1経営」、「シナジー創出経営」の3点を掲げた。
グループとしての事業構造変化 |
また、2018年度のエレクトロニクスNo.1達成の指標として、グローバルエクレセンス指標と、グリーン指標の2つを打ち出す。 グローバルエクセレンス指標としては、2009年度を最終年度として取り組んできた中期経営計画「GP3計画」で掲げてきた、売上高10兆円、営業利益率10%以上、ROE10%以上の目標を継続し、それに、グローバルシェア1位の柱となる商品を複数有することを新たに盛り込んだ。
グリーン指標として、CO2削減と資源循環への貢献、エナジーシステム事業の規模や環境配慮No.1商品の売上高比率などの観点を含めたトータルでのナンバーワンを目指すとし、2018年度の概算目標として、生産活動によるCO2排出量と生み出した商品の使用に伴う排出量の合算で、2005年を基準として試算した量の50%削減にあたる、1億2,000万トンの削減を目指すほか、生産活動からの廃棄物ゼロや、創エネ、蓄エネなどのエナジーシステム事業で3兆円以上の売上高を目指すことを示した。
創業100周年に向けたビジョン | エレクトロニクスNo.1指標 | グリーン指標 |
さらに、創業100周年に向けて、エコアイディア宣言を一新。「パナソニックグループは地球発想の環境革新企業へ」とし、くらしのエコアイディアでは「私たちは、CO2±0のくらしを世界にひろげます」、ビジネススタイルのエコアイディアとして「私たちは、資源・エネルギーを限りなく活かすビジネススタイルを創り、実践します」とした。
新中期計画の位置づけ |
新中期経営計画については、「エレクトロニクスNo.1の環境革新企業に向けた基盤づくり」と位置づけ、「日本中心から徹底的なグローバル志向」、「既存事業偏重からエナジーなどの新領域に」、「単品志向からソリューション・システム志向に」という3点をあげ、「環境貢献の位置づけを一段高め、事業成長と一体化させ、大胆なパラダイムシフトを図る。これによって、成長軌道へと乗せ、収益力を回復させる」とした。
6つの重点事業 |
また、エナジーシステム、冷熱コンディショニング、ネットワークAV、セキュリティ、ヘルスケア、LEDの6つをパナソニックグループの重点事業として経営資源を集中。これらの事業を核にして、家・ビルまるごとのソリュシーョンの提供に取り組む。
「家・ビルまるごとのソリュシーョンは他社に真似ができない強みを生み出すことになる。エナジーシステム、冷熱コンディショニング、ネットワークAVの各事業は、グローバルシェアの拡大を図り、収益を得る中核事業と位置づける。一方で、セキュリティ、ヘルスケア、LEDはまだ小さな事業だが、将来の柱に育てていく」と語った。
セキュリティに関しては、2010年1月1日付けで、システム・ネットワーク社を発足。関連ドメイン、関連本部が連携し、施工やサービスを含めたソリューションを提供していく。
重点事業のひとつであるネットワークAV事業に関しては、3DテレビやLEDテレビといった新領域の開拓に力を注ぐほか、CRTテレビやプロジェクションテレビの置き換え、現地起点での商品企画の展開に取り組む。また、尼崎のPDP国内第5工場と、IPSアルファ姫路工場を稼働させる一方で、モジュール生産やセット生産の海外シフトを加速。セット生産では、チェコやメキシコ、中国に加えて、インドでの生産を開始し、モジュール生産もマレーシア、タイで生産を行なう。また、フルHD 3Dについては、「撮影から編集、オーサリング、家庭での視聴まで、エンド・トゥ・エンドでの総合力を発揮し、薄型テレビ事業の新しい柱として育てていく」と述べた。
さらに、LEDに関しては、「垂直統合のビジネスモデルにこだわらず、液晶テレビや関連商品のスピーディーなグローバル展開を加速していく」と語った。
■ 「力を1つに、環境革新」を経営スローガンに
グループとしての事業構造変化 |
一方、2010年の経営スローガンを、「Unite Our Efforts-Drive Eco Innovation 力を1つに、環境革新」とし、中長期の大きな目標達成に向けて、世界中の社員全員が心をひとつに力をあわせ、失敗をおそれずに「変革」、「革新」に積極果敢にチャレンジする、そのような姿を実現していきたいと位置づけている。
質疑応答では、韓国サムスンとの競合について質問が飛び、これに対して大坪社長は、「サムスンはオーナー企業であり、強烈なトップダウンとリーダーシップ、速い経営スピードが特徴であり、遙かに強い企業であるということは強く認識しなくてはならない。また、特許出願数の増加を含めて、技術レベルがあがっている。一番強力なリーディングカンパニーであると考えている」と現状認識を語った。
その上で、「サムスンをよく研究し、勉強しなくてはならないが、冷静に見ると、2007年1月と2009年11月の為替では、韓国が24%ウォン安になっているのに対して、日本は26%円高になっている。また法人税や研究開発の税制優遇措置など、比較にならない要素もある。経済環境の差も見極めなくてはならない。既存の製品領域での競争を考えると厳しいが、エネルギーマネジメントに代表されるように、AV単品、白物家電単品とは違う土俵でのビジネス構築力や、開発力がパナソニックにはある。これらをスピーディーに育てていくことが大切である。薄型テレビについても、生産量は凌駕されているが、これからは数だけを追うよりも、質の面で対抗することを考えたい。その大きなポイントは3Dになる。3Dテレビという最終商品だけでなく、エンド・トゥ・エンドのソリューションを充実させることで、サムソン対抗のファクターとしたい」と述べた。
(2010年 1月 8日)
[Reported by 大河原克行]