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「true tears BD-BOX」の画質をチェックしてみた

−バンダイビジュアルから詳細情報。問題点をまとめ


最終チエック中の現場に赴き、製品版と同じディスクで画質をチェックしてみた

3月26日発売

 

true tears
Blu-ray BOX
(c)2008 true tears 製作委員会
 3月26日発売の「true tears Blu-ray BOX」(24,990円)の仕様誤表記に関連し、バンダイビジュアルは1日に画質検証用の静止画や動画サンプルを公開。製作の詳しい情報と共に、ユーザー自身が収録映像のクオリティをチェックできる状態になっている。

 しかし、ネット上には様々な情報が飛び交っており、「何が問題になっているのかわからない」、「それで結局画質はどうなんだ?」と疑問に思っている人も多いだろう。

 そこで、今回の問題を整理すると共に、バンダイビジュアルに詳しい話を聞き、最終チェック中の現場でBD-BOXの製品版と同じディスクで画質をチェックしてみた。



■ 問題点のまとめ

 今回の問題の経緯は以前の記事を参照していただきたいが、BD化発表当初、収録映像の仕様を「16:9の1080p」と記載していたが、2月22日に公式ホームページで急遽仕様が「16:9 1080i、一部16:9 1080p」と書き換えられたのが発端。その際に詳しい説明が書かれておらず、また、既に予約者からの入金が完了した状態でもあり、一部で不満&不安の声が出た。そこで、3月1日に公式サイトで詳細やサンプルが改めて公開されたという流れだ。

 こうした流れの中で、ネットを中心にユーザーの疑問点をまとめると、おおよそ以下のようになる。

  • (1): テレビ放送では1080iの映像が使われていたが、今回のBDに収録される映像は、テレビ放送のマスターと異なるのではないか?
  • (2): 一部のテレビ放送で、オープニングの小窓部分にクシ状のノイズが見えていた。これがBD-BOXにも収録されるのではないか?
  • (3): (2)のノイズとは別に、キャラクターの輪郭線が階段状に見える現象がテレビ放送で見られた。これがBD-BOXにも収録されるのではないか?

 基本的な事実として、「true tears」という作品のマスターは、解像度1,280×720ピクセル/60iの映像で出力されている。「true tears」はテレビアニメなので、インターレースのテレビ放送(60i)に合わせて、60iでマスターが作られたわけだ。また、1,280×720ピクセルという解像度は低く感じる人もいると思うが、「true tears」が放送された2008年1月の時点だけでなく、テレビアニメでは一般的な解像度であり、「ハイビジョン製作」とされているアニメ作品の中で、フルHD(1,920×1,080ピクセル)で作られているものはむしろ稀だ。

 この映像はマスターテープとして現在の放送基準フォーマットのHDCAMに記録。記録解像度はHDCAMのフォーマットである1,440×1080ピクセル/60iで記録される。なお、HDCAMは出力時に1,920×1,080ピクセルのフルHDにスケーリングされる。

 このHDCAMが放送用のマスターテープであると同時に、「true tears」という作品そのもののマスターテープでもある。よって、アニメを制作したP.A.WORKSからマスターをバンダイビジュアルが受け取り、DVD製作時にはこのマスターからSD解像度にダウンコンバートしたものをDVD用マスターとして、BD製作では収録ディスクごとの話数をまとめる形でHDCAM-SR(1,920×1,080ピクセル/60i)に収録されたものがマスターテープとして使われている。

 つまり、例えば1,280×720ピクセル/24pなど、プログレッシブ出力されたマスターは存在しない。バンダイビジュアルによれば「アニメ製作当時のデータが全て残っているわけではないので、作品自体をもう一度プログレッシブで出力する事は難しい」という。

 ここが今回の問題の最大のポイントだ。誤表記でBDの映像仕様が一時1080pと書かれていたため、「放送用のマスターは1080iが一般的だ」と知っている人は、「放送用マスターとは違うマスターを、BD用に新たに作り直しているのだろう」と予測。しかし、最初の情報が誤表記で1080iが本当の仕様だったため、「放送用のマスターと同じか」という落胆を招いたというわけだ。

 だが、“放送用”という言葉を使うと、“それ以外”が存在するように思えてしまうが、「true tears」という作品の完成した形(マスター)は放送用の1080iであり、それ以外の方式は存在しない。これが「問題点まとめ」の(1)への回答となる。


 次に(2)だが、この問題はBS11でのオンエアなどで、オープニングの一部(キャラクターが小窓で表示される部分。比呂美の横顔のシーンがわかりやすい)で、かなり大きくクシ状のノイズが現れるというもの。公式サイトのサンプル画像『各話オープニング2』や動画サンプル(オープニングの一部)でも取り上げられている場面だ。サイトを見ればわかるように、BD/DVD版ではこの現象は無い。

 そもそもバンダイビジュアルが受け取ったマスターには問題が無く、現在発売されているDVDや、制作されたBDにも問題は無い。これはテレビ放送時に確認されたもので、今回の1080i/pの誤表記とは別の話なのだが、ネット上で一緒に語られる面もあったため、混乱が生じたようだ。


 そして(3)。放送の段階で、キャラクターの輪郭線に階段状のジャギーが見えるというという点。公式サイトの『サンプル画像(各話オープニング1)』が代表例で、同ページで公開されている動画サンプル(オープニングの一部)でも確認できる。

 これはバンダイビジュアルが公式サイトで「キャラクターなどの輪郭境界線の階段状の見え方については、オリジナルマスターに起因するもの」と説明しているように、1080iの“マスターの段階から”存在しているという。

 ネット上ではマスター製作時、「1,280×720ピクセルの絵で作られた作品(プログレッシブ)を1080/60iにリサイズする際に問題があったのでは?」という声があるが、バンダイビジュアルによれば「原因は正直特定できない。2007年の制作当時に戻って、また一から作品制作の行程を辿っていけば、特定する事はできるかもしれないが、現在では原因の特定は不可能である」という。そのため、公式サイトのサンプル画像/動画でもわかるように、BD-BOXの映像でも輪郭線や目の部分などに、階段状のジャギーが見える。

 だが、それは「true tears」の完成状態のマスターから存在するものであり、BD化にあたって新たに発生したようなものではない。また、マスターや、そこから商品化されたDVDについてもバンダイビジュアルが“クオリティに問題が無い”として製作、販売されているものなので、“それも含めてのtrue tears”と言うほかはないだろう。

 また、バンダイビジュアルではBD製作にあたり、1080/60iのマスターを、1080/24pに変換することも検討したが、24pに変換すると尺が変わってしまい、オリジナル性が損なわれてしまう可能性が高く、24p変換は採用しなかったそうだ。


■ 実際の画質をチェック

プレビュールーム
 実際のBD版の映像についてだが、前述の階段状の表示を気にすると、そこに目が行きがちになる事もあり、確かにオープニングや本編中でも確認できる。ただ、常時キャラクターの斜め輪郭線を凝視しているわけでもないので、人によってとらえ方に違いはあると思うが、個人的には作品を鑑賞する上で大きな問題になるとは感じなかった。

 全体の発色の鮮やかさや、物語後半の祭りのシーンで舞い散る雪1つ1つが、付帯ノイズも無くクリアに描かれる様などはBDならではの圧巻の映像。森や山脈などの背景の描き込みの細かさなども、DVDのアップコンバート再生や放送波とは次元の違う情報量を持っており、作画の細やかさも含め、改めて同作品の映像面の美しさを再確認できた。

 さらに、BOXに収録される最終13話には、特典としてテレビ未放送の新作映像(約3分)が含まれている。こちらも今回鑑賞したが、作品の最後に追加されるにピッタリな情感豊かなもので、ファンの期待を裏切らないものになっているだろう。

 また、BD-BOXには新作映像以外にも、初収録の特典として主役3人による第13話特別版のオーディオコメンタリー や、true tears舞台紹介映像(約20分)、デジタルイラストギャラリー(版権イラストを網羅したもの)、「雷轟丸とじべたの物語」ピクチャードラマ、true tears PV Ver.2.0など、様々なコンテンツを収録している。舞台紹介はキャスト達が富山に赴き、本編で描かれているモデルとなった場所を紹介するもので、映像はSDからのアップコンバートだが、合間に挿入される映像はBDのHD本編映像を使用。各話のダイジェストも当時のSD素材ではなく、HD素材に組み替えてHD収録されているなど、随所に手がかかっている。また、ディスク挿入時や鑑賞後には、ファンをニヤリとさせる演出も含まれているなど、随所にこだわりが感じられる“コンプリートBOX”になっている。



 今回のBD-BOXは、Blu-ray Disc Association(BDA)のWebサイトで実施された、BD化を期待する作品に投票する企画「あなたの力でBD化プロジェクトランキング 第1弾 アニメ編」で1位を獲得したことをキッカケに、BDAがバンダイビジュアルにBD化を交渉。その結果、BD化が決定したという経緯を持つ。

 それゆえ、ファンの想い入れが非常に強い作品であり、今回の問題も、そんな想い入れの強さを示すものとも言える。誤表記は、主旨に賛同して入金したファンには残念な事だが、現存する最良のマスターからBD化したものであり、納得するしかない部分もあるだろう。バンダイビジュアルには、今後も最良のマスターを最高のクオリティでBD化するという製作姿勢を貫いて欲しい。

 なお、「BD化プロジェクトランキング」では「true tears」に続いて、第2弾の投票で「ゼーガペイン」が1位を獲得。BDAがBD化に向けて交渉を進めているという。複雑な境遇や、将来に悩む少年少女達の姿を真正面から描ききった「true tears」や、斬新な設定と衝撃的な物語で話題を集めた「ゼーガペイン」の2作品は、名作だが、「知る人ぞ知る」的なポジションにある作品でもあるため、DVDからBDへの過渡期であるこのタイミングで、BD化やBD化が検討される事は、アニメファンにとって嬉しい事。「BD化プロジェクト」の功績とも言えるだろう。こちらの今後にも期待したい。

 なお、ランキングやBD化交渉を行なっているBDAは、直接BDの制作には関わっていない。あくまでも「BD化の交渉をする」という立場だ。「true tears」のBD-BOXに関しての問い合わせは、バンダイビジュアルの窓口で受け付けている。

 【バンダイビジュアル お客様センター】
 電子メール:info@bandaivisual.co.jp
 Tel.03-5828-7582
 (午前10時〜午後5時/土・日・祝日及び年末年始を除く)


(2010年 3月 4日)

[ AV Watch編集部 山崎健太郎]