シャープ、2010年度の液晶TVの出荷計画を1,500万台に

-2009年度はテレビ事業赤字も、全部門で黒字化


片山幹雄社長(左)、野村勝明経理本部長(右)

 

4月27日発表


大阪市内で会見した片山幹雄社長
 シャープは、2009年度連結決算を発表した。売上高は、前年比3.8%減の2億7,559億円、営業利益は1,073億円改善の519億円と黒字転換。経常利益は1,134億円改善の309億円、当期純利益は1,302億円改善の43億円と、前年度の赤字決算から黒字転換した。セグメント別では全部門で黒字転換している。

 大阪市内で会見した片山幹雄社長は、「国内はエコポイント制度による液晶テレビの販売増加があったものの、市場価格の下落、円高の影響など厳しい経営環境にあった。だが、2009年度に目標とした総経費で年間2,000億円削減計画に対して、2,138億円と計画を上回る削減が黒字化に寄与している。また高画質、低消費電力のLED AQUOSのほか、プラズマクラスターイオン搭載製品や太陽電池などの健康・環境関連製品が好調に推移した。為替の影響となる1,180億円を除けば、売上高はほぼ前年並みの実績になる」などとした。

 液晶テレビ事業に関しては、第1四半期(2009年4~6月)の赤字が響いて、通期では赤字となったものの、第2四半期、第3四半期、第4四半期と連続して黒字化しており、「これからも黒字を見込むことができる」として、2010年度の通期黒字化に意欲をみせた。

 セグメント別では、エレクトロニクス機器部門は、売上高が2.5%減の1兆8,582億円。営業利益は676億円改善し、339億円と黒字転換。そのうち、AV・通信機器の売上高が2.5%減の1兆3,329億円、営業利益は前年のマイナス578億円の赤字から37億円の黒字。健康・環境機器事業の売上高は7.9%増の2,441億円、営業利益は337.2%増の162億円。情報機器事業は、売上高が10.1%減の2,810億円、営業利益は31.2%減の140億円となった。

 「AV・通信機器は、国内ではエコポイント制度の効果があり、液晶テレビやBDレコーダの販売が好調だった。だが、海外では液晶テレビが減少した」と片山社長は語る。

2009年度 連結業績概要
部門別売上高
部門別営業利益

■ 液晶テレビ売上は8.6%減。国内シェア下落は「完全な読み間違い」

主要商品の状況

 液晶テレビの売上高は、8.6%減の6,668億円。出荷台数は1.8%増の1,018万台。そのうち、国内は約550万台、海外は約460万台。国内は前年比40%増という高い成長率に対して、海外は24%減という落ち込みをみせている。さらに海外の内訳をみると、北米が42.8%減の163万9,000台、欧州が28.6%減の129万7,000台と欧米での落ち込みが激しい。これに対して、中国は14.9%増の118万9,000台、その他地域も18.4%増の54万6,000台と伸びている。

 「米州および欧州市場では、円高、ウォン安という為替環境のなかで、韓国のメーカーに比べてコスト競争力が確保できず、さらに販売プロモーションの費用も捻出できないという状況となった。2009年度は、まずはテレビ事業の黒字化への取り組みを強く進めてきた。残念ながら欧米ではシェアを落としている」とした。

 また、日本国内でも3月にシェアを落としたことに関しては、「これほどまでに市場が上向くとは思っていなかった。完全な読み間違いによるもの。国内に液晶テレビをもっと振り向けるように手を打っておくべきだった。求める市場に対して、素早く商品を送り込む体制をつくることが大切である」などとした。

 だが、2010年度に関しては、グリーンフロント 堺で生産を開始するUV2Aおよび4原色技術によるパネルの量産を開始。「当初計画に比べて3か月前倒しとした2010年7月から、月間7万2,000万枚のフル生産体制で稼働させることも手伝い、競争力を高めることができる。3Dテレビも早期に投入し、事業拡大を図る」と巻き返しに意欲をみせる。

 2010年度における液晶テレビの販売計画は、前年比47.2%増の1500万台。売上高は23.0%増の8,200億円と意欲的だ。2010年の販売台数計画のうち、国内は41.8%増の780万台とする一方、海外は54.1%増の720万台と、海外での大幅な成長を見込む。

 なかでも北米での巻き返しが大きく、前年比40%増の230万台を計画。さらに欧州でも23%増の160万台を計画。中国では102%増の240万台、その他地域では65%増の90万台の出荷を計画している。

 「いよいよグリーンフロント 堺が立ち上がってきたことで、UV2Aの優位性を生かしながら、競争力があるLEDテレビ、3Dテレビなどの製品が揃ってくる。昨年は、欧米の量販店店頭ではシャープのテレビが展示されていないという状況もあったが、欧米の大手量販店に徐々に並び始めていることを感じてほしい。量販店にはこの1年間で信頼を失ったが、競争力を持ったテレビの投入により、着実に立ち上げを行っていく。これまで抑えたてきたテレビCMも欧米、中国で大々的にはじめている。もとの状態のところにまで戻っていけるだろう」とした。


■ KINは欧米市場向けの戦略製品の第1弾

経費削減状況

 なお、携帯電話の売上高は、3.9%増の4544億円、出荷台数は6.3%増の1054万台となった。「2009年度は高画質CCDカメラや、ソーラーパネルの搭載といった独自の製品が、日本や中国で受け入れられ、シェア拡大が図れた。2010年度は、市場ニーズが二極化することにあわせて、スマートフォン分野における高機能の新製品の投入とともに、普及価格帯のラインアップの強化を図る。中国市場においては、3G端末の投入に続き、これまで1級都市への販売を中心としていたものを主要都市にまで広げていく」とした。

 さらに、「マイクロソフトとの協力によって投入したKINは、シャープが持つ携帯端末および液晶技術と、マイクロソフトのクラウドサービスとソフトウェア技術を融合したもの。欧米市場向けの戦略製品の第1弾になる」と語った。

 2010年度の携帯電話の売上高は前年比11.1%増の5,050億円、出荷台数は29.9%増の1,370万台を計画に掲げた。

 一方、電子部品等部門の売上高は8.9%減の1兆3,855億円、営業利益はマイナス239億円の赤字から201億円の黒字に転換。そのうち、液晶は、売上高が15.9%減の8,872億円、営業利益が173.4%増の111億円。太陽電池は、売上高が32.8%増の2,087億円、営業利益が前年のマイナス161億円の赤字から33億円の黒字に転換。その他電子デバイスの売上高は6.1%減の2,895億円、営業利益はマイナス119億円の赤字から56億円の黒字となった。


■ UV2Aは透過率の高さが3Dテレビにも適している

2010年 連結業績見通し

 「テレビ用の大型液晶パネルは、材料価格の高止まりや、グリーンフロント 堺の立ち上げに伴う一時費用などの影響、2008年度に比べて約2割の価格下落などが影響している。また、中小型液晶パネルは、携帯電話向けやゲーム機向けの販売減少、価格下落の影響を受けた。だが、2010年度は、液晶パネルに対する需要は相当強いとみられる。3Dテレビなどの動きも、高精細、高輝度なパネルが逼迫することにつながる。また、PC市場も堅調に広がっており、液晶パネルが足りないのは明らか。不足の状況は来年度まで続くとみられる」と予測。

 さらに、「UV2Aは透過率の高さが3Dテレビにも適しており、周辺材料が安く、低消費電力であるという強みもある。高付加価値のパネルは利益を確保できる。また、中小型液晶に関しても、3Dの流れやスマートフォンへの搭載という点で、高精細、高い透過率が生かせる。UV2Aでは、知的財産を持っており、競争上でも強い状況にある。グリーンフロント 堺は、世界に向けたモノづくりの工場として展開していくことになる」などとした。

 なお、同社では、2010年度の連結業績予想も発表した。売上高が前年比12.5%増の3兆1,000億円。営業利益は131.2%増の1,200億円、経常利益は206.5%増の950億円、当期純利益は約11倍となる500億円を見込む。

 エレクトロニクス機器部門は、売上高が7.9%増の2兆50億円、営業利益は67.7%増の570億円。そのうち、AV・通信機器の売上高が10.3%増の1兆4,700億円、営業利益は594.1%増の260億円。健康・環境機器事業の売上高は、10.6%増の2,700億円、営業利益は1.4%減の160億円。情報機器事業は、売上高が5.7%減の2,650億円、営業利益は7.0%増の150億円とした。

 電子部品等部門は、売上高が14.8%増の1兆5,900億円、営業利益は222.8%増の650億円を計画。そのうち、液晶は、売上高が16.1%増の1兆300億円、営業利益が285.3%増の430億円。太陽電池は、売上高が19.8%増の2,500億円、営業利益が196.6%増の100億円。その他電子デバイスの売上高は7.1%増の3,100億円、営業利益は114.2%増の120億円を計画している。


(2010年 4月 27日)

[Reported by 大河原克行]