パナソニック、世界初の3D撮影対応民生用AVCHDビデオカメラ

-別売3Dレンズ装着でサイドバイサイド。デジタル一眼用も


3Dコンバージョンレンズを取り付けたところ

8月下旬発売

標準価格:オープンプライス


 パナソニックは、別売の3Dコンバージョンレンズを装着することで、民生用AVCHDビデオカメラとして世界で初めて、3Dでの撮影が可能になるビデオカメラ「HDC-TM750」と「HDC-TM650」の2機種を8月下旬に発売する。価格はどちらもオープンプライスで、店頭予想価格は96GBメモリ内蔵のHDC-TM750が16万円前後、64GBメモリ内蔵のHDC-TM650が13万円前後、3Dレンズ「VW-CLT1」が38,000円前後。

 3D撮影方式はサイドバイサイドで、AVCHD方式で記録。記録解像度としてはフルHD(1,920×1,080ドット)だが、サイドバイサイドであるため、3D映像自体の解像度は横方向の解像度が半分(960×1080ドットと思われる)となり、フルHDの3D撮影はできない。

 さらに、デジタル一眼カメラ「LUMIX Gシリーズ」でも3D撮影を可能にする交換レンズも開発。2眼式の交換レンズで、レンズ交換式デジカメでの3D対応交換レンズの開発は世界初となる。年内を目処に商品化をすすめるという。


■ 3D撮影機能について

 ビデオカメラ2機種は新3MOSセンサーを搭載したもので、ビデオカメラ単体では通常の2D撮影のみ行なえる。このビデオカメラのレンズ前に、別売の3Dコンバージョンレンズ「VW-CLT1」を取り付けると、サイドバイサイドでの3D撮影が可能になるのが特徴。

左が3Dコンバージョンレンズ。右がHDC-TM6503Dコンバージョンレンズを取り付けたところ

 3D撮影をするためには、左目用の映像と右目用の映像を撮影する必要があるが、3Dコンバージョンレンズの中には左目用、右目用の個別のレンズを搭載。そのレンズを通して得られた、左右眼用の映像が横並びされたサイドバイサイドの映像を、装着したビデオカメラで撮影する。左右のレンズ間の距離は公表されていない。

 記録方式は通常のAVCHD形式と同じ。なお、ビデオカメラ側は2機種とも1080/60pでの撮影も可能だが、1080/60pはAVCHD規格ではない独自規格となり、それで3D映像を記録するとさらに再生環境などが限定されるため、3D撮影モードでは1080/60iの、AVCHD規格での記録となる。

3Dコンバージョンレンズの正面。2つのレンズの穴が見える背面から見たところ。左右の映像がわかれている事が確認できる。ここに写された風景をビデオカメラで撮影する
横から見たところ。3Dマークがデザインされている背面から、前面の穴にフォーカスを合わせたところ。前面のレンズの穴が四角形なのがわかる

 記録した3D映像は、カメラ本体のHDMI出力から3D対応テレビに出力。他社製も含め、サイドバイサイドの表示に対応したテレビであれば、テレビ側でフレームシーケンシャルなどの方式に変換し、3Dメガネを通して立体視が楽しめる。なお、3D撮影した映像を、HDMI出力時に2D映像として出力する事も可能で、左目用の映像を横を引き伸ばして出力。3D非対応のテレビに表示する事ができる。3Dの画質を高めるために、超解像技術を使った3D専用の画質設定も搭載しているという。

 ビデオカメラは内蔵メモリに加え、SDメモリーカードへの録画も可能で、3D映像を記録したSDメモリーカードを3D対応テレビのVIERAや、3D対応レコーダDIGAで直接再生したり、レコーダに保存する事も可能。対応3D VIERAはVT2/RTシリーズ。なお、TH-P65VT2、P58VT2、P54VT2、P50VT2ではSDカードからのダイレクト再生には、8月下旬公開予定のソフトウェアアップデートが必要になる。3D対応DIGAのDMR-BWT3000/BWT2000/BWT1000では、8月下旬公開予定のソフトウェアアップデートでUSB経由での保存も可能になる。

3D撮影の基本撮影から記録、表示の流れ3Dコンバージョンレンズの光学部のイメージ画像

 ビデオカメラ側は静止画撮影にも対応しているが、3Dでの静止画撮影はできない。また、後述するiA機能も使用できない。

 ビデオカメラ2機種には液晶モニターを備えているが、モニターでの3D表示は行なえない。表示されるのは左目用の2D映像のみで、横を引き伸ばして表示する。この映像でアングルなどを確認しながら3D撮影を行なう。「HDC-TM750」は液晶ビューファインダーも備えているが、こちらも2D表示のみ。また、3D撮影時にズーム操作はできない。3Dコンバージョンレンズを取り付けると、ズームがワイド端の58mm(35mm判換算)で固定される。

 また、ビデオカメラ側の光軸と3Dコンバージョンレンズの光軸を正確に合わせる必要があるため、装着した際はモニター画面に表示されるガイドに沿って、3Dコンバージョンレンズ側の光軸調整が必要。調整用のダイヤルも備えている。

 なお、3Dコンバージョンレンズは「HDC-TM750」と「HDC-TM650」の搭載レンズに最適化されているため、他のビデオカメラに装着して使用する事はできないという。

取り付け部分を上からみたところ。ネジ止めで固定するコンバージョンレンズの上蓋を開けると、光軸調整用のダイヤルが現れるコンバージョンレンズを取り付けると、光軸調整用のガイドメニューが表示される

 3D撮影時は、左右の眼の“視差”が立体感の増減に大きな影響を与えるが、3Dコンバージョンレンズでの視差は、十分な立体感を味わえつつ、鑑賞していても眼が疲れにくいバランスを追求したという。撮影時は被写体まで1.2m以上離れて撮影するのが理想で、撮影者から1.2m~4mの範囲が、飛び出しと奥行きを表現する最適なゾーンになるという。

 PC用の映像管理・再生ソフトとして「HD Writer AE 2.6T」が付属。同ソフトを使って、サイドバイサイドの3D映像をBDやDVDメディアにライティングできる。書き出す映像はサイドバイサイドのみで、左目用の2D映像のみを書き出すといった機能は無い。

 コンバージョンレンズの取り付けネジ径は46mm。外形寸法は78×97×59mm(幅×奥行き×高さ)。重量は195g。

3Dムービー実現には、独自のウェッジプリズム偏光方式による小型化や、視差最適化設計、超解像技術による3D映像の高画質化などを活用したという糸で吊るしたリンゴを振り子のように動かし、カメラに近づけたり、離したりしながら撮影。立体視を確認できるデモ子供達が遊んでいる様子を撮影するデモコーナーも


■ ビデオカメラ機能について

  ビデオカメラ側も機能が強化されている。撮像素子は、新開発の3MOSを採用。RGBの光の3原色をプリズムで正確に分け、それぞれの色のを専用のセンサーで処理することで、忠実な色彩の記録が可能になる。サイズは1/4.1型で、総画素数は915万(305万×3)。有効画素は動画が759万、静止画が789万画素となる。

左がTM650、右がTM750左のTM750のみ、液晶ビューファインダーを備えている

 2機種とも大容量メモリを内蔵。HDC-TM750は96GB、HDC-TM650は64GBのメモリを備えている。さらに、SD/SDHC/SDXC対応のメモリーカードスロットも装備する。メモリ容量以外の違いは、液晶モニターサイズで、HDC-TM750は3型、HDC-TM650は2.7型。また、HDC-TM750のみ液晶ビューファインダーも備えている。また、録音音声がHDC-TM750は5.1chサラウンド、TM650がステレオとなる。

TM750TM650

 独自規格となるが、1080/60pの撮影が可能なのが特徴。プログレッシブ撮影を活かし、スポーツなど動きの速い被写体撮影時でも、ちらつきを抑制できるほか、斜め方向のノイズが出ないため、より滑らかな映像が撮影できるという。AVCHD規格に沿った1080/60iの記録も行なえる。動画記録モードは1080/60p(28Mbps)のほか、AVCHD形式のHA(約17Mbps)/HG(約13Mbps)/HX(約9Mbps)/HE(約5Mbps)の4モードを用意。前述の通り3D撮影時はHA/HG/HX/HEモードから選択する事になる。

 画像処理エンジンのHDクリスタルエンジン・プロに、新たに新低照度NR(ノイズリダクション)を搭載。これにより、低照度撮影時に目立つ大粒のノイズを抑え、従来モデルのTM700と比べ、40%の大幅なノイズ低減を実現したという。

 手ブレ補正機能は7月に発売した「HDC-TM35」と同様で、手首の縦・横の手ブレに加えて、腕の上下・左右の手ブレも抑える「ハイブリッド手ブレ補正機能」を備えたこと。手首の縦横ブレ(2軸)はジャイロセンサーで検出、腕の上下左右のブレ(2軸)は映像センサーから検出。4軸方向のブレを補正する。光学と電子のハイブリッドとなるが、電子式手ブレ補正を使っている部分は、撮像センサーの中から、映像で使用しないズーム時の余っている領域を使用しており、画質の劣化を抑えるという。

 さらに、手ブレを強力に抑える「手振れロック」機能も搭載。液晶画面の手振れロックのボタンを押すことで、補正範囲を最大まで広げるもので、より強力に手ブレを抑えることができる。

 なお、3D撮影時にハイブリッド手ブレ補正は利用できず、光学式手ブレ補正のみが使用できる。

 レンズは12倍の電動ズームで、35mm判換算の焦点距離は、動画時が35~420mm(16:9)、静止画が35~420mm(16:9)、38.8~466mm(4:3)。超解像技術を使った「iAズーム」機能も備えており、18倍ズームを実現する。

 ほかにも、個人認識機能や、1秒瞬速起動や0.6秒クイックスタート、顔ハイライト機能、顔や色でも追従する追っかけフォーカス、5つのシーンに合わせて綺麗に撮影できる「おまかせiA」機能、笑顔オートシャッター機能、撮り逃しを防ぐプリREC機能なども備えている。静止画は約1,420万画素のJPEG撮影が可能。撮影動画から2.1万画素の静止画を切り出す機能も備えている。

 外形寸法と重量(付属バッテリ含む)は、TM750が66×138×69mm(幅×奥行き×高さ)、約440g。TM650は62×126×66mm(同)、約388g。同梱するバッテリ「VW-VBG130-K」での持続時間は約1時間40分、実撮影時間は1時間。


■ デジタル一眼でも3D撮影

 合わせて、デジタル一眼カメラでも3D撮影を可能にする、2眼交換式レンズを世界で初めて開発。同社のLUMIX Gシリーズの交換レンズの1つとして、年内を目処に商品化をすすめるという。価格や焦点距離、対応する機種など、詳細は明らかになっていない。

参考展示されたGシリーズ用の3Dレンズ薄型のパンケーキスタイルになっている

 ビデオカメラ用コンバージョンレンズと同様に、レンズマウント径内に2つの光学系を搭載。左右のレンズでステレオ画面を構成し、3D用に画像処理するシステムになるという。画像処理技術や鏡筒設計技術により、コンパクトなサイズを実現しているのが特徴。近い距離の被写体でも目に負担が少ない3D撮影ができ、動く被写体でも形状歪が無く、左右画像の時間差が無く撮影できるのが特徴だという。


■ 3Dビデオカメラでキラーコンテンツを撮影

デジタルAVCマーケティング本部の西口史郎本部長
 デジタルAVCマーケティング本部の西口史郎本部長は、同社が2010年を3D元年と位置付け、3D対応テレビのVIERAを他社に先駆けて投入。その後も積極的にラインナップを拡充し、大きな反響があった事を報告。さらに、プロ用市場でも3D関連の製品やサービスを提供し、世界初のプロ用一体型2眼式3Dカメラレコーダや、3Dに対応したオーサリングセンターを六本木に開設したこと、パナソニックハリウッド研究所での3Dへの取り組み、プロ用プラズマディスプレイも3D対応を推進するなど、パナソニック全体の3Dへの積極的な取り組みを紹介した。

 その上で、今回の民生用3Dビデオカメラについて、「3Dコンテンツを自分で創るという新たなフェーズに入るもの。撮影した映像は、まさに自分が観たい映像であるため、まさしく(3Dの)キラーコンテンツになる。人生におけるかけがえのない出来事を3Dで撮影し、残せる。3D元年の2010年に、撮影し、残すというフェーズを実現できたのは、プロ用機器で培った技術があったため」と説明。

 さらに、撮影した3D映像の表示が、3D VIERAや3D対応DIGAなど、多くの機種で表示できる事から「3D Link」というキーワードも提示。機器間の連携を駆使して、「家庭の3Dを楽しく、より身近にしていく」と豊富を語った。


(2010年 7月 28日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]