ソニー、1ワイヤで映像/音声と電源を機器内伝送する技術

-携帯電話などのデザインの自由度と信頼性を向上


左が従来のデータ伝送、右が「機器内ワンワイヤ・インターフェース技術」

8月20日発表


 ソニーは20日、映像/音声などの機器内データ伝送と電源供給を1本のケーブルで行なえる信号・電源統合伝送技術「機器内ワンワイヤ・インターフェース技術」を開発したと発表した。

 携帯電話など可動機構を持つモバイル機器の自由度や信頼性/耐久性の向上に寄与する技術として、早期の実用化を目指す。

 モバイル機器の高性能化やディスプレイの高画質化などで、データ伝送量が増大し、接続配線数が増加する傾向にあることから、コネクタが大型化し、ケーブル折り曲げが困難になるという課題がある。新技術はこれに対処するために開発された。

 この技術では、映像/音声/制御信号など、複数の種類の信号を時分割多重(通信回線を区切り、各時間毎に別々のデータを送受信)で伝送。また、個別に同期を保持する仕組みを採用することで、ディスプレイとカメラなどの異なる信号を1本のケーブルで双方向伝送可能になった。

新技術の回路構成

 また、独自開発の多値符号(入力信号を取り込み、多値のデジタル信号に符号化したもの)も採用。多値符号化を行なうデジタル部と、データ送受信を行なうアナログ部、直流電源の重畳部で構成され、直流成分を持たない独自の多値符号化技術の開発により、高速で周波数利用効率の高い伝送を実現、電源の重畳も可能にした。

 試作システムでは940Mbpsの伝送速度を実証。そのほかの仕様(暫定値)は、消費電力は伝送時が10~80mW(0~940Mbps)、スタンバイ時が0.3mW。電源電圧は1.5V/3.0V。伝送距離は60㎝。

 携帯電話の本体とディスプレイの間の配線を、従来技術と新技術で比較した場合の配線数は下表の通り。

 従来技術の配線数(本)新技術の配線数(本)
総配線数≒221
うち 電源配線10
うち 差動線51
うち 音声配線10
うち その他配線≒150

 アナログ部の試作チップはロームと共同開発し、技術検証した。今後は、ソニーが開発したデジタル部のIPをロームへライセンスし、アナログ/デジタルを合わせた送信側/受信側双方の回路の1チップ化を進めるとしている。



(2010年 8月 20日)

[AV Watch編集部 中林暁]