ソニー液晶テレビ戦略を転換。数ではなく収益を重視

-'11年第1四半期決算は震災影響などで減益


2011年度第1四半期連結業績

 ソニーは28日、2011年度第1四半期決算を発表した。売上高は、前年同期比10%減の1兆4,949億円。営業利益は59%減の275億円、税引前利益は70.7%減の231億円、純利益はマイナス155億円となった。

 東日本大震災の影響やエレクトロニクス事業の環境悪化により、前年同期比で減益減収ながら、275億円の営業利益を記録。震災の影響を受けたビジネスの改善状況は5月の想定を上回るペースで進捗しているという。


 


■ 液晶テレビは欧米不振で“戦略転換”

執行役 EVP CFOの加藤優氏

 コンスーマープロダクツ&サービス分野(CPS)は減収減益で、売上高は前年同期比17.9%減の7,323億円、営業利益は同 94.1%減の17億円となった。主に欧州の市場環境悪化などの液晶テレビの減収やPCの価格下落が影響したとしている。なお、日本においては、地上アナログ放送停波に伴う需要増で液晶テレビの売上が増加した。損益変動にマイナスの影響を与えたカテゴリは、液晶テレビやビデオカメラなど。

 液晶テレビの第1四半期販売台数は490万台、ビデオカメラは100万台、コンパクトデジタルカメラは530万台、PCは180万台。ゲームはPlayStation 3が180万台で、PSPが180万台、PS2が140万台。


CPSの営業利益増減要因

 液晶テレビについては、欧米など先進国を中心に市場環境が悪化。そのため、当初年間2,700万台の予測を2,200万台に下方修正する。同社執行役EVP兼CFOの加藤優氏は、「インチサイズが小さく安いところしか動かず、激しい価格競争が起きている。そうなると、一台売るごとに損失ということにもなる」と厳しい市場環境を説明し、「テレビは作戦を変えないといけない」と戦略転換の必要性を語った。

 「これまでも何年か赤字を続けてきて、改善に努めてきた。マーケットの成長とともに販売台数を増やし、ソニーの付加価値を加えることで、収益の改善を目指すという基本戦略だった。しかし先進国市場が停滞し、市中在庫が積み増しされ、価格競争が一層厳しくなった中で、数を追う戦略は必ずしも収益性に結びつかない。作戦を少し軌道修正し、収益を重視して事業の組み立てをし直す」とする。

 一方で、「新興国は伸びている。中国は成長率が鈍化しているなど濃淡はあるが、成長市場の中では収益とシェアを求めていく。見直すのは成熟市場での対応」と説明。加えて人事面でも、現パーソナルイメージング& サウンド事業本部長の今村昌志氏を、8月1日付でホームエンターテインメント事業部長に起用するとともに、設計改革担当とし、「デジタルイメージングで鍛えた差別化製品のノウハウや経験を活かして、商品力強化を図っていく」という。

 加藤CFOは「業界を俯瞰しても、液晶テレビのビジネスサイクルは、パネル、セット、垂直統合も含めて、利益が出ない回転に来ている。その中でどうやってロスを減らして収益に結び付けるか。作戦を考える」とし、テレビ事業の黒字化については、「今年はブレークイーブンに遠く、まだ足元も見えていないので申し上げにくい。作戦を立て直して、進捗をみて判断したいが、膿を全部出して、全社で取り組む意気込み」と語った。

 また、PlayStation Networkへの不正アクセス事件については、「5月時点で費用では140億円ぐらいの費用が発生するかもしれないと説明したが、その当時の見方からすると、第1四半期はほぼ範囲内で、若干下目に来ている」としており、4~5月のPSNサービス停止の影響についても、7月の日本を最後に完全復旧。6月の売り上げは前年の倍以上とのことで、「サイバーテロの影響は限定的」と説明した。

 


■ 震災の影響はかなりあった。通期売上予測も下方修正

セグメント別情報

 放送などのプロフェッショナル・ソリューション事業や、半導体事業、コンポーネント事業などを含むプロフェッショナル・デバイス&ソリューション分野(PDS)は、売上高が前年同期比16.5%減の3,097億円、営業利益は同86.8%減の23億円。震災により製造設備が被災し、生産能力が低下した電池や、同様に被害を受けたストレージメディアの売上減などが響いた。

 映画分野は、売上高が前年比9.3%増の1,444億円、営業利益が50.4%増の43億円。グリーンホーネットなどの新作が売り上げに寄与したほか、インドのテレビネットワークにおける広告収入増加などで売上を伸ばした。音楽分野は売上高が0.6%減の1,096億円、営業利益が61.4%増の121億円。アデル「21」、ビヨンセ「4」、フー・ファイターズ「ウェイスティング・ライト」などの作品がヒットした。金融分野は売上高が前年比19.3%増の2,016億円、営業利益は同4.3%減の287億円。

 持分法適用子会社のソニー・エリクソンは、売上高が前年比32.1%減の11億9,300万ユーロ、純損失は5,100万ユーロ。東日本大震災に伴う主要部材の供給不足による販売減や、スマートフォンへの注力に伴う、その他携帯電話の販売減が響いた。

 加藤CFOは、「第1四半期は通期の先行きを確認するにも重要な期だった。“大震災の影響がどれくらいあるか”の見極めが必要だったが、実績の通り“かなりあった”といえる」と言及。「ただし、4、5月に想定からは、日に日によくなっていてリカバリできてきている。サプライチェーン修復はかなり進み、見通しはよくなっている。事業の見通しにつなげると、部門によっては下半期までの影響もあるが、大方は下期は大きくないだろうというのが現時点の見方」とした。

 なお、通期見通しについては、液晶テレビの年間販売数量が5月想定を下回ることや、第2四半期以降の為替悪化が見込まれることから売上高を下方修正。売上高は5月予測より3,000億円マイナスの7兆2,000億円とする。ただし、営業利益予測は2,000億円で据え置き。


(2011年 7月 28日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]