東芝、2011年度第1四半期は最終黒字に

液晶テレビは欧米での不振で前年割れ


東芝本社

 東芝は28日、2011年度第1四半期(2011年4月~6月)の連結決算を発表。連結売上高は9%減の1兆3,261億円、営業利益は88%減の41億円、税引前純利益は69%減の31億円、当期純利益は1%増の5億円となった。

 東芝の代表執行役専務の久保誠氏は、「円高の影響とともに、一部震災の影響があったほか、デジタルプロダクツや電子デバイスでは600億円前後の減収となり、社会インフラ部門を含めた3部門で減収。だが、家庭電器部門では増収とともに黒字化。全社の営業利益ではなんとか黒字を維持し、純損益も前年並みの黒字を確保した」と語ったほか、「当社の場合、第1四半期は利益があがりにくい体質にあり、第4四半期に偏る傾向がある。年間の計画は達成できる」などとした。

第1四半期決算概要

 売上高への震災の影響は900億円、為替の影響は810億円。また、営業利益に対しては、震災で250億円、円高で70億円のマイナス影響があったとした。

 震災影響では、部材調達に関連した生産への影響、生産設備の被災による生産停止、震災の影響を受けた顧客などへの売上げ減という、3つの影響があったとし、「当初は部材調達への影響が大きく、これを在庫部品や代替品でうまくつないだ。だが、HDDでは半導体が不足し、システムLSIでは部品が調達できずにこの2つの領域で課題が残っている。また、自動車メーカーの被災の影響で売り上げが減少。社会インフラグループへの影響が最も大きかった。一方で、岩手東芝エレクトロニクス、東芝コンポーネンツなどが被災で生産停止したが復旧が進んでいる。震災影響は当初想定の半分以下となっており、今後は復興需要を含めて、大きな影響はないだろう」とした。

 売上高への震災影響900億円のうち、部材調達に関連した生産への影響で130億円、生産設備の被災による生産停止で170億円、震災の影響を受けた顧客などへの売上げ減で600億円。また、営業利益への250億円の震災影響のうち、部材調達に関連した生産への影響で40億円、生産設備の被災による生産停止で60億円、震災の影響を受けた顧客などへの売上げ減で150億円となった。

 セグメント別では、デジタルプロダクツの売上高が前年同期比10%減の5,220億円、営業利益が106億円減のブレイクイーブン。円高の影響に加えて、液晶テレビおよびパソコンが欧米で伸び悩んだこと、国内でのエコポイント制度の終了などにより減収。さらに記憶装置では光ディスク装置が減収となった。

 「パソコンは48億円の黒字となったほか、POSシステムを販売する東芝テックも20億円の黒字。ハードディスクは若干の黒字となり、光ディスク装置はかろうじて黒字となった。だが、液晶テレビは海外での落ち込みを吸収できずにマイナスになった」(久保代表執行役専務)という。

 デジタルプロダクツのうち、パソコンの売上高は前年同期比18%減の1,903億円、営業利益は36億円増の48億円となり、「国内は比較的好調であったものの、円高の影響で減収。一方でコスト削減施策の徹底などにより全体では増収になった」という。

震災の影響デジタルプロダクツは減収減益セグメント別の業績

 電子デバイスは、売上高が19%減の2,684億円、営業利益が227億円減の43億円。NAND型フラッシュが需要は堅調であるものの、円高の影響を受けて減収。震災の影響では、四日市工場が予定よりも減産することになったという。半導体の売上高は18%減の2,276億円、営業利益は206億円減の16億円となった。液晶はパソコン向け生産子会社の売却が大きく影響し、前年同期比26%減の409億円と減収。営業利益ではスマートフォンなどの携帯機器向けが好調で10億円増の22億円となった。

通期見通しに変更は無い

 社会インフラが売上高が3%減の4,269億円、営業損失が7億円減のマイナス32億円の赤字。火力・水力発電システム、交通システムは堅調だったが、医用システムが売上高で横ばいとなったほか、事業全体において円高の影響があったという。

 家庭電器は売上高が8%増の1,495億円、営業利益が23億円増となり11億円の黒字転換。家庭用エアコンを含む白物家電や、節電対応によるLED照明の需要増大、業務用空調などが好調に推移。構造改革の成果も貢献し、黒字化した。

 また、その他部門では、売上高が5%減の776億円、営業利益が13億円増の10億円となった。

 なお、2011年度の通期見通しについては、5月9日に公表した計画値に変更はないという。



(2011年 7月 29日)

[ Reported by 大河原克行]