小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第1184回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

2万円以下で書斎もリビングも。SuperWideで音場切り替えできるサウンドバー「Creative Stage Pro」

バースピーカーとサブウーファがセットになった「Creative Stage Pro」

サウンドバーが好調のCreative

ここ数年、オーディオ製品は空間オーディオ対応を中心に盛り上がりをみせてきた。中でもサウンドバー製品は、単純にテレビ番組や映画のオーディオを良くするという使い方に留まらず、空間オーディオ対応の音楽やゲームを楽しむスピーカーとしての存在価値を上げてきている。

そんな中で、低価格ながらも質のいい製品を輩出しているのがクリエイティブメディアだ。サウンドバータイプの製品としては、Sound BlasterシリーズとStageシリーズに分かれているが、Sound Blasterシリーズはどちらかといえばゲーム系、Stageシリーズは映画・音楽系とされている。ただそれはマーケティング的な違いであって、製品としてはどちらもゲーム・映画・音楽どれもこなせるような作りになっている。

7月30日に発表されたStageシリーズの新モデル「Creative Stage Pro」は、2021年に発売された「Creative Stage 360」の系統を引き継いだ製品と言えるが、価格は大幅に下がり、公式ストア価格19,800円となっている。サブウーファ付きサウンドバーとしてはかなり安い。また、発売記念の特別価格として、8月8日AM11時59分までは、20% OFFの15,840円で販売している。

Dolby Atmosには直接的には対応しないが、同社得意のSuperWideを搭載し、2chソースでも十分な広がりが得られるのが特徴だ。低価格ながら聴いて楽しいCreative Stage Proを、さっそく試してみよう。

Creativeにしてはやや大型

Creative Stage Proは、サウンドバーとサブウーファから成る製品だ。ただサブウーファは単なるスピーカーで、内部にアンプはない。バー部分にアンプを搭載するという設計になっている。

ではまずバー部分を見ていこう。サイズは約550×80.7×112.1mmで、同社製品としてはやや大型ながらも、サウンドバーとしては短めのスピーカーとなっている。

バースピーカー部はやや長め

側面から見ると、前方に張り出した楕円形の筒状になっているのがわかる。ドライバは左右に20Wフルレンジが1つずつの、2ch構成。センターにはステータスを示すディスプレイがある。

真横からみたところ

バーの左右の端は、いかにも音が出てきそうなデザインだが、実際には何の音も出ていないことから、中身は塞がれているものと思われる。背面にもバスレフポートがない。別途サブウーファがあるので、バー部からは無理に低音を出そうとしていないのだろう。

天面には電源ボタンほか、ボリュームのアップダウン、入力切り替え、SuperWideの切り替えボタンがある。

天板には押し込み型のボタン類

背面の端子類としては、アナログAUX、光デジタル、HDMI ARC、USB-Cがある。あとは電源入力と、サブウーファ出力だ。Bluetoothも備えているが、コーデックはSBCのみである。相変わらずBluetooth接続が弱いところは、そのままである。

入力は種類が充実

なお同社はUSB-C接続できるSnapdragon SoundやBluetooth LE Audioのドングル製品を多数展開しているので、Bluetoothを強化したければそれらを併用すれば問題ないと思っていたのだが、実際に手持ちのBT-W5を刺してみたところ、動作しなかった。メーカーに確認したところ、PCとの接続用とのことだ。

サブウーファは約115×420×265mmの細身縦型で、右側に40Wドライバ、正面にバスレフポートがある。Creative Stage 360付属のものによく似ているが、外寸が少し違うのでまったく同じものではないようだ。

細身のサブウーファ
反対側にはなにもない
背面にはスピーカーケーブルがあるのみ

全体の周波数特性は50Hz~20kHzとなっており、USB入力も16bit/48kHzとなっていることから、ハイレゾ対応ではない。また総出力は80Wで、ピーク出力は160Wとなっている。音量としてはかなり出るシステムだ。

リモコンも見ておこう。デザイン自体はCreative Stage 360に付属のものと同じだが、ボタンの割り当てがかなり変更されている。センターの十字キーの左右で曲のスキップ、上下でボリュームのアップダウンができる。SuperWideの切り替えボタンがセンターの一等地に大きくフィーチャーされているのも特徴だろう。

付属のリモコン

本体ボタンにはない機能としては、バスとトレブルが個別に調整できるほか、音楽や映画といったモード切り換えもできる。

さらに上手くなったSuperWide

では早速音を聴いてみよう。まずは映像作品として、今回はNetflixオリジナルのDolby Vision対応5.1ch作品「マニフェスト」、シーズン2の5話を鑑賞した。実は2週間前のAnker「Nebula X1」のレビューの時に見始めたのだが、なかなか見終わらないのである。

本機は2.1ch製品なので、基本的にはDolby Atmosなどの空間オーディオフォーマットがそのままデコードできるわけではない。だが内蔵のSuperWideを使うことで、それ相当の広がりのある音場を再現できる。

「SuperWide」はCreative独自のオーディオ エンハンスメント技術で、ステレオ音源を擬似的に幅広く拡張するものだ。SuperWideがスピーカー製品に搭載されたのは、2016年の「Creative iRoar Go」が最初だが、しばらく搭載製品がなく、8年後の2024年、「Sound Blaster GS3」で再搭載された。それ以降、サウンドバー製品には目玉機能として搭載されている。

「マニフェスト」はヒューマンドラマなので派手な銃撃戦などのシーンはないが、車がぶつかる音、ものを破壊する音など、SEも多い。薄型ながら30Hzまで出るサブウーファがあるので、物がぶつかるようなズシンと来るタイプの効果音は得意だ。

SuperWideはOFF、Near、Farの3モードがある。スピーカー前1mで視聴した場合、Nearモードが適しているわけだが、以前レビューした「SoundBlaster GS5」では、Nearモードでは若干やりすぎ感があり、わざとらしさを感じたものだが、今回のNearモードは再チューニングされたのか、なかなかいい感じにまとまっている。

もともとサウンドバーの全長が55cmと長めではあるが、その幅よりも両わき30cmぐらい拡がったところから音が出てくる感じがする。セリフの明瞭感も良好だ。

視聴位置を3m程度離して、Farモードで聴いてみた。一般的にテレビを見る場合はこれぐらいの距離になると思われるが、サウンドの幅は両脇に広がるというよりも、一旦広がったあと耳のほうに向かって緩いU字型に曲がってきているような感じがする。音像を広げながらも、あまり離れすぎずリアリティを感じさせるようなチューニングになっているようだ。

なお、セリフなどのセンター位置の音声帯域は、ややエコーが深くなる。ちょっとしたホールや映画館で聴いている雰囲気である。テレビと合わせてもいいが、プロジェクターとの相性もいい。

プロジェクタのHDMI ARC端子と接続すれば、プロジェクタ側の電源が入るとサウンドバー側の入力が自動的にHDMI ARCに切り替わるので、セット全体としての運用も手間がない。

ちょっと気になったのが、最小音量でもそれなりに音がデカいという点である。リモコンのボリューム的には最小だが、ボリューム表示としては「3」になっており、「1」や「2」に設定できない。夜中に家族に気を使いながら小音量で聴く……という使い方には向かないだろう。

満足度が高い音楽再生

続いて音楽再生を試してみよう。今回試聴したのは、先日訃報が伝えられたオジー・オズボーンを偲んで、Amazon Musicで配信されているBlack Sabbathの「Sabbath Bloody Sabbath」である。同アルバムはUltra HDにリマスターされてはいるが、サウンドバー側がハイレゾ対応ではないので、SDサウンドでの再生となる。

本アルバムはいつもの固いリフだけでなく、随所にシンセサイザーが入り、途中にアコースティックギターやストリングス、ピアノなどが入ったパートがあるという、若干プログレッシブな展開を見せる異色作である。

こうしたサウンドとSuperWideは非常に相性がいい。Nearモードで聴いても、映画のサウンドトラックのような広がりを見せる点で、聴いていて楽しいスピーカーだ。BASSのレベルをマックスの+6まで上げて、ドスドスにしても、40Wサブウーファがしっかりついてくる。

サウンドモードを聴き比べてみた。MOVIEは、中低音部を持ち上げて聴かせるようで、効果音の迫力重視という事だろう。MUSICモードは、やや高域を持ち上げて、明瞭感を出すチューニングである。

VOCALモードは、ボーカル帯域を中心に持ち上げることで、音声帯域にフォーカスするチューニングである。このため、サウンド全体としてはやや低域と高域が絞られる。GAMEモードは、VOCALモードに近い特性だが、声の帯域と言うよりはSEの聞こえを良くしたモードと言える。

バスとトレブルの増減は、可変範囲はそれほど大きくないが、音のメリハリを付けるには十分だ。元々ツイーターがないので、音楽スピーカーとしては音が丸いタイプだが、トレブルを+2ぐらい上げると明瞭感が上がる。

総論

上向きのスピーカーがあるわけではないので、立体音響とまではいかないが、SuperWideの横方向の広がりの表現は、製品を重ねるごとにだんだん上手くなっている。行き過ぎず、ちょうどいいというポジションはある意味人それぞれなのだが、Creative Stage Proはそのポイントをちょうどいいところに置いている。

同社サウンドバーとしてはやや大きめの商品ということになるが、なにせ価格が安いので導入はしやすい。すでにメインのサウンドバーはあるという人も、PCの音楽再生、プロジェクタの補強としても導入しやすいだろう。

惜しいのはやはり、Bluetooth対応が後手に回っているところだ。いまどきSBCオンリーというのは、ハイレゾ製品ではないとはいえ、もう時代に合わない気がする。

今後Creativeに期待したいのは、サウンドバーのハイレゾ製品だ。ハイエンドモデルのCreative SXFI CARRIER(138,000円)でさえハイレゾ非対応である。Creativeにハイエンドモデルを求めるユーザーは少ないと思うが、Creativeの技術でハイレゾ+空間オーディオ対応したら、どれぐらいの価格帯でやれるのだろうか。

スマホでさえハイレゾに対応した昨今、ハイレゾ=ハイエンドということもなくなった。普通にハイレゾが聴けるCreativeの製品も、聴いてみたいところである。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。