「アップルだけが提供できる体験」。iPhone 4S発表

-iOS 5やiCloudのデモも実施


ティム・クックCEO

 アップルは4日(米国時間)、iPhone 4Sの発表会を開催。日本においても、ビデオ録画で報道陣向けに発表会の模様が紹介された。

 ティム・クックCEOは、アップルの特徴を「OSなどのソフトウェアから、ハードウェア、サービスなどすべてを統合し、統一された体験として製品を提供できること。いまアップルは最高の状態で、勢いがある」と切り出し、“勢い”の事例として中国の上海、香港に開設した新しいApple Retail Storeを紹介した。

 上海のApple Storeは同社で最大規模となる店舗で、1週間で来場者10万人を記録。最初のロスアンゼルス店舗は1カ月で10万人だったことを例に引き、同Storeの人気のほどを強調した。香港の店舗は、ビクトリアハーバーを望む大規模店舗となっており、そのデザインや来場者の多さを紹介。「Appleにしかできない」リテール店舗であることを訴えた。

 中国には現在6店舗を展開しており、今後も拡大していく方針。ワールドワイドでは、357店舗を11カ国で展開している。


上海のApple Store香港のApple Store
Macのシェアは23%。「まだ伸びしろがある」

 続いて、クックCEOは、Mac、iPod、iPhone、iPadの4つの製品カテゴリのトピックを紹介した。

 Macについては、最新OSとなるMac OS X 10.7(Lion)がダウンロードのみで提供し、600万ダウンロードを記録したことを明らかにした。これは前バージョンSnow Leopardリリース時との比較で約80%の増加とのことで、1週間で約10%のMacユーザーがLionに移行したとする。クックCEOは、「Windows 7では、20週間でインストールベースで10%に到達したが、Lionはたった2週間」と説明。Lionへの支持の高さを訴えた。

 また、MacBook Airへの支持の高さや、PC市場全体の約6倍の速度でMacがシェアを獲得していることを紹介し、現在のシェアは23%と言及。「70%以上がMac以外、まだまだ伸びしろがある」と今後の成長への意欲を見せた。

 iPodについては、2001年の登場以来「音楽業界を巻き込んで革命を起こした」と述べ、音楽を持ち運ぶだけでなく、エクササイズや家庭内などさまざまな活用シーンを拡大したことを紹介。「iPodは、3億台を10年で出荷した。ソニーのカセットウォークマンが30年かかって2億2,000万台だったことを考えると、驚くべき数字」とする。

 「MP3プレーヤーは成熟市場になった」と語る一方で、「iPodは依然としてAppleにとって重要だ。我々は'10年7月~'11年6月の1年間に4,500万台のiPodを販売した。そのうち約半数が“初のiPod”となっている」とし、まだ成長余地のある市場であることを強調した。

iPodは累計3億台を突破1年で4,500万台販売昨年1年の購入者の約半数が「最初のiPod」
スマートフォン市場全体より伸びているiPhone

 iPhoneに関しては、「世界一のスマートフォン。いままで販売したiPhoneの半分以上がiPhone 4となった。台数だけでなく、顧客満足度でも最高の評価を得ている。しかし、まだ携帯電話では5%のシェアだ。われわれは全ての携帯電話がスマートフォンになると考えている。この世界市場は15億台規模。Appleには大きな成長機会が待っている」と語る。

 iPadについては、消費者だけでなく、学校や企業で導入が進んでいることを紹介。「18カ月で、消費者、企業、教育あらゆる領域で使われるようになった。タブレット市場は、あらゆる企業が参入しているが、iPadのシェアは3/4。人々が求めているのは“タブレット”ではない。“iPad”だ」とし、飛行機のパイロットによる活用事例などを紹介した。iPad、iPhoneなどのiOSデバイスの普及台数は、2億5,000万台を突破したという。

iPhoneは顧客満足度調査でも高い評価iPhoneのシェアは携帯電話全体では5%iPadの活用事例

■ Safariタブ対応やリマインダなど「iOS 5」を紹介

スコット・フォーストール氏

 iOS担当シニア・バイスプレジデントのスコット・フォーストール氏は、iOS 5の主要機能について紹介した。iPhoneアプリは50万、iPadネイティブアプリも14万を超えるなど、ユーザー/開発者の支持を得ていることに言及し、ダウンロードアプリの総計は180億で、毎月10億ずつ増加しているという。

 200を超える新機能が用意されているが、まずiOSデバイスで、グリーティングカードを作成し、郵送までの手続きができる「Cards」アプリを紹介。2.99ドルで米国内、4.99ドルで世界各地にグリーティングカードを送ることができる。

 次いで、iOS 5搭載iPad、iPhone、iPodと無線LANを経由し、メッセージをやりとりできる「iMessage」や、OSレベルでのTwitter統合、リマインダー機能、各アプリの新着情報をまとめて表示する「通知センター」などの機能を順に紹介。さらに、「GQ」などの雑誌を定期購読でき、バックグラウンドダウンロードに対応した「NewsStand」などについてもデモを行なった。

Cards通知センターiMessage
リマインダー「写真」から直接ツイート可能にNewsStand
オートAF/AE

 カメラについては、グリッドラインや、AE/AFロックなどの機能を紹介。カメラ内のビデオ編集や赤目補正などの機能強化も行なっている。

 さらに、WebブラウザのSafariは、ページに合わせて、最適なデザインで表示するReader機能を搭載。複数ページもスクロールして1枚のページとして読めるようになるという。さらに、タブブラウザ機能や、あとで読みたい記事などを登録しておける「Reading List」などの機能も追加された。

 こうした機能に加え、iOS 5では、利用開始時にパソコンとアクティベーションを行なう必要がなくなったことを紹介。iOS自体のバージョンアップも端末から可能となった。iOS 5の対応機器は、iPhone 4S/4/3GSと、第3/4世代iPod touchで、12日から無償アップデートで利用可能になる。

Safariはタブ対応ReadingListiPhone 3GSや第3/4世代touchもiOS 5に対応

■ iCloudで「同期」をカンタンに。友人のiPhoneを探す機能も

エディー・キュー氏

 iCloudを担当するエディー・キュー氏は、クラウドサービス「iCloud」の概要を紹介。音楽やビデオ、写真などのさまざまなApple製デバイスをネットワーク経由で同期できる点を実際のデモを交えて紹介。iTunes in the Cloudにより、BEATLESのアルバム「ONE」をMacで購入すると、iPhoneにも自動で同期されるデモを行ない、簡単に扱えることをアピール。iCloudではメールやドキュメントなどもバックアップ/同期できる。

 また、各デバイスで撮影、管理している写真から自動的に最新の写真をiCloud上に同期し、さまざまなデバイスで閲覧できるようにするPhoto Streamなども紹介した。


PCで購入した曲がiPhoneにも自動で同期されるPhotoStream

 GPSを使って、紛失したiPhoneなどを探すことができる「Find my iPhone(iPhoneを探す)」機能も強化。Macからの検索に対応したほか、家族や友人がiPhone利用者の居場所検索に使える拡張機能を追加した。たとえばディズニーランドに行く時など、相互でiPhoneの位置検出を許可しておくことで、広く混雑した場所でも友人を見つけだせるほか、子供の居場所把握などの利用例を紹介。簡単に期限を設定して、便利に使える点を強調した。

友人をiPhoneのGPS情報をもとに発見GPS検出の期限設定も可能特徴

■ 4からの進化を強調。パーソナル秘書「siri」も

フィル・シラー氏

 新製品の発表を担当したのは、フィル・シラー氏。iPod nanoの新しいUIを紹介するとともに、「今までで一番安いnano」と価格の安さもアピール。iPod touchのホワイトモデル追加も簡単に紹介した。

 ついで、「世界最高のスマートフォン iPhone 4」の成功について言及。Retina、ガラス加工の背面、薄さなどを引き継いだiPhone 4Sは、「外見は4と同じにみえるが、中身は全く異なっている」と語り、デュアルコアCPUのA5のパフォーマンスを強調。EPIC GAMESのゲームデモなどで、グラフィックスの違いなどを強調した。

 iPhone 4Sの新しいアンテナについては、「2つのアンテナ間でインテリジェントに送受信を切り替え、通話中でも細かく制御。通信速度を向上した」とする。また、新光学エンジンや裏面照射型CMOSセンサー、1080p動画撮影など、iPhone 4Sの機能強化点を紹介した。

A5プロセッサにより、3Dゲームもなめらかに動くことをアピール他の「4G」スマートフォンとの速度比較
AirPlay Mirroringにも対応

 最後に紹介したのが、iPhone 4Sを“パーソナル秘書”として活用できる「Siri」だ。これは、音声認識技術を使って入力した質問から、無線LAN/3G経由でネット情報やスケジュールなどを検索し、回答するというもの。

 例えば、「今日の天気は?」、「クパチーノでは雨が降る?」、「今日は傘を持っていくべき?」といった質問が、全て同じ内容を意味していることを理解し、いずれの質問に対しても、「今日の天気」を合成音声と合わせて、画面に表示する。また、Wikipediaの検索や、「クパチーノのイタリアン」としゃべることで、近隣店舗などを表示することができる。さらに、カレンダーアプリで管理している「○月○日○時の」自分のスケジュールを確認し、会議の予定を変更する、といった活用も可能という。実際のデモの模様はPC Watchの記事でも紹介している。

 なお、利用可能な言語は、英語、フランス語、ドイツ語のみで、今後順次対応言語を増やしていく予定としている。また、Siriは現時点ではベータ版サービスとなる。

「今日の天気は?」とiPhoneに尋ねると天気予報を提示。「今日は傘が必要?」と聞いても同様に天気予報を表示するなど、“意味”を解釈しながら回答を行なう「家に着いたらプレゼントを忘れずに」というリマインダを車から降りる時に表示
iPhoneの新ラインナップ

 フィル・シラー氏は、米国における2年契約時の販売価格として、iPhone 4Sの64GBが399ドル、32GBが299ドル、16GBが199ドルになることを紹介。さらに、iPhone 4 8GBを99ドルで、iPhone 3GSを無料とすることを発表(いずれも2年契約)。「各価格帯で最高のスマートフォンを揃えた」とする。

 14日に発売されるのは、米国、カナダ、オーストラリア、イギリス、フランス、ドイツ、日本の7カ国。日本でソフトバンクのほか、KDDIが扱うこともシラー氏が明らかにした。2011年内に70カ国、110以上のキャリアでiPhone 4Sを展開するという。

 ティム・クックCEOは、「iOS 5は最も先進的なOS、iCloudは革新的なクラウドサービス、iPhone 4Sは、最もすばらしいiPhone。最高のパーソナルシステムSiri。それぞれが素晴らしく、産業をリードするものだが、なぜAppleが先を進んでいるのか? それぞれのエンジニアが相互に協力して築きあげたものだからだ。アップルだけが、素晴らしいソフトウェア、ハードウェア、サービスを作り上げ、これらを統合された体験として提供できる」と述べ、会見を締めくくった。

10月14日に7カ国で発売「アップルだけが、ソフトウェア、ハードウェア、サービスを高度に融合できる」とクックCEO

(2011年 10月 5日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]