D&M、DALIの新フラッグシップスピーカー「EPICON6」
-新開発SMC材で歪低減。独創的な「FAZON F5」も
DALIのフラッグシップモデル「EPICON6」 |
ディーアンドエムホールディングスは15日、デンマークDALI製のスピーカー新モデル2機種を発表した。フラッグシップモデル「EPICON6」が4月下旬発売。価格は1台60万円だが、ペアでの販売となっており、ペア価格は120万円。仕上げはブラック(B)、ウォールナット(MH)、ルビーマカッサル(MR)から選択できる。
さらに独創的なデザインを採用した「FAZON F5」も4月下旬に発売。価格は1台22万円で、こちらもペア販売。ペア価格は44万円。なお、この価格はブラック(B)、およびホワイト(W)モデルのもの。レッドモデル(R)は1台25万円、ペアで50万円と若干高価になる。
■EPICON6
約10年間販売されてきた、同社フラッグシップのEUPHONIAシリーズに代わるフラッグシップ。EPICONという名称は、英語のEPIC(雄大な、壮大な)に由来しているという。2011年11月の東京インターナショナルオーディオショウで先行披露されたもので、今回詳細な価格や発売日、仕様が明らかにされた。
29mm径のソフトドームツイータと、10×55mmのリボンツイータを組み合わせたハイブリッドツイータに、165mm径のウッドファイバーコーンウーファ2基を追加したフロア型。
29mm径のソフトドームツイータと、10×55mmのリボンツイータを組み合わせたハイブリッドツイータ | 165mm径のウッドファイバーコーンウーファを2基搭載 |
最大の特徴は、ウーファの磁気回路(Linear Force Motor System)に使用されているSMC(ソフト・マグネティック・コンパウンド)と呼ばれる素材。ポールピースとトッププレート内周部(ボイスコイルに近接する部分)に使われているもので、コンパウンド状の粒が小さい砂鉄の一粒一粒に、電気的絶縁性のある科学的コーティングを施し、固めて作られている。こうすることで、「電流歪を極限まで抑えることができた」(DALIの研究開発ディレクター、キム・クリスチャンセン氏)という。
磁気回路にSMC材を使いながら、通常のユニットと同様に十字型ポールピースや上下分割型アルミショートニングなど、磁気回路に起因する歪の低減策も適用する事で、「アンプ並の歪特性を実現している」(キム・クリスチャンセン氏)という。
コンパウンド状の粒が小さい砂鉄一粒一粒に、電気的絶縁性のある科学的コーティングを施し、固めて磁気回路に使っている | |
コイルから発生する磁束の広がりを示した図。左が鉄で作ったもの、右がSMC。表面にしか磁束が広がっていない鉄に対し、SMCでは均等に広がっているのがわかる | 周波数特性のグラフ。下にある緑のラインが歪特性。非常に低いのがわかる |
振動板はEUPHONIA以来、各シリーズに採用されているウッドファイバーコーンを、EPICON6用にチューニングしたものを使用。軽量・高剛性で低損失なのが特徴という。
エンクロージャはバスレフで、ウーファの背面にあたる部分に2つのバスレフポートを用意。「ユニット背後の空気の流れを、細いダクトで逃がそうとするとストレスがかかるが、大きなダクトを設ける事で、背後の気流がスムーズになり、エンクロージャ内部の挙動をコントロールできるようになった」(キム・クリスチャンセン氏)という。
また、2基のウーファの間には、エンクロージャ内部に仕切りを設けており、低域干渉を防止。底部にあるネットワークボックスも隔離され、空気圧の影響を受けないようになっている。バスレフチューニング周波数は32.5Hz。
エンクロージャの表面は、塗りと研磨の工程を各10回繰り返して仕上げており、塗膜の厚みは2mmに達している。エンクロージャの素材はMDFで、側面部は6層、背面は他層構成で、厚さ53mm、正面バッフルは2層33mmで構成されている。外形寸法は232×441×1,025mm(幅×奥行き×高さ)。重量は29.8kg。
自社開発のスピーカーターミナルを採用。バイワイヤリング接続にも対応する。スパイクキットやジャンパ、ベースプレートなどが付属する。
スピーカーターミナル部分 | 塗りと研磨の工程を各10回繰り返して仕上げている | リアバスレフポートを2基搭載 |
DALIのキム・クリスチャンセン氏 |
製品発表のために来日した、DALIの研究開発ディレクター、キム・クリスチャンセン氏は、ハイエンドモデルの肝となる「SMC材」について「ユニットが動作する際のエネルギーロスを低減できるもので、電流に対しても、そして様々な周波数でもリニアな動きを実現でき、歪がほとんど無い」と利点を説明。
さらに、ユニットを自社開発している様子などもスライドで説明。「ウーファをホールドするためのネジも、専用にDALIで作るなど、本当に細かな部分までこだわっており、そうした工夫・改良の積み重ねが製品に活かされている」と説明した。
■FAZON F5
独創的な形状を採用したスピーカー。エンクロージャにはアルミ素材を使用。グロス塗装で仕上げている。製品名の「FAZON」は、デンマーク語の「FACON」(デザイン、形状)に由来する。
28mm径ソフトドームツイータと、130mm径ウーファ×2を採用したシステム。全体の再生周波数帯域は49Hz~23kHz。クロスオーバー周波数は800Hz、3kHz。入力感度は87.5dB。インピーダンスは6Ω。
両脇にある赤いスピーカーがFAZON F5 | スタンド一体型となっている |
ターミナル部分。様々な使い方ができる |
ユニークなのがスピーカーターミナル部で、ケーブルをスタンド内に隠した状態で接続可能。デザインを損なわない設置が可能になる。隠さない状態では、バナナプラグも使用できる。ターミナルはシングルワイヤータイプ。
エンクロージャはリアバスレフ。バスレフチューニング周波数は47Hz。外形寸法は281×323×919mm(幅×奥行き×高さ)、重量は13.9kg。
上部から見たところ | 筐体はアルミ素材 |
■EPICON6を聴いてみる
試聴の様子 |
ディーアンドエムホールディングスの試聴室で、EPICON6を実際に聴く事ができたので、簡単なインプレッションをお届けする。
SMC材が使われたウーファが活きているのか、広がる音場が非常にクリアで、雑味がまったく感じられない。その音場に音像がシッカリと定位するため、自然で立体的な音が楽しめる。オーディオというよりも、アーティストが部屋に来て演奏しているような“生っぽさ”だ。
リボンツイータならではの高域の伸びの自然さが好印象。エンクロージャの制約は一切感じられない、伸びやかで自然なサウンドだ。フロア型だが低域が強く主張するタイプではなく、適度な締まりがある。良質なブックシェルフを聴いているようなレンジ間の繋がりの良さも特徴。センスが良く、クリアで品が良く、なおかつ懐の深さを感じさせるサウンドだ。
(2012年 2月 15日)
[AV Watch編集部 山崎健太郎]