パナソニックら研究グループ、DVD記録の仕組みを解明

-原子レベルで測定。ポストBDにの記録材料/媒体へ


元素選択性X線異常散乱の概略。Sb元素、Te元素のそれぞれに対して、異常散乱が発生する異なった2つのエネルギーのX線を用いた散乱実験を行ない、元素の検出感度を変えた状態で原子配列を直接調べられる

 パナソニックと高輝度光科学研究センター(JASRI)、理化学研究所の研究グループは21日、ハンガリー科学院、山形大学と共同で、光ディスクの記録情報が長期保存でき、高速書換えも可能にするミクロな仕組みに関して、DVD材料を対象として、元素別の役割を原子レベルで解明したと発表した。ポストBDを目指す高機能な記録材料・記録媒体開発に寄与するという。

 既に実用化されているDVD、BDでは、数10ナノ秒という短いレーザー照射により、瞬時に記録相(状態)と消去相(状態)とが切り換わることで、情報の記録・書換えが行なわれている。この記録相は、室温では数10年、或いはそれ以上、保持される。

 これまで、兵庫県にある大型放射光施設「SPring-8」において、DVD/BDの光記録の際に、原子配列が高速で変化する様子は明らかになっていた。しかし、記録情報を長期保存し、かつ書換え速度を高速化するために必要な、“元素が持つ固有の役割”については不明だった。この役割が解明される事で、性能向上や、安価な材料での代替えなどに繋げられる事から、研究が進められていた。

 パナソニックら研究グループは、記録材料を構成する母体材料に使われる「ゲルマニウム・アンチモン・テルル化合物(Ge2Sb2Te5)」を構成するゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)の各元素の役割を、SPring-8の高輝度X線を用いて測定。得られたデータを、フィンランドのタンペレ工科大学の研究グループが行なったコンピュータシミュレーション結果と対比し、3次元構造を可視化。

 その結果、ゲルマニウムとテルルの作るネットワーク構造が記録情報の長期保存を可能にしていることが判明。さらに、ゲルマニウムとテルルだけで構成される化合物「GeTe」よりも、アンチモンを加えた「Ge2Sb2Te5」の方が、より高速に書換えることが可能な原因がアンチモンとテルルの作るネットワーク構造にあることを世界で初めて明らかにしたという。

 今回の成果により、DVD、BDなどに用いられる記録材料において、構成元素を選択し、元素別の原子配列をデザインする材料設計が可能になり、ポストBDとなる、高機能な記録材料・記録媒体の開発が期待できるという。


(2012年 3月 21日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]