ニコニコ動画は5月1日に「niconico」に進化

-BRAVIA/VIERA対応予定。iTunesに音楽DLも可能に


新ロゴはアルファベットとなった

 ニワンゴは26日、5月1日から展開される「ニコニコ動画」の新バージョン「ニコニコ動画 Zero」の詳細を発表した。サービス自体の名称も変更、「ニコニコ動画」、「ニコニコ生放送」など、様々なサービスを総称して「niconico」となり、その中のサービスとして「ニコニコ動画:Zero」、「ニコニコ生放送:Zero」などが位置する。「ニコニコチャンネル」と「ニコニコ静画」の名称はそのまま。

 なお、新バージョンの「zero」は5月1日から実装されるが、プレミアム会員で、なおかつ「zeroに切り替えますか?」というメッセージに「YES」を選んだ人のみzeroの機能が利用できる。切り替えた後で、従来の「ニコニコ動画(原宿)」の画面&機能に切り替える事も随時可能。一般会員は後日「zero」が利用可能になる予定だが、具体的な利用開始日時は発表されていない。




■ニコニコ動画:zero:高解像度化・タグのリアルタイム更新・UI一新

 ニコニコ動画:zeroでは、トップページデザインを大幅にリニューアル。動画視聴ページは「ZeroWatch」と呼ばれる新機能を備えたものにバージョンアップされる。配信される動画の解像度が、従来の640×368ドットから、864×486ドットに高解像度化。

 デザインも大きく変わり、中央に動画が表示され、画面下部に関連動画が横方向に並ぶようになっている。これにより、「ZeroWatch」の視聴ページから移動したり、リロードせず、そのウインドウの中で、関連する動画を選び、再生していく事ができる。

ZeroWatchと呼ばれる新しい動画視聴画面。関連動画が下部に表示されており、別ページに移動したり、リロードせずに新しい動画を視聴できるサービス名統合の概念図

 キーワードで動画を検索したい場合などは、「ZeroWatch」の上に新しいウインドウがポップアップし、そこで検索する事が可能。動画視聴中に、画面下部のリストに検索でヒットした動画のサムネイルを表示させる事もできる。

 機能面では、動画に付与されているタグ情報を編集すると、それがリアルタイムに反映されるようになった。「ニコ動ではタグ戦争と呼ばれる、タグ編集合戦が発生し、タグをチャットのようにしてコミュニケーションする人もいるが、そうした反映がリアルタイムになる。動画を見ている間に、その動画のタグがどんどん編集されていくメージ」(ドワンゴの代表取締役会長・川上量生氏)。

 また、動画に対する感想などを書き込む「動画レビュー」機能も用意。他のユーザーの反響やレビューから選んで動画を視聴する事が可能になる。「ニコ動はゆるい繋がりで、知らない人同士がコメントし合うのが特徴だけれど、それとは別に、TwitterなどのSNSを使って動画を紹介している人がいる。ニコ動としては、そうした外部ツールをどんどん取り入れようという姿勢で、囲い込むつもりはないが、Twitterは数日でコメントが消えてしまうので、保存できるレビューがある方が便利だろうと考えた」(川上氏)とのこと。



■ニコニコ生放送:zero:一覧でリアルタイムコメント表示

ZeroWatchを導入したと「ニコニコ生放送:zero」の視聴ページ。動画内の左右矢印を押すと、次の放送へ。下部のサムネイルからも他の放送へアクセスできる
ニコニコ生放送:zeroの新しいトップページ。各放送へのコメントや、コメント数などがリアルタイムに表示されている

 「ZeroWatch」は、ニコニコ生放送にも適用され、視聴している生放送画面の下部に、関連動画のサムネイルが表示されるようになる。画面の左右に矢印も表示され、それを押すことで、同じウインドウで、テレビのように次々に動画を切り替えていく事ができる。

 また、配信動画解像度も810×456ドットに拡大。従来サイズに戻す事もできる。なお、公式生放送を視聴している場合は、放送中の他の公式番組がサムネイル表示され、ユーザー生放送を見ている場合は、その番組が属しているカテゴリの、ユーザー生放送番組が表示される。

 同時に6,000以上の放送が行なわれる事もあるニコニコ生放送だが、放送の数が多いと、盛り上がっている放送などを探すのが難しくなる。そこで「リアルタイム感を重視した」という新機能「Recent」(リーセント)がトップページに導入される。

 これは、トップに表示される番組のサムネイルの下に、各番組に対して書き込まれているコメントが、リアルタイムに表示されるというもの。番組のコメント数、視聴者数もリアルタイムに表示されるため、どの番組に多くの人が集まり、盛り上がり、どんなコメントが書き込まれているのかが、トップページから視覚的に把握しやすくなる。

 また、生放送を視聴している際に、視聴者数やコメント数により、その番組がランキングの上位に入ると、ウインドウの上部にその情報がリアルタイムに通知されるようになる。これにより、放送をしている人、見ている人が「2位になった。もっと盛り上がって1位を目指そう!」などと、盛り上がる事ができる。




■テレビにも対応:BRAVIAやVIERAでコメント付き動画

BRAVIAとVIERAでもニコニコ動画がコメント付きで楽しめるようになる

 スタート時期は未定だが、テレビでもニコニコ動画がコメント付きで楽しめるようになる。ソニーのBRAVIA、パナソニックのVIERAにおいて、アプリ形式で提供される予定で、そのアプリを使ってコメント付き動画が視聴できるようになる。

 対応サービスは、BRAVIAでは「ニコニコ動画」、VIERAでは動画だけでなく、「ニコニコ生放送」も視聴できるようになるという。その際、zeroの豊富な機能に対応するのではなく、コメント付き動画をテレビで楽しむシンプルなものになる模様。

 詳細は未定だが、対応テレビがニコニコ超会議(4月28日~29日に幕張メッセで開催)のドワンゴブースで参考展示されるという。

 なお、BRAVIAのネットチャンネルでは、「ニコニコ実況」のコメントを表示するアプリが既に用意されているが「BRAVIAのアプリの中では、ダウンロード数ナンバーワンになっている」(夏野剛氏)という。さらに夏野氏は、他社への展開の可能性について「今回、ソニーとパナソニックから、一緒に対応していこうという良い話をいただき、この2社からとなっていますが、他社にはこれからお話します」と、対応メーカーを拡大させていく意向を示した。




■NicoSound:簡単に動画から音楽をDL & iTunes登録

 「NicoSound」と呼ばれる新サービスもスタート。これは、ニコニコ動画で音楽関係の動画を投稿しているユーザーが、その動画で使われている音楽ファイルのダウンロードを許可した場合、動画の視聴ページに音楽ファイルのダウンロード用ボタンを表示するもの。

 視聴者がそのボタンを押すと、AAC形式の音楽ファイルをダウンロード&iTunesに登録でき、iPhoneなどに転送して楽しむ事ができる。スマートフォンでは、Androidでアクセスすると同様のボタンが表示され、Android端末に音楽ダウンロードが可能。将来的にはiOSにも対応する予定だという。

投稿者が許可した音楽ファイルをダウンロードできる「NicoSound」Androidでアクセスしたところ。スマホに音楽をダウンロードできる

 なお、ユーザーが投稿した音楽系の動画では、オリジナルだけでなく、JASRACの管理する国内楽曲を演奏したり、歌ったりしたものもある。これらの扱いについて川上氏は、「ニコニコ動画ではJASRACと包括契約を結んでいるが、これまでの契約は配信向けのもので、音楽ファイルをダウンロードするとなると権利処理の問題があり、ダウンロード1回あたり幾らというお金が必要になってしまう。そこで今回、契約を少し拡張して、包括契約の中でダウンロードも処理できるようになった。投稿者が許可していれば、その動画で使われている音楽ファイルを自由に、無料でダウンロードできる。その際の使用料は、ニコニコ動画がJASRACに支払っており、ダウンロードされた回数に応じて、JASRACに登録されている作詞/作曲者などに還元される」という。

 また、このサービスを開始する理由として川上氏は、「ニコニコ動画の投稿動画から、音楽ファイルだけをダウンロードするようなページが存在するのを把握している。そうした(ものを利用しても動画に使われている音楽ファイルが欲しいという)ニーズもあるという事であり、正規の状態でダウンロードできる手段を用意した方が良いと考えた。将来的には、そこからお金をとる事もできるようなシステムにしている」とした。



■「ニコる」、「Nsen」、iPadアプリも

「ニコる」を押しているところ
8チャンネルが24時間配信されている「Nsen」
iPad版のニコニコ動画アプリも5月1日に公開予定

 書き込むコメントやタグに対する評価機能も追加。「ニコる」と呼ばれるもので、視聴ページに設置されたボタンをクリックすることで、Facebookの「いいね」ボタンのように、気に入ったコメントやタグに、気に入った事を伝える事ができる。この評価は、コメントを投稿した人にも伝わる。また、ニコった履歴、ニコられた履歴は「ニコるページ」から確認でき、コメントやタグへの評価をユーザー間で共有できる。

 マイページもリニューアル。お気に入り登録をしているチャンネルや、コミュニティの生放送番組数とタイムシフト予約数が表示される「生放送」のタブや、ニコニコ静画で投稿したイラストとマンガが表示される「投稿」のタブが追加される。ニコルの履歴・ランキング確認も、マイページから可能。

 動画をユーザーが選ばなくても、自動的に次々と再生してくれる「Nsen」(エヌセン)という放送も用意される。8つの専門チャンネル「VOCALOID」、「ニコニコインディーズ」、「歌ってみた」、「演奏してみた」、「東方」、「PV」、「蛍の光」、「オールジャンル」という、いずれも音楽系の8チャンネルが用意され、24時間放送される。

 これらのチャンネルでは、ニコニコ動画に投稿された音楽から、チャンネルに該当するものが、ユーザーのリクエストをベースに選ばれ、次々と再生される。このリクエストコーナーと、独自にプログラムされた動画紹介コーナーが各チャンネルで30分毎に、交互に放送され、新しい音楽との出会いの場になるという。なお、音楽系のチャンネルだけになっているのは、「BGM的に、何か他の作業をしながら楽しんでもらう事を想定しているため」(ドワンゴ取締役の夏野剛氏)だという。

 またiPad版ニコニコ動画アプリも5月1日に無料公開予定。PC版の新動画プレーヤー画面と同様に、動画を再生しながら次に再生したい動画を選ぶ事が可能。iPad本体を縦/横どちらに保持しても対応できる画面デザインを採用している。




■海外ユーザーも意識し、「niconico」へ

ドワンゴ取締役の夏野剛氏

 サービスの全体名称が「ニコニコ動画」から「niconico」に変わった事について、川上氏は「動画以外のサービスも増えてきたため、わかりやすくした」と説明。アルファベットになった事について、夏野氏は「日本文化が好きな海外の人、アメリカやヨーロッパにおいて、ニコニコ動画が情報源として非常にプレゼンスが大きくなっており、その点も意識している」という。

 また、サービスの進捗として、4月26日現在で、IDの登録者数が2,725万人、プレミアム会員数が162万人になった事も報告。「プレミアムの収入だけで月8億円、年間で約100億円の収入になっており、これがあるため、色々な事ができるようになった。今後はまず、プレミアム会員200万人を目指している」(夏野氏)という。

 世代別のカバー率では、20代の75%がユーザーになっており、10代後半や30代の割合も増加。「50代などになると少ないが、10代後半以上には、圧倒的なメディアに育った」(夏野氏)という。


ドワンゴの代表取締役会長・川上量生氏

 一方で、ユーザーや投稿動画、生放送が増えると回線が問題になる。夏野氏は、「繋がらないじゃないか、ニコファーレ作っているくらいなら回線を増強しろとお叱りを受け、去年の今頃から劇的に増強している。現在は最大400Gbpsまで増強しており、一企業で400Gbps引いているのは我々だけじゃないかと思う。“ニコニコ動画なんて、テキスト流せば誰でもできる”と思われているかもしれないが、(回線設備投資がかかるため)やっても儲からない。これが参入障壁になっていている」と説明。川上氏も「5年前は2Gbps、10万人限定で再出発した」と振り返った。

 また、4月28日から幕張メッセで開催される「ニコニコ超会議」についての情報も発表。自身がニコニコ動画のファンだというマラソンの藤原新選手が、ニコニコ動画のプレミアム会員から2万人限定でスポンサーを募集したところ(スポンサー料は1人500円)、1週間で2万人を達成。その恩返しの意味を込めて、藤原選手はニコニコ超会議パーティーの会場まで走って行くという。

 こうしたネット上でのムーブメントを、地上に現出させる事をコンセプトとした「ニコニコ超会議」だが、枝野幸男経済産業大臣や森元首相らも参加を予定するなど、非常に大規模なイベントになる模様。

 川上氏は、「我々がやらなければ、二度と無いイベントになるだろう。成功しても、失敗しても歴史的なイベントになるのではないか。楽しみでもあり、不安でもある」と心境を語る。

 夏野氏は、「ネットの中で起こっているVOCALOIDやサブカルチャーなど、視覚化しにくいものを、全部集めたもの。枝野さんがなぜ来るのかというと、ここに日本の強いユーザージェネレーション、強いジャパンコンテンツが集まり、一番強いところが、一番見られるから。ジャパンコンテンツという意味では、物凄く歴史に残るイベントになるだろう」と予測した。



(2012年 4月 26日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]