三菱、32bit DAC搭載で約20万円の高音質メモリナビ
-「DIATONE SOUND.NAVI」。低ジッタ/31バンドEQ
スタンダードモデル「NR-MZ60」 |
三菱電機は、32bit DACを搭載するなど、音質にこだわったカーナビ「DIATONE SOUND.NAVI」2機種を7月4日に発売する。価格はオープンプライス。店頭予想価格は、スタンダードモデル「NR-MZ60」が16~17万円程度、MZ60をベースに、イコライジング機能などを強化したプレミアムモデル「NR-MZ60PREMI」が20~21万円程度。
機能の平準化、低価格化が定着したカーナビ市場において、“高音質”を第一に開発し、新たな付加価値として訴求するというモデル。そのため、ブランドイメージとしても「DIATONE」を全面に押し出して音質をアピール。ブランド認知・評価層が多くを占める40~60歳代をメインターゲットとしている。
プレミアムモデル「NR-MZ60PREMI」 |
2DINサイズのナビで、ディスプレイは7型、800×480ドット。MZ60とMZ60PREMIの機能や仕様、搭載されているパーツはほぼ共通しており、後述するイコライジング機能のみが異なる。基本はメモリナビで、SDカードスロットを2基装備。地図データを収めた付属の16GB SDカードを挿入して使うほか、もう1つのSDカードスロットに最大32GBまでのSDHCカードを挿入でき、音楽ファイルが再生可能。USB端子も備え、CD/DVDドライブ、フルセグ/ワンセグ対応の地上デジタルチューナも搭載している。
2機種に共通する最大の特徴は、同社カーオーディオの高級モデル「DA-PX1」(80万円)と同様に、32bit DACを採用している事。TIバーブラウン製のアドバンスドセグメント方式のDACで、綿密で臨場感のある再生を可能にするという。
SDカードスロットを2基搭載し、1つは地図用、残りがAV用 | 同社カーオーディオの高級モデル「DA-PX1」 |
さらに、大容量のメモリを搭載。CDを含め、音楽再生時に読み取った音楽データを一旦メモリに格納し、それを正確な基準クロックで読み出し、原理的にジッタの影響を除去。正確な再生ができるとしている。
音質調整を行なうDSPは、通常のカーナビで使われている24bitよりも大幅に演算精度が高い40bitのものを使用。信号処理による音質の劣化を防いでいる。
CD/DVDドライブは、音楽ファイルを保存したディスクの再生も可能。USB端子とSDカードスロットは、どちらも32GBまでのUSBメモリ/SDHCカードが利用可能。再生対応フォーマットはリニアPCM、WAV、MP3、MWA、AAC。CDからファイルへのリッピング機能も用意。SDオーディオ規格に準拠して、AACで録音できる「Music Folder」機能も備えている。
フロントに備えるUSB端子は、USBメモリなどに保存した音楽ファイルが再生できるほか、別売ケーブルを使い、iPod/iPhoneも接続可能。iPod内の楽曲をデジタル伝送し、カーナビのDACで処理し、高音質で再生できるという。
Bluetoothに標準で対応し、2.1+EDRに準拠。プロファイルはHFP/OPP/DUN/A2DP/AVRCPに対応。地デジチューナは4チューナ×4アンテナ構成で、ワンセグにも対応。AM/FMチューナも備えている。
超低音を再生時、低音をカットする新開発の「PremiDIA VBL」も搭載し、大音量再生時の低音の歪みを低減。通常音量ではカットせず、量感のある低音が楽しめるという。また、NXP製のローノイズパワーアンプも装備し、増幅率を3分の1に下げ、入力信号レベルを3倍大きくする事で、周辺回路からのノイズ干渉も抑えたという。内蔵アンプの最大出力は45W×4chで、適合するスピーカーのインピーダンスは4~8Ω。
■プレミアムモデルはイコライジングが多機能
プレミアムモデル「NR-MZ60PREMI」ではこれに加え、左右独立31バンドのグラフィックイコライザをフロントチャンネル向けに、リアチャンネル向けには左右独立10バンドを搭載。設置した車に合わせた音質の調整ができる。MZ60では、フロント/リアのどちらも、左右共通の10バンドグラフィックイコライザとなる。
リスナーと各スピーカー間の距離の差で生じる音波の到達時間の不揃いを詳細に調整する、独自のマルチウェイ・タイムアライメント方式も採用。フロント用パワーアンプだけで、左右に加え、最大3ウェイスピーカーまで高音・低音等の各スピーカーユニット間の時間差の独立補正ができる。
また、各スピーカーユニット毎に、カットオフ周波数・スロープ・レベルなども調整できるクロスオーバーネットワークを装備。「MZ60PREMI」はサブウーファを含めた最大4ウェイ(左右6スピーカー+サブウーファ)、MZ60は最大3ウェイまでの構成に対応できる。
スタンダードモデルとプレミアムモデルの違い | プレミアムモデルの音質設定画面 | マルチウェイ・タイムアライメントの解説図 |
なお、各モデルともハイエンドオーディオを意識したメニューデザインになっているほか、グラフィックイコライザをモチーフにしたオープニング画面を採用。プレミアムモデルではさらに、DA-PX1を意識したカラーリングになっている。
■ナビ機能
ナビ機能では、ドライバーが右折、左折時に必要となる「曲がる場所」と「方向」の、2つの情報を瞬時に把握できるというシンプルマップを搭載。
ほかにも、高速道路走行中にリアカメラが走行レーンを監視し、車両がはみ出すか、はみ出す危険性を察知すると、警告音と画面表示でドライバーに知らせる「レーンアシスト機能」も搭載。
また、オプションでハンドルに装着する「ドライビングリモコン」も用意。AVソースの切り替え、音量調節、地図スケールの切り替えを手元で簡単に操作できる。
「曲がる場所」と「方向」の、2つの情報を瞬時に把握できるというシンプルマップ | 走行レーンを外れると教えてくれる機能も | 、オプションでハンドルに装着する「ドライビングリモコン」も用意 |
■実際に聴いてみる
音質にこだわった製品ということで、発表会場には通常のデモカーを使った試聴に加え、従来モデル「MZ50」と「MZ60」をヘッドフォンで比較試聴できるコーナーや、ホームオーディオ用スピーカーを接続し、ピュアオーディオのような環境で試聴ができる部屋も用意された。
ヘッドフォンでMZ50とMZ60を聴き比べると、MZ60の方が音場が広く、そこに広がる音も高域が非常に細かく、情報量が多くなっている事が確認できる。また、デモカー内での試聴では、特別なサラウンド処理をかけていない状態で再生しても、音場が広く、フロントガラスを超えてボンネットの上にヴォーカルの音像が定位。左右の広がりもドアスピーカーの位置を超える広さが感じられ、高域の抜けの良さも合わさり、見通しが良く、スッキリとしたサウンドが楽しめた。
ヘッドフォンで従来モデルと比較試聴できるようになっていた | ブックシェルフスピーカーとの展示も |
デモカーで音質を体験 | デモカーのスピーカー構成図 |
オーディオルームでは、DIATONEのユニットを40リットルの密閉型エンクロージャに取り付けたスピーカーで、MZ50とMZ60を比較。エンクロージャの容積は、自動車のドアの容積と同程度になるよう決められたという。
試聴室も用意。まるでピュアオーディオ製品の発表会のようだ。左にあるスピーカーがDIATONEのホーム用ハイエンド「DS-MA1」、右が発表会のために作られたスピーカー |
こちらの試聴でも、音の広がりが大幅に向上している事がわかる。ライヴ録音の音源が使われたが、歌がスタートする前の拍手が、MZ50は左右のスピーカーの間に収まっているが、MZ60ではスピーカーの外側、部屋の壁に近い位置まで広がる。ヴォーカルの響きが虚空に広がり、消えていく様もMZ60の方がより広大で、奥行きが深い。音像の輪郭もクリアでシャープ。高域に雑味が少なく、高さの描写も出来ているため、聴いていると自然に目線が上向きになっていた。
さらに試聴ルームでは、パワーアンプにPASS「X600.5」、スピーカーにDIATONEのホーム用ハイエンド「DS-MA1」と、どちらも200万円を越える高級モデルと「NR-MZ60PREMI」を組み合わせたデモも行なわれ、ポテンシャルの高さがアピールされた。
(2012年 6月 5日)
[AV Watch編集部 山崎健太郎]