秋葉原「オーディオ・ホームシアター展」は10月19日開幕

-ヘッドフォンなど若年層にも訴求。イヤフォン工作も


日本オーディオ協会の校條亮治会長

 オーディオ・ビジュアル関連の総合展示会「オーディオ・ホームシアター展」(音展)が10月19日(金)~21日(日)にかけて、東京・秋葉原で開催される。入場料は無料だが、一部のイベントは有料となる。主催は日本オーディオ協会。それに先立ち、7月31日に都内で開催概要の記者説明会が行なわれた。

 このイベントは、'09年2月までパシフィコ横浜で行なわれていた「A&Vフェスタ」が、東京・秋葉原に場所を変え、ユーザー、メーカー、販売店、地域が一同に参画する形態へと変わったもの。'09年11月に第1回が行なわれ、今回で4回目となる。

 会場は、JR秋葉原駅前の秋葉原UDX・アキバスクエア(2F)と、富士ソフトのアキバプラザ(4F~7F)をメイン会場とし、それ以外にも近隣の販売店などでも関連イベントを実施予定。

 今回のキャッチコピーは「ココロゆさぶる音楽のヒミツおしえて」。出展企業が展開するブースで製品展示や試聴会が開催されるほか、メーカーの枠を超えた参加型イベント、セミナー、工作教室なども実施する。

 出展メーカーは会場内が77社(前回75社)、会場外が12社(同6社)で、目標来場者数は2万7,000人(前回実績26,600人)。




■若年層にもオーディオの魅力をアピール

 今年の特徴は、20代など、若い層へのアピールを強めている事。日本オーディオ協会の校條亮治会長は、昨年のイベントで実施した来場者調査の結果を紹介。「興味あるオーディオ機器のジャンル」を聞いたところ、3位にヘッドフォン(12.2%)が入ったという。「何十年もオーディオをやってきた我々からすると、アンプ、スピーカー、CDなどの答えになるだろうと思っているが、こうした結果は現在の市場を表している。それを踏まえたフェスティバルにしていきたい」という。

今年のポスター。若者向けも意識し、インパクトのあるカラーになった

 さらに、昨年は来場者の年代構成が、60代が12.4%だったのに対し、20代が14.8%と上回った。「60代を20代が超えたのは秋葉原に来てから、2年連続。オーディオと言うと“年寄りの道楽”のように思われているが、今年も若い人達に、音楽の、オーディオの良さをぜひ味わって欲しい」とした。

 こうしたメッセージも込め、従来は浮世絵をベースにしていたイベントのポスターデザインも、ヘッドフォンや若者のシルエットを使い、インパクトのあるカラーを使ったものに変更される。




■工作教室など、様々なイベントが開催

 各メーカーのブースに加え、イベント企画も多数用意されている。オーディオ協会による協会テーマブースでは、新しい形のオーディオについての情報発信をテーマに、UDX 2階の会場内において、DLNAを使ったホームネットワークオーディオ機器の展示やデモ、さらにPCオーディオの紹介や、Bluetoothなどを使った家庭内ワイヤレスオーディオ通信に関する展示も実施する。

 富士ソフト会場7階のプレゼンルームでは、「音のサロン」と名付けられたイベントを予定。メーカーの垣根を超えてオーディオ機器を集め、機器の組み合わせによる楽しみや、音楽ソフトを軸にした試聴会を実施。配信音楽の試聴や、真空管アンプでアナログレコードを楽しむ回、女性ヴォーカルの再生にこだわった回、最新PCオーディオの試聴会、高音質CD比較試聴会なども実施される。

 さらに、麻倉怜士氏を講師に招いたセミナーも実施。「価格帯別コンポの魅力を探る」と題して、10月21日日曜日の14時~16時まで実施される。

 ホームシアターに関するミニセミナーも実施。UDXの2階特別室において、各社音場補正技術の方式や効果のセミナー、映像調整テクニックの紹介、サラウンドスピーカーの配置や、ルームチューニングに関するセミナーも実施される。また、出展各社が、自社の商品や技術を解説・実現する出展者セミナーも行なわれる。

 有料イベントも実施。工作教室では、オリジナルイヤフォンの組立(参加費後日発表)や、エコー付きカラオケアンプの制作(参加費2,000円)、「PCL86シングルステレオアンプを作ろう!」(参加費24,990円)が予定されている。

イヤフォンやアンプ作りが体験できる工作イベント生録イベントも実施ホームシアターミニセミナーも開催される

 生録イベントも実施。ポータブルPCMレコーダを使い、参加者が実際に演奏の生録が体験できるもので、今年は国立音大出身者を中心とした40人以上のブラスバンドが参加予定。参加費などは後日発表される。

 また、今年は日本オーディオ協会が創立60周年となる事から、記念展示も行なわれる。オーディオ史に残る各社のエポックメイキングな商品を一堂に展示するもので、富士ソフト会場の7階特別室で展開する。さらに、期間中にCD発売30周年も迎えることから、セミナーや展示、ガイドブックやポスターなどでも積極的に取り上げるという。

 プレゼント企画も用意。出展企業や地元協賛企業の協力で用意されたプレゼントを会場に展示し、会場から応募できるほか、全国からも官製はがきで応募できる。さらに、開催初日の10月19日には、先着240人にエコトートバッグ(不織布)もプレゼントされる。

UDXの会場レイアウト富士ソフトの会場見取り図


■国内オーディオ市場は台数ベースでは堅調

国内オーディオ市場の推移グラフ。薄い紫がJEITAの金額ベース、濃い紫がJAS調査の結果

 国内のオーディオ市場の規模は、JEITAによる統計の結果、ピーク時である1988年の6,584億円から、昨年は約1/3以下に激減している。しかし、校條会長によれば、オーディオメーカーにはJEITAに参画していない企業も多い。そこで日本オーディオ協会(JAS)が'09年から開始した調査によると、市場規模は'09年は2,061億円、'10年は2,214億円、'11年は2,266億円と「上昇型に向かっていると言える」(校條会長)とのこと。

 特に、PC向けのパワードスピーカーや、ポータブルプレーヤー向けのDockスピーカーが新たなカテゴリとして伸長。エコカー減税などの効果で車の販売が好調になっている事から、カーナビ市場(カーオーディオ含む)も前年比120%と大きく伸長しているという。

 カテゴリ別では、BDプレーヤーが前年比110%、ラジオ受信機は震災を受けての需要が一段落したが、「深夜番組を楽しむ人などに高級モデルが売れている」という。CD発売プレーヤーも4年連続で続伸したが、ポータブルタイプ型は前年比10%減、据え置き型は10%増で7万台に乗った。「平均価格15、16万円などの高価なモデルが売れている」とのこと。

 ICレコーダは前年比120%の150万台で、ハイビットハイサンプリング対応モデルは30万台に到達するとJASでは予想。アンプは「2chのピュア向けが前年比110%で伸びているが、AVアンプは10%減少した」という。

 校條会長はこうした状況を説明しながら、「オーディオ市場は小型化やデジタル化により、金額ベースでは3分の1程度になっているが、台数ベースで見れば大幅に下がっているわけではない」とした。

 また、昨年も実施した東日本大震災の復興支援を今年も実施すると発表。会場内に募金箱を設置し、義援金を受け付けるほか、生録体験会の録音参加費やリスナー参加費から、収益の一部を支援金にするという。

 校條会長は、「日本人は優しさのある、繊細な民族であるはずなのに、“思いやり”や“絆”の重要性を、こうした国難がなければ思い出せないでいた。我々がやっているオーディオにおいても、音楽や文化、感性価値を疎かにしてきたのではないか」と語り、「良い音楽・良い音のオーディオが、心に与える重要性を多くのお客様に伝えることこそ使命」とイベント開催の意義を語った。



(2012年 7月 31日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]