スカパー、放送サービスを抜本改革。ブランド一元化へ

-HD化率は4割弱に拡大。秋に10日間の無料放送


スカパーJSATの高田真治社長

 スカパーJSATは2日、2012年度第1四半期の決算や、有料多チャンネル放送の事業計画などに関する説明会を開催した。

 このなかで高田真治社長は、「スカパー! サービス」の抜本的改革を下期以降に開始することを表明。サービスをより分かりやすくして加入者拡大を図るため、現在多岐に渡っている放送サービスのブランドを、今秋をメドに一元化していくことなどを明らかにした。



■ 新規加入は前年比7%増。ハイビジョン化率も拡大

 第1四半期の決算は、営業収益が前年同期比3.1%増の390億8,600万円、営業利益が同14.8%減の50億4,300万円の増収減益となった。有料多チャンネル事業の営業収益は、視聴料収入の増加などで23億円の増収。営業費用は、HD番組などの供給費用の増加(14億円)やアンテナ無料などの施策に伴う費用増(8億円)、2011年10月からの新BS開始に伴う費用増(4億円)などで、24億円増加した。

 有料多チャンネルの新規加入件数は前年同期比7%増の16万5,000件(純増数1万7,000件)。スカパー! HDの累計加入者件数を、SDとHD両方の累計加入者件数で割った「ハイビジョン化率」は、前年同期の21.8%から37.1%に拡大した。一方、解約率は前年同期比0.1ポイント増の1.5%(解約件数172,712件)となったことについて高田社長は「最重要課題」との認識を示した。

第1四半期の業績新規加入件数や純増数などの主要指標営業収益の増減要因
営業利益は前年同期比約15%減スカパー! e2を中心に新規加入は堅調解約率はわずかに増えた
スカパー! e2のハイビジョン化を推進

 今後の具体的な取り組みとしては、HD化の推進や、9月29日からのノンスクランブル放送実施などを説明した。

 今年2月に110度CSの空き帯域において14chの認定を受けたことから、7月1日より順次「時代劇チャンネル」や「ファミリー劇場」、「朝日ニュースター」などにおいてHD化をスタート。今秋以降に開局予定としている。

 また、スカパー! HDの“第3期”として、9月29日よりHDチャンネルの数を現状の88chから121ch(SD 39ch)に強化。さらに、現在MPEG-2のみで放送されている番組も全てMPEG-4 AVC/H.264に対応する準備が整ったことで、H.264対応(MPEG-2非対応)のチューナでも、全ての有料チャンネル(ラジオ除く)が視聴できるようになるという。高田社長は、「今までのネックが無くなったことを契機に、HD契約を加速させていきたい」とした。

 前述の通り、ハイビジョン化率は6月末時点で37%となり、直近の7月末ではさらに39%まで上昇。最近までは、HD対応チューナはスカパー! ダイレクトからのレンタルまたは購入での提供となっていたが、量販店の店頭におけるチューナ販売を再開。マスプロの「CDT-700HD」や、HUMAXの「CS-HD300」が販売されている。

 下期のプロモーションについては9月下旬からのスタートを予定。毎年恒例の「スカパー! アワード」を9月27日(木)に開催するほか、9月29日(土)~10月8日(月・祝)の10日間に渡り、無料放送「秋の超拡大大開放デー」を実施する。また、BSスカパー!でも秋の特番祭りを同期間に行なう。


スカパー! HDチューナで視聴できるHDチャンネル数が拡大ハイビジョン化率は6月時点で37%無料放送など、今秋からのプロモーション内容


■ 「わかりやすいサービス」に向け抜本改革

 秋のプロモーション施策に合わせて、スカパー! サービス全体の抜本的改革を行なうことも計画。実現に向けて放送事業者と協議中だという。

 施策の一つとして、これまで指摘されてきた「サービスが(多くて)分かりにくい」という課題を解決するため、124/128度のスカパー! や、スカパー! e2、スカパー! 光といった様々なサービスのブランドを一元化して分かりやすい商品体系の構築を目指す。

 例えば、複数あるサービス一覧を見せて選んでもらうという見せ方ではなく、「今あるテレビで●●のチャンネルが観られる」といったシンプルな伝え方で各家庭に合わせた有料放送を訴求。デジタルテレビ+アンテナで簡単に導入できるe2の加入を増やすだけでなく、よりグレードの高いサービスとして124/128度のサービスを訴求できるようなブランド名を作るという。高田社長は「数を増やすという第1命題はあるが、中長期でARPU(加入世帯あたりの月額収益)を維持することが必要。高ARPUで、満足度の高い、入りやすいサービスを作っていく。シンプルな商品作りは、結果としてカスタマーセンターなどのコスト削減につなげていけるのでは」とした。

 なお、ブランド統一の時期や料金体系などは明らかにしていない。高田社長は「放送事業者との合意が無いと中途半端な形では報告できないが、10月から(前述のプロモーションなどで)攻めるにあたり、何とか合意した上で新たな展開ができればと考えている。披露できるタイミングで改めて説明する」とした。

スカパー全体の抜本的改革を進める予定8~9月のコンテンツ編成VODサービスの充実も図る

 そのほか、課題の一つとしてB-CASカードの改ざん問題にも言及。6月に京都府警により改ざんカードの販売者らが逮捕され、現在合わせて13人が刑事摘発されたことなどを受け、「今の時点ではかなり沈静化しており、この問題がすぐ加入動向に影響するという状況ではない」としながらも、「確固たる決意で厳正に対処したい。損害賠償を含む法的処置を具体的に検討している。抜本的な対策についても関係者と協力して進めている」とした。

 なお、2011年から始まったBSスカパー! は、当初「1年間無料」としていたが、10月からの料金については「このチャンネルは有料チャンネルの認定を受けているが、視聴料が目的ではなく、たくさんの人に見てもらって、110度、124/128度の加入につなげたい。あまり大きく形を変えずに、認定条件をクリアできる方法を追求したい」とした。

不正B-CASカード問題への対応宇宙事業や、グローバル展開についても説明。5月に打ち上げた新規衛星が本運用開始されたことや、インドネシア大手財閥LIPPOグループに協力して、今後400ch体制の放送を開始予定現在保有する衛星は16基。このうち、主に放送サービスに利用しているのは6基


(2012年 8月 2日)

[AV Watch編集部 中林暁]