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劇場先行版「ガンダム ジークアクス」再上映舞台挨拶。鶴巻監督「ファンからどう思われるのかなと不安あった」
2025年6月30日 18:34
劇場先行版「機動戦士 Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス) -Beginning-」の再上映を記念した舞台挨拶が、6月28日にTOHOシネマズ新宿で行なわれ、登壇した鶴巻和哉監督は「2018年に制作がスタートしてから足掛け7年、実質的には5年、僕のわがままに付き合っていただき、ありがとうございました」とスタッフに感謝を述べた。
TVシリーズ完結直後、まだその余韻が残るなかでの舞台挨拶だったこともあり、会場だけでなく、生中継が行なわれた全国の劇場にも多くのファンが集結。イベントには鶴巻監督に加えて、脚本・シリーズ構成を担当した榎戸洋司氏、アマテ・ユズリハ役の黒沢ともよが登壇した。MCは松澤ネキ。
鶴巻監督「ガンダムファンからどう思われるのかなという不安はあった」
まずは登壇したゲスト3名から、TVシリーズの制作と最終回放送を終えての感想が語られた。黒沢さんは元気よく「こんにちはー!」と、来場者と全国の生中継で鑑賞しているファンに挨拶。「みなさんの目が“キラキラ”していて」と、その会場に広がる熱意を『GQuuuuuuX』風に表現。続いて「長い制作期間だったので、最終回が終わって安堵感があります」と心境を語った。
榎戸氏は、「最終回を放送できてホッとしています。」と挨拶。そして鶴巻監督はまず、「2018年に制作がスタートしてから足掛け7年、実質的には5年、僕のわがままに付き合っていただき、ありがとうございました」と、スタッフに言葉を贈る。
視聴者に対しても、「ガンダムファンからどう思われるのかなという不安はありました。でも、『Beginning』公開から半年、あたたかく応援していただいて、制作のモチベーションになりました」と、世間の盛り上がりも含めて感謝を述べた。
ここからはテーマが設けられてトークがスタート。最初のテーマは、『機動戦士ガンダム』や『機動戦士Ζ(ゼータ)ガンダム』をはじめ、登場したメカ、キャラクターのセレクトについて。
口火を切った鶴巻監督は、「リメイクをするならシャリア・ブルを出したいよね、『機動戦士ガンダム』小説版のシャリア・ブル良いよね、という話を、榎戸さんと『フリクリ』を作っていた時期からしていました」と述懐すると、榎戸氏は、「鶴巻監督との会話でシャリアが主要キャラになるのは“なるほどね”と(笑)。一方で、僕が(デザイナー・イラストレーターの)出渕裕さんと飲んでいたときもシャリアの話をしていたみたい」と、自身のシャリアへの思い入れについても明かす。
続いて榎戸氏は、マチュの成長物語として『GQuuuuuuX』を描くために年上の女性キャラクターを登場させたというエピソードを披露。ニャアンとの出会いから、アンキー、シイコ・スガイなど、これまでの生活で決して出会わなかった人たちの関係性から成長していくことを意図していたと語る。その成長の決定打となる女性として選ばれたのが「ララァ・スンだった」という。
ララァのアイデアが出る前は、『機動戦士ガンダム』に登場したランバ・ラルとクラウレ・ハモンにフィーチャーしたプランや、ミハル・ラトキエとカイ・シデン、マチルダ・アジャンとウッディ・マルデンの関係性を見せるプランなどもあったという裏話も。制作チームの熱と勢いがあったからこそ、そこまで振り切れたのでは、と作業を振り返っていた。
鶴巻監督は榎戸氏のコメントに補足する形で「SNSで弊社社長(庵野秀明氏)が、ララァが登場する第9話にコメント(同話が別プロットであったこと示唆)を出していましたが、そのネタバラシです」と明かした。
GQ第9話。2022年11月のプロットでは例の女性ではなく、ファーストガンダムの別の登場人物らが出てました。2023年7月の脚本第1稿で全く違った話に変更され、例の女性が出てきます。…
— (株)カラー 2号機 (@khara_inc2)June 3, 2025
黒沢は、本作に合わせて『機動戦士ガンダム』を履修したこともあり、「シャア(・アズナブル)がカッコよくて! ごちそうさまでした。ありがとうございます」と、様々な形で彼が登場したことに喜んでいた。
さらに、MCの松澤から「監督はゲルググがお好きとか?」と振られた鶴巻監督は、「好きなモビルスーツの名前としてゲルググを出していたので、最終話でなんとか(TVシリーズ『機動戦士ガンダム』の)ゲルググを出すことができて良かったです。ただ、最終話ではビーム・ナギナタのビームの色が、本来の設定色である黄色ですべて上がってきていて、それは(劇場版『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』に合わせて)水色にリテイクしました」と、そのこだわりを明かした。
もう一点、最終話でヅダやビグ・ザムなどのシャア専用カラーが登場したことについて、「シャアが経験した世界をワンカットで説明しなきゃいけないときに、モビルスーツで紹介するのが良いと思った。僕個人としてはシャア専用ビグ・ザムを見たかったし、(『機動戦士ガンダム MS IGLOO』に登場する)ヅダなどは、自分の中のオタク魂が出てしまったのかなと(笑)」と鶴巻監督は説明した。
アフレコ現場は台本が上がるたびに混乱。「今のSNSみたいな光景が広がった」と黒沢
続いてのテーマはアフレコ現場について。黒沢さんは、台本が上がってくるたびに現場が混乱していたと言い、「ガンダムシリーズに詳しい先輩たちがニコニコしながら“どうなってんだよー”と現場に入ってくることもあれば、“なにが? どういう? どうなっていて?”と悩む若いキャストたちもいました。現場でも、3人くらいの先輩が急に話し出して教える、今のSNSみたいな光景が広がっていました」と振り返る。
一方、鶴巻監督や山田陽音響監督のディレクションはあえて明確にせず行なわれていたようで、「自分でこっちかな、あっちかなと考えて演じました」と話した。
鶴巻監督は、キャストたちの受け止め方に意外性を感じていたようで、「自分のクセとして前もっていろいろ説明しちゃうので、説明しすぎくらいだと思っていました。」と話す。
また、黒沢が演じたマチュについては、「僕にとっての若い子のイメージが投影されています。目的に向かって一直線に進んでいくのは大人の考えで、昨日と言っていることや、やっているが変わって台無しにしてしまうようなこともあるかもしれないなと思っています。なので、マチュはある種分裂しているというか、第1話のマチュと第5話のマチュではそれくらい違うし、それを黒沢の中で成立させてもらえれば、という話をしていた」と説明
黒沢はそれを聞いて「2年前に聞きたかった(笑)!」と驚きつつ、「普段だったらこの感じで演じたいなという階段の踏み方よりも、一段上か下をやればOKが出るんです。自分が飲み下せる、一歩外側を演じる意識でしたね」とその演技について回想していた。
榎戸氏は、鶴巻監督や音響監督から聞いた話として、「マチュは黒沢さんで本当に良かった~と言っていましたよ」と明らかにすると、黒沢さんは感慨深い表情に。黒沢にとっては難易度が高い部分もあったそうで、「アフレコ中は『機動戦士ガンダム』のアムロ・レイの気持ちでした。“親父にもぶたれたことないのに!”というか(笑)。わかんないよぉ~と言いながら走り続けていましたね。でもすごく楽しかったので、また鶴巻さんに挑める日が来るといいなと」と、改めて収録について語っていた。
『Beginning』興収35億突破。「時系列通り素直に直列していてわかりやすく、みやすい作品」
最後のトークテーマは、こだわった演出・シーンについて。鶴巻監督は、「第1話で、マチュが神社のシーンで階段を登っているところがあるけれど、階段の上にカメラがあるシチュエーションが好き」と回答。大好きな作品に影響を受けたものだそうで、「エグザベとシャリアの軍警ビルでの階段のシーンや、最終話でアルテイシアが上る階段シーンが好き」と、その理由を明かす。
榎戸氏は、話題となった第11話のシャアの変身”についてのエピソードを披露。「鶴巻監督から連絡があって、赤いガンダムに乗るシャアは、マスクを付けた士官姿にしたいと。ただ、着替えはさせたくないと言われたので、“変身すれば良いんじゃないの”と伝えました」と、当時どのようなやり取りがあったのかを明かした。
また、こちらも話題となった、最終話のRX-78-2ガンダムの巨大化についても。榎戸さんは「最終的に白いガンダムがラスボスになる話は決まっていました。ガンダムをどうしたら脅威として見せられるか、というアイデアの中で、分身する案もありましたが、『聖戦士ダンバイン』で言うところのハイパー化(巨大化)しか思いつかなかった」と返答。
鶴巻監督も、「ガンダムシリーズではやってはいけない表現かもしれないけれど、富野(由悠季)監督のロボットアニメの文脈で見ればアリかなと。あの巨大化するときのスパークは、ハイパー化のときの表現を現代的にやってほしいとスタッフに依頼したら、あの形なりました」と解説。黒沢さんは、「まさか大きくなるとは思わなかった。でも、「質量の増大が確認できます!」とセリフで説明してくれたので、驚きながら見ていました」と、アフレコ時の気持ちを振り返った。
トークセッションのあとは、フォト&ムービーセッション、応援上映などのお知らせが行なわれ、最後に3人から来場者と生中継の観覧者にメッセージが贈られた。
黒沢は「鶴巻監督が毎話のアフレコの前に、1時間ほど世界観説明をしてくださっていました。そのときのお話から熱が入っていて、ずっと聞いていたいなーと思っていたので、今回、舞台挨拶でご一緒できてとても嬉しかったです。いろんな方々の愛情たっぷりな作品なので、何度も何度も観ていただいて、これからも作品に関するあれこれを話し合ってもらえれば嬉しいです」とコメント。
榎戸氏は「作り終えたので、あとの評価はもう観ていただいた方に任せるしかないのですが、とりあえず全12本、作りたかったものを作りたいように作れたな、という実感だけはあります。それは本当にホッとしていますし、これからも作品をよろしくお願いいたします」と語ると、鶴巻監督は「まず報告ではあるのですが、『Beginning』の再上映のおかげで、興収が35億を突破したそうです」と報告。観客から大きな拍手が挙がった。
「みなさんのおかげです。ありがとうございます。TV シリーズは構成上の関係で時系列が飛んだり戻ったりするのですが、今日観ていただいた『Beginning』は、時系列通り素直に直結していて、わかりやすく、みやすい作品になっているので、また見に来てもらえると嬉しいです。よろしくお願いいたします」