ソニー、新プレミアムクラスヘッドフォン「MDR-1R」

-Z1000と同じ振動板。Bluetooth/NFC、NC型も


「MDR-1R」のブラックモデル

 ソニーは、プレミアムクラスに位置付けられる新しいヘッドフォン「MDR-1R」を10月27日に発売する。価格は30,975円。カラーはブラックとシルバー。このモデルをベースにした、NFC(近距離無線通信)/Bluetooth対応モデル「MDR-1RBT」と、アクティブノイズキャンセリング(NC)モデル「MDR-1RNC」も同日に発売。価格は「MDR-1RBT」が43,050円、「MDR-1RNC」が49,350円。

 ソニーは、モニター用ヘッドフォンの「MDR-Z1000」や民生用の「MDR-ZX700」を展開しているが、MDR-1Rはそれらとも異なる、新しい「ヘッドフォンの本質を追求したシリーズ」と位置付けられている。

 目指す音場再現として、モニターのZシリーズは「ライブハウスのステージ上」、民生向けのZXシリーズは「ライブハウスの最前列」とされているが、MDR-1Rでは「マスタリングスタジオの音」を目標に開発。モニターのZシリーズに次ぐ高価格帯の製品となるが、あくまで原音への忠実さを重視するZシリーズに対し、音質を重視しながらも、「聴いていて心地良い音、楽しい音を伝えてくれるヘッドフォンを目指した」という。

「MDR-1R」のブラックモデル「MDR-1R」のシルバーモデル

 ノーマルモデル、Bluetoothモデル、NCモデルいずれにも共通する特長として、振動板に、Z1000などと同じ液晶ポリマーフィルムを使用。高剛性と広帯域にわたる高い内部損失を両立させた素材で、振動板固有の音を抑え、原音に忠実な再生ができるという。ユニットサイズは40mm径(NCモデルは50mm)。

MDR-1Rのブラックシルバーキャリングケース

 

 さらに「HDドライバーユニット」も採用。振動板のハイコンプライアンス化と、軽量ボイスコイルの採用により、レスポンスの早い低域や、超高域再生を実現。周波数帯域は4Hz~80kHzまでとなる。

ハウジング上に通気孔を設けている

 低音にもこだわっており、ハウジング上に通気孔を設けることで、低域の通気抵抗をコントロールする「Beat Response Control」を採用。振動板の動作を最適化でき、低域の立ち上がり/立下りも改善。リズムを正確に再現できるという。

 また、ハウジングまわりの可動部のガタつきを低減するため、シリコンリングを使ったサイレントジョイントを各部に採用。装着時のメカノイズを低減することで、音楽鑑賞時の静けさを確保したという。


イヤーパッドにも新機構「インワードアクシスストラクチャー」を採用

 装着性も強化。低反撥ウレタンフォームを立体的に縫製したイヤーパッドを採用しているが、従来のヘッドフォンと異なり、パッドが奥に沈み込むだけでなく、ヘッドフォンの内側(ユニットがある方向)に倒れこむように沈む。「エンフォールディングストラクチャー」と名付けられた機構で、これにより、パッドが耳を包み込むようなカタチになり、快適な装着性と高い気密性を実現したという。

 また、ハンガー構造には、独自の「インワードアクシスストラクチャー」を採用。ハウジングの回転軸を、従来製品よりも内側に向ける事で、ハウジングがより頭部にフィットするようにした。

 再生周波数域は4Hz~80kHz。インピーダンスは24Ω。最大入力は1500mW。感度は105dB。

 ケーブルは、表面に細かい溝を設けた「セレーション」タイプ。着脱が可能で、通常のケーブルは1.2m、入力端子はL型ステレオミニ。さらに、iPod/iPhone/iPad用のマイクリモコンを備えた1.2mの、L型4極ステレオミニケーブルも同梱する。ケーブルにはPCOCCを採用している。重量は約240g。




■MDR-1RBT

MDR-1RBT

 1RをベースにしたBluetoothヘッドセット。液晶ポリマーフィルムを使った40mm径振動板や、HDドライバーユニット、Beat Response Controlなども搭載する。

 Bluetooth ver3.0に対応。プロファイルはA2DP/AVRCP/HFP/HSPに対応。プロファイルはSBCとAACに対応。SCMS-Tにも対応する。

 特徴として、NFCに対応。NFC機能搭載のスマートフォンや、おサイフケータイ対応Android搭載スマートフォンなどとのペアリングや、接続、切断、接続の切替がワンタッチでできるようになっている。ただし、この機能を利用するためには、スマートフォン側に別途提供されるNFC機能対応のアプリをインストールする必要がある。


MDR-1RBTNFC機能のON/OFFスイッチや操作スイッチを備えるハウジングにNFCマークがある

 圧縮音源を再生する際、失われがちな高音域と、微細な音を再現する「DSEE」機能も搭載。デジタルイコライザと、フルデジタルアンプのS-Masterも搭載している。

 電源OFF時は、通常のヘッドフォンとしてスルー出力が可能。電源は内蔵のバッテリを使用し、約30時間の使用が可能。充電所要時間は約6時間。

  再生周波数域は4Hz~80kHz(Bluetooth利用時は20Hz~20kHz)。ケーブルは1.5mで、着脱が可能。重量は約297g。



■MDR-1RNC

 1RをベースとしたNCヘッドフォンだが、ユニットは40mm径ではなく、50mm径となっている。素材は液晶ポリマーフィルム。なお、HDドライバーユニットは採用していない。

MDR-1RNC底面に電源スイッチハウジングにはNCマーク

 NCヘッドフォンには、ヘッドフォン内部に配置したマイクが、耳元に近い位置で集音した騒音を、ノイズキャンセリング回路で解析し、逆相の音を出す「フィードバック」方式と、ヘッドフォンの外側に設置したマイクで騒音を集め、キャンセル信号を再生する「フィードフォワード」方式がある。

ヘッドフォンの外側と内側の両方にマイクを搭載している

 1RNCでは、ヘッドフォンの外側と内側の両方にマイクを搭載。集音した騒音と、プレーヤーからの音楽信号を、DNC(デジタルノイズキャンセリング)ソフトウェアエンジンでデジタル化し、フィードフォワード・フィードバックの2つの伏木を統合。騒音を打ち消す、逆相の音を高精度に生成する事で、約99.7%のノイズキャンセリング性能を実現したという。

 さらに、音楽信号は従来モデルよりさらに高分解能になったデジタルイコライザで高音質化を図っており、「より静かな環境で、よりクリアな音楽再生を実現する」としている。

 また、ソニーのNCヘッドフォンには、環境に合わせてNCモードを切り替える「AIノイズキャンセリング」機能が備わっているが、1RNCではこれがフルオートとなり、ユーザーは何も操作しなくても、その環境に合ったNC処理を行なってくれる。

 バッテリは内蔵のリチウムイオンで、4時間の充電で、約22時間の使用が可能。 再生周波数域は5Hz~24kHz。インピーダンスは51Ω。最大入力は100mW。感度は103dB(電源ON時)、101dB(電源OFF時)。ケーブルは着脱可能で1.2m。iPhone/iPod用コントローラを備えたケーブルも同梱。重量は330g。



■MDR-1のファーストインプレッション

 短時間ではあるが、MDR-1を試聴したので音質を紹介したい。

 同じ液晶ポリマーフィルムの振動板を使ったモニターヘッドフォン「MDR-Z1000」を彷彿とさせる、色付けがほとんど感じられない、極めてニュートラルで生々しい中高域を持っている。同時に、音場表現は、モニターらしく頭内定位がキツイ「MDR-Z1000」と比べると、見通しが良く、ふわりと前方に広がり、民生向けの「MDR-ZX700」と似た聴きやすさがある。

 これらのモデルと大きく異なるのが低域の表現で、非常にタイトかつソリッド、トランジェントが良く、「トストス」と刻みこむような低音表現に特徴がある。沈み込みが浅いというわけではなく、低さ、重さを伴った低域だが、非常にハイスピード。オープンエアの高級ヘッドフォンを彷彿とさせる低音で、これまでのソニーのヘッドフォンではあまり聴いた事が無いタイプの低域だ。


(2012年 8月 30日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]