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ソニー、'13年度第1四半期は2010年以来のテレビ黒字化

スマホ好調、純利益35億円。「PS4はPS3より早く収益貢献」

 ソニーは1日、2013年度第1四半期決算を発表した。売上高は、前年同期比13%増の1兆7,127億円。営業利益は同479.4%増の約364億円、税引前利益は同391.4%増の約463億円。純損益は約35億円の黒字となった。

 増収の主な要因としては、主に為替の影響や、金融ビジネス収入の増加、スマートフォンの販売台数の増加を挙げている。なお、前年同期の為替レートを適用した場合、売上高は3%の減少となる。

第1四半期の連結業績
増収増益の主な要因

2010年第1四半期以来のテレビ黒字化。「想定以上の結果」

加藤優 代表執行役 EVP CFO

 テレビやBDレコーダ、オーディオなどを含むHE&S(ホームエンタテインメント&サウンド)分野は売上高が前年同期比9.3%増の2,752億円、営業利益は34億円の黒字で、前年同月の100億円の赤字から回復した。改善の理由については「おもに為替の好影響および、テレビの大幅な損益改善」としている。

 テレビの売上高は、4Kテレビなど高付加価値モデルへのシフトによる単価アップと、為替の好影響を受けて、前年同期比18.2%増の1,856億円。販売台数は310万台で、前年同期の490万台から大きく落ち込んだが、営業利益については、2011年11月に発表したテレビ事業の収益改善プランを着実に進めてきたほか、高付加価値モデルの導入による製品ミックスの改善などにより、前年同期の66億円の損失から大幅に改善し、52億円の利益となった。ソニーのテレビ事業黒字化は、2010年度第1四半期以来、12四半期ぶり。加藤優 代表執行役 EVP CFOは「想定以上の結果を残した」と述べた。

HE&Sなど各セグメントの売上高と営業利益

 業務執行役員SVP 広報センター長の神戸司郎氏は、第2四半期以降のテレビ販売について「中南米、中東などの一部新興国の市場を慎重に見ている」とし、主にブラジルの成長が同社の想定を下回っている点や、エジプトやシリアといった政情不安定によるリスクを指摘。5月に発表した年間販売台数見通しの1,600万台から、今回1,500万台へ下方修正した。通期の収益見通しは、この台数減などがあるものの、コスト削減の実現などで、引き続き年間での黒字化を目指すとする。

 HE&S分野の業績見通しは、売上高は5月時点の想定から変更はない。営業利益は、主にオーディオ/ビデオカテゴリの現地通貨ベースによる減益分により、5月の想定を下回る見込み。前年度比では増収と大幅な損益改善による利益改善を見込んでいる。

 テレビの黒字化の背景については「何も手品は無い」としながらも、昨年に引き続き固定費削減を着実に進めており、材料費やパネル調達の工夫を行なっている点などを挙げた。加えて「今期大事だったのは、4Kと、2Kのハイエンドモデルも含めた高付加価値商品で平均単価を上げる、あるいは維持したこと」とした。

スマホ販売台数はXperia A好調などで960万台

業務執行役員SVP 広報センター長の神戸司郎氏

 モバイル・プロダクツ&コミュニケーション(MP&C)分野の売上高は前年同期比36.2%増の3,890億円。営業利益は59億円で、前年同期の281億円の赤字から黒字転換した。為替の影響とスマートフォンの販売増、平均販売価格の増加により大幅な増収となった。

 スマートフォンの第1四半期販売台数は960万台で、前年同期比の740万台から大きく増加。なお、通期の販売台数見通しは4,200万台で、5月発表時から据え置いている。日本で5月から発売したXperia Aは、「全キャリア合わせたモデル別販売で1位を9週連続で獲得した。6.4型大型ディスプレイ搭載のXperia X Ultraを6月の発表以降、各方面より大きな反響があり、今後のビジネスの期待が高まっている」(神戸氏)とした。

 PCは、市場全体の縮小が見込まれていることなどを背景に、「市場シェアは維持する」としたものの、年間販売台数見通しを5月発表の750万台から、620万台に下方修正した。MP&C全体の売上高見通しは、5月に発表した見通しを上方修正。一方で、ハードウェアコストの米ドル建て比率が高いこなどにより、円安が損益の悪化に結びつく懸念を示した。

通期の連結業績見通し

 デジタルカメラなどのIP&S分野の売上高は売上高10.4%減の1,736億円、営業利益は36%減の81億円。主にビデオカメラとデジタルカメラの大幅な販売減少の影響により、減収となった。減益の主な理由はビデオカメラの減収。

 デジタルカメラの第1四半期販売台数は310万台(前年同期490万台)、ビデオカメラは60万台(同110万台)。コンパクトデジタルカメラの市場が縮小する一方、為替と、大型CMOSセンサー搭載「RXシリーズ」など高付加価値製品で単価アップと収益改善を実現した。今後もレンズ、画像処理エンジン、センサーの活用などで、高付加価値領域を加速する」としている。

年末発売のPS4は「PS3より早く収益に貢献」

 ゲーム分野は、売上高はほぼ横ばいの1,179億円、営業損失は148億円の赤字となった。損失拡大の理由は、PlayStation 4導入に向けた研究開発費の増加など。

 PlayStation 3の販売台数は110万台。前年同期はPS3/PS2合計で280万台だったが、PS2の出荷が終了した影響で、据え置き型の販売台数が大きく落ち込んだ。

 PS4については、「6月のE3で詳細を公表し、市場関係者から高い評価を得た。ユーザー同士がつながる体験を提供するPS4は、周辺機器やソフトウェアラインナップの拡充で、年末発売に向けて万全の体制を整える」(加藤氏)とした。

 開発費用がかさむことで、発売当初は損益に影響するとの見方を示す一方で、加藤氏は「PS3は、Cellなど先端的なハードウェアへの投資をたくさん行なったため、当初のハードウェアの逆ざやでロスをこうむった歴史がある。それに比較すると、PS4のチップセットはもともとある技術に、私どもの技術を組み合わせて開発しているので、開発投資にお金はかかっていない。また、製造に関しても、基本的にはファブレスで、他社に製造委託するため、リスクを取った投資ではなく、前のプラットフォーム(PS3)より投資が軽い。立ち上げのタイミングでは費用はかさむが、これが先々に向けての回復力という意味では、PS3に比べると早く収益に貢献すると考えている」とした。

 デバイスは、売上高1,962億円で、前年同期2,173億円から9.7%のマイナス。営業利益は108億円で、前年同期の159億円から32%のマイナスとなった。為替の好影響などがあった一方で、ゲーム向けシステムLSIの減収や、2012年9月に売却したケミカルプロダクツ関連事業の売上が計上されなくなったことなどを減収の要因として挙げている。

 「HE&S」(テレビなど)や、「IP&S」(デジカメなど)、「ゲーム」(PS3/PSP本体やソフトなど)、「MP&C」(スマホなど)、「デバイス」の“エレクトロニクス5分野”の営業利益の合計は134億円で、2011年度第1四半期以来の黒字となった。これら5分野の営業利益増減要因としては、為替(190億円増)や、コストダウン/合理化(370億円増)、価格下落/需要減(250億円減)、その他(45億円)が挙げられている。

エレクトロニクス5分野の営業利益増減要因
5分野合計の棚卸資産(地域別)

 映画は売上高が1,589億円(前年同期1,534億円)、営業利益は37億円の黒字で、前年同期の49億円の赤字から回復した。「メン・イン・ブラック3」がヒットした前年同期に比べ劇場興行収入が減少した点や、映像ソフトの作品数が減少したことなどで、米ドルベースでは減収となっている。

 音楽は、売上高が1,120億円(前年同月988億円)、営業利益108億円(同73億円)で収益を伸ばした。パッケージメディア市場の縮小などの影響を受けつつも、デジタル配信売上の増加や、欧米を中心にヒット曲が多かったことなどを好調の要因として挙げている。

 なお、ソニー大株主の米ファンドのサードポイントから、エンターテイメント事業の株式公開(IPO)を求められている件については、「重要な案件のため、時間を掛けて議論し、調査している。まだ途中であり、見解をお話しする段階ではない」とコメントを避けた。

(中林暁)