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ソニー'13年度経営方針。「最新/最強のスマホ」投入へ

テレビ/エレクトロニクス黒字化は“必達目標”

平井一夫CEO

 ソニーは22日、2013年度経営方針説明会を開催。平井一夫CEOは、エレクトロニクス事業の強化と同事業黒字化を最重要課題として推進する。2014年度にエレクトロニクスで売上高6兆円、営業利益率5%を実現し、グループ全体で売上高8兆5,000億円、営業利益率5%以上、ROE 10%の達成を目指す。

 基本方針として、エレクトロニクス事業のモバイル、イメージング、ゲームの3つの「コア事業」の変革を加速。さらにテレビ事業の黒字化や、新興国での成長戦略加速。持続的な成長のための新規事業(メディカル、セキュリティ)などの強化を盛り込んでいる。

 「昨年CEO就任以来、ソニー再建の土台となる地道な仕込みを行なってきた。財務の改善、5年ぶりの黒字。会社にとって利益を出すことは何より大事。また、景気回復の兆しが感じられ、'13年に入っての追い風の中、モメンタム(勢い)を掴んで、ソニーの復活、そしていかに攻めの体制に転じるかが、私にとって今年の最大の課題だ」と切り出し、'12年度のレビューと、'13年度の事業方針を説明した。

ソニー製品は感性価値を追求。Xperia ZはOne Sonyの象徴

 平井氏は、CEO就任以来、約1/4の時間を割いてソニーグループ各社の視察や社員と会談し、グループの現状を把握。これにより、「取組課題が明確になり、ソニーが持つ将来の可能性も確認できた。成長の十分な潜在力がある」と説明。「ソニーが求められているのは、どのようにソニー製品が認知されているかを理解し、改善していくこと。お客様の購入の決断ポイントで、どのような価値が求められているかを正しく知る必要がある。ソニーがソニーらしく存在するためにどうあるべきか。商品、コンテンツ、サービスに触れた時に、感動や興奮をお届けし、好奇心を刺激する会社でなければならない。ソニーの全製品は期待を満たすための妥協なき機能価値、そして感性価値を持たなければならない。価格競争だけに陥らず、競争優位なポジションで事業をしていくべき。ソニーのエレクトロニクス製品は、機能価値は満たしているが、感性価値を満たす製品はまだまだ少ない。しかし、昨年度に発売した製品の幾つかからはその兆しが見えている。妥協すること無く、機能/感性価値を追求していく。ミッションの実現に向けて、グループ一丸となって実現していく」と語った。

 平井体制1年の成果として、'12年度は売上、営業利益とも前年を上回り、5年振りの黒字化を達成。一方で、平井体制の3つの目標(黒字化、エレクトロニクス黒字化、財務改善)のうちの1つ「エレクトロニクス事業の黒字化」は果たせなかった。

 平井氏は、エレクトロニクスの黒字化を「もっとも大きな課題」とし、'12年度と同様に事業の方向性を定め、意思決定と実行スピードを向上しながら取り組むと説明。同事業の営業利益は1,344億円のマイナスとなったが、「事業ポートフォリオと構造改革は、変革の第1フェーズが終了し、改革の7合目、8合目にいる」として、'13年度の黒字化を目指す。

 '12年度のテレビ事業は、赤字額が696億円と前年度(2,075億円)から大幅に削減。「今年度黒字化に向けた収益改善計画は想定以上」とした。

 新興国ではインドが好調。液晶テレビはシェアナンバーワンに、コンパクトデジタルカメラなどの主要AVカテゴリでもトップになった。カテゴリ全体の売上は30%増加したという。

2012年度連結業績
エレクトロニクス事業は赤字
'12年度の戦略投資や構造改革施策

 「エレクトロニクスは厳しい事業環境で、スマートフォン以外の製品は当初計画を大幅に下回り、厳しい一年だったと言わざるをえない。その中でもOne Sonyを実現した製品はあった」として、スマートフォンの「Xperia Z」を紹介。ソニーのイメージセンサや高画質、高音質化技術などを集約し、「まさにOne Sonyの象徴」と説明。各地での高い評価をアピールした。

 また、ソニー独自の35mmフルサイズCMOSセンサーを搭載したコンパクトデジタルカメラ「DSC-RX1」についてもアピール。「コンパクトデジタルカメラのこれからの可能性を開拓できた」とした。

 「将来に繋がる魅力的な商品が見えてきた一方で、黒字化は課題。道半ばの黒字化とサステイナブル(持続可能)な事業の構築にむけて、事業方針を着実に進める」とした。

Xperia ZはOne Sonyの象徴
DSC-RX1
'14年度の経営数値目標は変更なし

モバイルを徹底強化。最強スマホ投入へ

2013年度の基本方針

 2013年度の基本方針は、「エレクトロニクス事業の強化」、「エンタテインメント/金融の収益力強化」、「財務強化」の3点。

 エレクトロニクスは、コア事業のモバイル、イメージング、ゲームの変革加速と、テレビ事業黒字化、新興国成長加速、新規ビジネス(メディカル、セキュリティ)強化、事業ポートフォリオの見直しに取り組む。

「特にスマートフォン事業の拡大と収益の大幅改善、テレビ事業の黒字化は必達目標」(平井CEO)。

・モバイル

モバイルの基本方針

 エレクトロニクスのうち、モバイルについては、スマートフォンとタブレットなどの事業拡大と収益力強化を図る。“見る”、“聴く“、“撮る”の体験をより高品位なものにするため、総合力を活かした魅力ある製品を開発するという。

 ソニー・エリクソン完全子会社化による、ソニーのノウハウの導入や拠点統合などの施策に触れ、市場への迅速な投入や販売体制強化を図ったことを紹介。商品化スピードを向上し、「今年度はソニーの総合力を活かした、最新かつ最強の製品をタイムリーに市場に投入する」とした。

 Xperia Zは成功の一例だが、「これはまだ序章に過ぎない。今年度は、主要オペレーターとの関係を強化し、スマートフォン市場で確固たるポジションを築き、収益の大幅改善を目指す」と意気込みを語った。スマートフォン/タブレットなどモバイル事業の2014年度の売上高目標は1兆5,000億円、営業利益率4%。PCについては、収益を改善し、'13年度の黒字化を目指す。

・イメージング

イメージングの基本方針

 イメージングは、イメージセンサを核とした付加価値製品を強化。積層型センサーや裏面照射型CMOSセンサーなどで業界をリードしたが、今後も最終製品の差異化に繋がるセンサー技術の開発に取り組むという。また、将来的には可視光領域を超えたセンシングや、形状や色などを取得して識別するイメージセンサーの活用などに向けた技術開発を進める。

 具体的な例としては、人間の肌のきめ・しみ・毛穴・明るさ・色味などを、高精度かつ高速に解析できる「SSKEP」技術のように、「センサやアルゴリズムなどの技術の組み合わせで、デジカメ、ビデオカメラと違う分野での応用がありうる。そこでソニーのセンサー技術をさらに広く応用し、ビジネス化できる」とした。

 4Kなどの業務機器も強化。シネマ、業務などの領域に注力するだけでなく、メディカル領域の拡大も図り、人員再配置などにも取り組む。コンシューマ向けデジカメは高付加価値シフトを進め、「DSC-RX1とRX100が成長ドライバになった。さらに強化して高付加価値モデルの売上を拡大する」という。ミラーレス一眼カメラは世界シェア1位を堅持。業務、民生機器をあわせて、イメージング事業で'14年度の売上高1兆3,000億円、10%以上の営業利益率を目指す。

・ゲーム

 ゲームはPlayStation 4を年末に発売。PS VitaとPS4の連携などを通じて、新しいサービスや遊び方を提案。Gaikaiのクラウド技術も生かして、プレイステーションゲームをストリーミング提供することも積極的に検討するという。

 Sony Entertainment Networkについては、ゲーム以外のコンテンツ強化を図る。'12年度の売上高は前年比1.7倍以上の1,170億円。そのうちゲームが約9割を占めている。'13年度比は、前年比1.5倍に伸ばす予定。ゲーム関連コンテンツのダウンロードは30億を超えており、「これからもっと増やして、利益貢献して行きたい」とした。

 PS Vitaについては、「競争環境が非常に厳しい。しかし、施策はできるだけ打っていく」として、国内の値下げなどの事例を紹介。「ポータブルゲームのビジネスは、単独のプラットフォームビジネスだけでなく、ホームコンソールと連携することで、楽しみを拡大する必須の重要なビジネスカテゴリ」とした。

 PS4については、「環境は激化しているが、攻めの姿勢でビジネスを拡大する。PS4では最高のゲーム体験を提供し、スマートフォンやタブレットでも楽しみを共用できるものにする。専用機の体験をソーシャルに提供できるようになると期待している。PS4、Vitaを両方持つことで可能になる新しいサービスも提供する」とした。

 '14年度売上高は1兆円、営業利益率2%を目指す。PS4効果で2015年以降にさらなる飛躍を目指す。なお、昨年の経営方針説明では、'14年度の営業利益率8%を掲げていたが、2%に下方修正した。理由については、「この1年の環境を見ると、PS Vitaが想定を下回ってしまった。マーケティング等でサポートする必要がある。また、PS4の垂直立ち上げが必要。PS4を着実に立ち上げるための投資を行なう」とした。

エレクトロニクス コア3事業の経営数値目標

 コンソールゲームの将来性や成長性については、「ゲームという範疇より大きく考えて、インタラクティブエンタテインメントと考えている。こちらの動きにリニアに反応に対して、レスポンスがあるエンターテインメント。この市場は大きくなる。ホームコンソールは演算能力や描写力、ポータブルデバイスとの連携ハブなどとして、市場は大きくなるだろう。単独のゲームコンソールとは違うビジネスモデルをいかに広げることができるか。それが成長ドライバになる」とした。

 平井氏は、一部の目標修正はあるものの「ソニーのエレクトロニクス事業を牽引するのは、引き続きモバイル、ゲーム、イメージング」とアピールした。エレクトロニクスのうち、これら3事業で売上高構成比65%、営業利益構成比で80%を占める予定。

・テレビなど

 テレビ事業は商品力を強化。'12年度は46型以上の大画面構成比が16%から36%に向上し、「大型でナンバーワンのヒットモデルが出た」と改革の手応えを語るとともに、トリルミナスディスプレイなどの独自技術を活かしたフルHDモデルの強化と4Kテレビもラインナップ強化を図る。新興国をニーズを先取りした商品投入や、固定費削減などで'13年度黒字化を「必達目標」とする。

メディカル事業も拡大へ

 4Kについては、放送業務機器やテレビでの対応とともに、日本を始めとした各国でスタート予定の4K放送にも期待しているとした。「世界に先駆けてまず日本で4K放送実現するため、各業界のリソースを集中する次世代放送推進フォーラムができた。ソニーもさまざまな側面で貢献できると考えている」という。メディカル事業については、オリンパスとの合弁会社やライフエレクトロニクスや医療用キーデバイスに取り組み、2016年度に2,000億円規模まで拡大予定。

 映画は利益率の高いビジネスに注力。音楽も魅力的なアーティスト発掘とともに、コンテンツ資産の積極活用をすすめ、業界のリーディングカンパニーとしての地位を堅持。金融分野でも安定的な利益成長を目指すとした。

 平井CEOは、「昨年の経営方針説明で、戦略や施策は実績がともなってこそと言った。着実に一つ一つ実行し、変革することで'14年度の経営数値目標を達成する。その上で、お客様の感情を揺さぶり、刺激するような、世界に先駆けた新しい製品/サービスを生み出すソニーの真の復活を目指す。この姿勢は創業以来ソニーがチャレンジしてきたことで、これは全く変わらない」と説明、また、「エレクトロニクスは成長や高い収益性は見込めない、という声も聞く。事実だろうか? 新しい市場を想像し、時代の先駆者として成功した会社は数多くある。エレクトロニクスには未来が有り、そのなかで成功する。ソニーのDNAで、私の使命だ」とし、ソニーのグループ全体の企業価値向上を目指す方針を示した。

エンターテイメント事業の今後は?

 なお、ソニー大株主の米ファンドのサードポイントから、エンターテイメント事業の株式公開(IPO)を求められている件については、「ソニーグループの中核事業、運営に関わるものなので、取締役会で十分な議論をする。今の段階では、スケジュールを案内する段階ではない。株主から重要な提案なので、プラス思考の対応ができると思うので議論していきたい」(平井CEO)とした。

 また、「人員削減を進める上で“追い出し部屋”と呼ばれる部屋に中高年を漬け込んで事実上の退職勧奨をしているのではないか? いじめのような追い出し部屋を続けるのか? また、上(上層部)に優しく、下に冷たいという声が多い」との質問については、「そういう事実は無い。キャリア開発室は、追い出し部屋とは違う。社員の次のキャリアをみつけるための、会社の社員に対する施策。続けていくべきだろうと思っている。上にやさしいという話では、まさしく直近の例で、エレクトロニクス事業黒字未達なので、私を含めたソニーのトップマネジメント(執行役)は全員ボーナスを返上している。昨年からトップマネジメントのベースのサラリーもカットしている。目に見える形で責任を取る」とした。

 また、6月20日以降に新任の取締役として、日本マクドナルドの原田泳幸 会長兼社長兼CEOと米マサチューセッツ工科大学 メディアラボ 所長の伊藤穰一氏、Sony Network Entertainment International元プレジデントのティム・シャーフ氏が就任する。

 これらの新任の社外取締役の指名理由については、伊藤氏は「MITメディアラボの所長ということで、いろいろなビジネスの人脈やご自身の経験から、いろいろな接点でアドバイスいただけると考えている」、原田氏については「アップルなど、コンピュータビジネスで活躍され、そして、現職ではユーザー、顧客と対話するという接点が大きい会社(日本マクドナルド)をマネージしている。ブランドのマネージングなどの経験も積んでいる」と説明した。

 また、Sony Entertainment Networkの構築に関わった元ソニーのティム・シャーフ氏については、「ゼロからネットワークビジネスを作った経験や、シリコンバレーやネットワーク周辺の人脈、知見でアドバイスを頂けるのではないか」とした。

(臼田勤哉)