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アップル、“最大の一歩”となる「iPad Air」とRetina化した「iPad mini」を披露

Appleのティム・クックCEO

 Appleは米国時間の22日、iPad Air/iPad mini/Mac Proなどの新製品を発表するプレスイベントを開催。日本でも、23日に報道関係者向けに発表会の映像が上映された。

 米国サンフランシスコで行なわれた発表会にティム・クックCEOが登壇。フィル・シラー氏らと共に新製品の特徴などを紹介した。なお、iPad Air/iPad mini/Mac Proの製品詳細については個別に記事を掲載している。

iPad Airは「最大の一歩」。要望に応えiPad miniもRetina対応

 ティム・クックCEOは冒頭に、既存製品の好調ぶりを紹介した。9月20日に発売されたiPhone 5s/5cが3日間で900万台以上販売されたことなどを改めてアピール。発売日のApple Storeにおける盛り上がりの様子をビデオで上映した。iOS 7のダウンロード数は公開から5日間で2億を超え、iOSデバイス全体のうち、67%にiOS 7がインストールされているという。米国でiOS 7にあわせてスタートしたiTunes Radio(日本未展開)にも触れ、米国だけで既に10億曲以上が聴かれていると説明。「新しい音楽と出会うための素晴らしい方法」というジャスティン・ティンバーレイクのコメントも紹介した。

 App Storeのアプリ数は100万以上となり、600億ダウンロードを記録。アプリのデベロッパーには130億ドル以上が支払われているという。

iPhone 5s
発売日の熱狂を映像で振り返った
iPhone 5s/5cは3日間で900万台以上を販売
米国で展開されているiTunes Radioでは10億曲以上が聴かれているという

 新機種の紹介を前に、クック氏はiPad登場直後の状況を振り返った。“魔法的で革新的なデバイス”として登場したiPadだったが、一部で「必要性を感じない」、「(低価格ノートPCの)ネットブックに置き換わることはないだろう」といった意見が出たことに言及。しかし、現在までに売上は1億7,000万台となり、「他の製品でもここまで早く成長したものはない」とし、発表会の来場者に「ネットブックを覚えていますか?」と問いかけて笑いを誘った。

iPadはこれまでに1億7,000万台以上を販売
Appleの想像を超えたという、iPadの“クリエイティブな使われ方”の例をビデオで紹介
フィル・シラー氏がiPad Airについて説明

 続いて登壇したフィル・シラー氏がiPad Airを紹介。「9.7型モデルは3年半前に発売し、これまで毎年新バージョンを重ね、モバイルコンピューティングの新しいビジョンを提示してきたが、今日は最大の一歩となるということをお見せしたい」と前置きして、薄型化/軽量化しつつ、最新のA7チップでパフォーマンスを向上させたことなどから「新しい名前を持つのにふさわしい」として、iPad Airと名付けたことを説明。

 iPhone 5sなどと同じ、64bitアーキテクチャのA7を搭載。グラフィックス性能は従来比2倍まで強化、初代iPadに比べると72倍の向上となる。また、レンダリング性能やファイルを開く速さも2倍に改善。通信はLTEに対応するほか、iOSデバイスで初となるMIMO(Multiple-Input Multiple-Output)アンテナ搭載により、無線LAN接続のデータ速度も2倍まで上がったという。薄型/軽量化したが、駆動時間は第4世代と同じ10時間を維持。11月1日よりグローバルで発売し、新たに中国が販売地域に加わったことも明らかにした。

iPad Air
薄さは7.5mmに
内部パーツそれぞれを薄くしたことで全体の薄型化を実現したという

 続いて、シラー氏は7.9型の「iPad mini」について説明。小型ながらiPadの機能を全て使えるiPad miniだが、高精細ディスプレイの“Retina”対応への要望も多かったことから、これに応える形で新モデルは7.9型で2,048×1,536ドットのディスプレイを搭載。写真や電子書籍などが細部まで忠実に表現できることなどをアピールした。

Retina対応の新iPad mini
電子書籍や写真などを高精細表示できることを強調した
iPadシリーズのラインナップ

「映像/音楽制作を変える」Mac Pro。iMovieなどアプリの無料化も

新Mac Pro

 その他の製品として、4K映像の編集やリアルタイム再生に対応した新しい「Mac Pro」が披露された。黒い円柱形のデザインが特徴的な新Mac Proは、最大12コアCPU、12GBビデオメモリを搭載し、最大20Gbpsのバンド幅を持つ「Thunderbolt 2」ポートにより、4Kディスプレイとの接続と、4K映像出力が可能。360度方向に設けられた底部のスリットから吸気して上面に熱を逃がす構造で、ファンを従来の8つから1つに削減し、動作音も低減している。Mac OS Xの新バージョン「Mavericks」(OS X 10.9)を搭載。

 新しいMac Proを使用しているクリエイターのコメントも紹介。「インデペンデンス・デイ」や「パトリオット」などの映像を手掛けたDean Devlin氏は「Mac Proのリアルタイム4Kビデオ編集は、予想を超えるパワフルさで、私の映画制作を変えるものになるだろう」と述べた。また、レディ・ガガやマドンナなどを担当した音楽プロデューサーのStuart Price氏は「驚くほど高速で静か。レコーディングスタジオにはパーフェクトなコンピュータ」としている。

左がMac Pro。右はGENELECの小型モニタースピーカー
Thunderbolt Displayとの組み合わせ
背面に、4K対応のThunderbolt 2端子(USB端子の下にある6つのポート)を装備
シャープの4Kディスプレイに接続して4K映像編集のデモを行なっていた
映像クリエイターのDean Devlin氏
音楽プロデューサーのStuart Price氏

 Mac Proや、同日に発表された「MacBook Pro Retinaディスプレイモデル」に合わせて、ソフトウェアもアップデート。「iMovie」と「GarageBand」、「iPhoto」のiLifeアプリケーションや、「Pages」、「Numbers」、「Keynote」を含むiWorkアプリケーションが機能強化され、Mac OS Xの新バージョン「Mavericks」と「iOS 7」のユーザーは無料で利用できることも発表。

 いずれも64bit対応したほか、MacとiOS端末で一つのファイルを簡単に共同編集できることなどが特徴。iMovieではプロジェクト作成や編集などを経ず簡単に友人と共有することも可能。GarageBandではiPhone/iPadでも最大32トラックまで編集できるようになった。前述の新OSであるMavericksや、iWork/iLifeが無料アップデートされることについてクックCEOは「業界を怒らせてしまうかもしれないが、それが目的ではない。Mac/iOSデバイスでしかできない新しい体験をしてもらいたい」と述べた。

 クック氏は、「これらの素晴らしい製品は、アップルにしか提供できない技術革新によるもの。他社では1つでも同じようなものはできないだろう。ここまでの製品を年末までに揃えられることを誇りに思う」と自信を見せた。

新OS XのMavericks
新Mac Proの製造風景
iMovie(iPad Air画面)
GarageBand(Mac OS X Marvericks)
iWork
MacBook Pro Retinaディスプレイモデルも発表
iPad Airの薄さなどアピールするCMも上映された
新製品について総括するティム・クックCEO

(中林暁)