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バッファロー、70万円超のオーディオ用NAS「N1Z」などハイレゾ新ブランド「DELA」
(2014/2/21 10:30)
バッファローは21日、ハイレゾオーディオ向けブランド「DELA」(デラ)を立ち上げ、独自のオーディオ用SSDなどを搭載した実売70万円台半ばから80万円のNAS/トランスポート「N1Z」などを発表した。DELAブランドでオーディオ市場に本格参入する。
DELAブランドの第1弾はNAS。独自開発のオーディオ用SSDを搭載し、電源やシャーシなどにこだわり伝送品質を追求した最上位モデル「N1Z」(HA-N1ZS10)と、HDDで430mmとフルサイズのコンポと同等の筐体を持つ「N1A」(HA-N1AH20)の2モデルで展開する。いずれも受注生産で、オーディオ専門店や直販サイト「バッファローダイレクト」でのみ発売。2月下旬より出荷開始予定としている。価格はオープンプライスで、実売価格は「N1Z」が70万円台中盤から80万円、「N1A」が10万円台中盤から20万円前後。両モデル合計で月産台数は300台を想定している。
また、DELAブランドのハイレゾオーディオLANケーブルとして「C1AEシリーズ」も3月下旬より発売する。0.5m/1m/2m/3mまでの4製品を用意し、価格はオープンプライス。実売価格4,000円弱~6,000円台中盤。ケーブルについては別記事で紹介している。
バッファローはDSD対応のNAS「LS421D0402P」(実売74,800円)を'13年7月より発売しているが、その上位モデルとしてN1Z、N1Aを位置づけ、オーディオ用NASを強化していく。
ハイレゾオーディオに特化した「NAS」。18秒高速起動
N1Zと、N1Aのいずれも、ハイレゾオーディオの再生にこだわり、「オーディオ機器として開発した」というNAS(ネットワークHDD)。LINNのKLIMAX DS/Kなどのハイエンドネットワークオーディオ製品と組み合わせたシステム構成を想定している。
N1Zは、バッファローメモリが開発した容量512GBのオーディオ用SSDを2基、N1Aは1TBの東芝製HDDを2基搭載する。いずれも、RAID1/0構成に対応しており、RAID0の場合はSSD/HDDの合計容量でN1Zが1TB、N1Aが2TB利用可能できる。2つのHDDに同一のデータを記録するRAID 1(ミラーリング)の場合は、N1Zは512GB、N1Aが1TBとなる。
DSD(DSF/DFF)やFLAC、WAV、AppleLossless(ALAC)、AIFFなどのハイレゾオーディオフォーマットなどをHDDやSSDに蓄積し、ネットワーク経由で再生する。MP3やAAC、OGG、WMAにも対応。メディアサーバーはTwonky Media Serverで、10万ファイル以上を管理できる。
動作確認機器は「LINK KLIMAX DS/K」、「CH Precision C1+」、「スフォルツァート DSP-03」、「dCS Vivaldi Upsampler」など。基本的にはDLNAに対応したネットワークオーディオ機器は問題なく再生できるとしている。
音質を最重視した筐体設計とし、N1Zは350mm幅、N1Aは430mm幅で「オーディオ機器らしい佇まい」を目指したという。前面には有機ELディスプレイを装備し、配信楽曲のほか、LANポートの使用状況やIPアドレス、拡張ディスク有無、ディスク使用量などを表示できる。ディスプレイと本体のボタンにより、PCなしでもNASの基本設定などが行なえるという。
通常のNASでは、電源ボタンは背面に小さく装備されるが、N1Z/N1Aでは前面に大型のボタンを採用。「電源のON/OFF時の音」にもこだわったとする。
また、一般的なNASは「常時起動」で、電源を切らない前提で運用するため、起動時間が非常に遅い。バッファローの製品では約150秒程度かかるが、オーディオファンから同社に寄せられた意見では、音楽を聞くときだけ電源を入れると起動時間が非常にストレスという声が多かったという。
そのため、N1Z/N1Aでは起動時間を大幅に短縮。N1Aで約20秒、N1Zの場合は約18秒で起動/配信可能となるため、「音楽を聴くときだけNASを立ち上げる」という運用が行なえる。オーディオ専用に大容量電源を搭載したことや、採用するHDD/SSDが限定され、それにあわせて徹底的にチューニングを行なうことで、起動の高速化を実現したという。
Ethertnet端子は2系統備えており、ルータ経由で利用するだけでなく、NASとプレーヤーを直結して利用できる。また、端子部はLED明滅のための配線が、LANへの悪影響を及ぼすのを排除するため、ライトパイプと呼ばれるパイプにより、端子裏からLEDを明滅する仕組みを採用。ノイズの発生を抑えた。また、クロックもオーディオ品質のロージッタタイプを採用している。
背面にはUSB端子を3系統備えており、それぞれデータ取り込み用(USB 3.0)、バックアップHDD用(USB 3.0)、容量拡張用(USB 3.0)となる。N1Zは背面に電源供給専用のUSB端子を、N1Aは前面にUSB 2.0端子を備えている。
“オーディオ用”SSDを搭載したN1Z。電源や筐体もオーディオ専用
N1ZとN1Aのメイン基板は同じで、Marvell製の「ARMADA 370」というSoCやNASとしては大容量の2GBメモリ(DSD対応の従来機LS421Dは512MB)、専用の電源管理チップ、低ジッタクロックなどを搭載する。
N1ZとN1Aの違いは、ストレージがSSDとHDDという点のほか、ボディサイズや電源など。
N1Zの筐体幅は350mmで、LINNのKLIMAXシリーズに揃えた。4面にアルミ押し出し材の厚板を採用するほか、各パネルを密着させないセパレート構造を採用し、共振を排除。内部にH型クロスフレームを配した左右対称設計により重量バランスに配慮するなど、オーディオ機器として筐体設計を行なった。
SSDは、グループ会社のバッファローメモリが開発したオーディオ用のカスタム品。N1Zの企画段階から両社が協力して、専用のファームウェアを開発。SSD内のバックアップ電源による消費電力の安定化や、ピーク性能にとらわれない安定したリード/ライト性能など、オーディオ配信に最適化したという。SSDでは、ユーザーからは特別な操作を行なっていない際でも、定常的にアクセスが発生するため、大きな電流変化が生じ、音質へ影響していたという。新ファームウェアにより電源が安定する一方、リード/ライト性能は低下するが、オーディオのコピーや再生には十分な速度を有しているとのこと。なお、このSSDの単品発売の予定は無い。
N1Zの電源は、オーディオ用とSATA/USB 3.0などの外部機器用の電源ユニットを分離して搭載。回路だけでなく電源ユニット自体も分離することで、LAN再生への外部機器からの影響を排除している。
N1Aは、フルサイズのオーディオ機器で一般的な430mm幅のNAS。強力な電源ユニットや、ファンレス設計、厚板仕様のシャーシなど、オーディオ的なアプローチで筐体設計を行なっている。電源は産業用の大容量のもので、SATA/USBとLAN側の電源回路を分離することで音質への影響を排除した。
製品名 | N1Z | N1A |
---|---|---|
サポートファイル | DSF、DFF、FLAC、WAV、ALAC、AIFF、AAC、MP3、WMA、OGG、LPCM | |
ストレージ | 512GB SSD×2 | 1TB HDD×2 |
入出力端子 | 1000 BASE-T Ethernet×2(ネットワーク接続用×1、オーディオ機器用×1)、 USB 3.0×3、USB 2.0×1(N1Zは電源供給専用) | |
アース | 専用アース端子 | アース対応ネジ |
電源コネクタ | 3Pインレット | |
消費電力 | 60W | |
外形寸法 (幅×奥行き×高さ) | 350×370×60mm | 430×350×60mm |
重量 | 7kg |
オーディオファンの声を聞いた「DELA」。メルコへ原点回帰
ビジネス・デベロップメント係 シニアプロダクト プロデューサー オーディオ関連機器担当の荒木甲和氏は、N1Zの70~80万円というNASとしては破格の価格を冒頭に紹介し、「究極のオーディオ用NAS」と位置づけた。その上で、なぜバッファローがオーディオに取り組むかを説明した。
荒木氏は、親会社の旧メルコ(メルコホールディングス)も、アンプメーカーとして立ち上がったことを紹介。N1Z/N1Aは、オーディオファンからのニーズを聞いて、製品を生み出したが、同様に牧会長も秋葉原でアンプを販売し、その声を聞いて名古屋で創業したことから、「大量生産のバッファローから、オーディオメーカーとして生まれた『メルコ』のものづくりへの回帰」と説明した。
オーディオらしい外観や品質、所有感などを満たし、なおかつ、ユーザーの声を聞きながら新規に立ち上げる製品を「DELAブランド」で展開。そのため、既存製品をオーディオ用にアップグレードした「LS421D0402P」はバッファローブランドとなる。
DELAというブランド名は、イタリア語で「Au-dela de laudio numerique(デジタルオーディオの未来)」の略称。オーディオファンからも「バッファローは有名でスタンダードな製品だが、よりよいものは、明確に区別された製品、ブランドがほしい」という声があったため、新ブランドを立ち上げた。今後のDELA製品展開は未定だが、「USBメモリでもUSB HDDでも、『こだわったオーディオ用がほしい』という声はある。バッファローの扱うカテゴリの多くで可能性はあるし、バッファローだからできるものをやっていきたい」とした。
N1Z/N1Aでこだわった、ノイズや微振動の抑制、消費電力の安定化などは、「いままでのNASでは無視していたポイント」という。オーディオメーカーからもDSD対応やよりオーディオのノウハウを取り入れた高品位なNASへの要求が高まっており、それらの意見を取り入れながら開発したという。
N1Z/N1Aのプロダクトマネージャーで、自らもオーディオマニアという開発部 R&D Tokyo 1課 第2開発係の山田祐輝氏は、剛性あるボディや高速起動などこだわりを解説した。N1AのHDDについては、自ら「メーカーからHDDを取り寄せ、一番ゴリゴリ音の少ない東芝のものを採用した」という。
また、国内生産と品質にこだわる姿勢を強調。生産工場ではDELAの専用ラインを構築し、N1Z/N1Aのコンセプトやターゲットを製造ラインのスタッフにも共有した。さらに、DELAの組み立ては、認定製造者しか作れない体制とし、取扱説明書には組んだ人と検査した人のサインが入るようになるなど、徹底して品質を追求するという。なお、現在N1Z/N1Aを担当できるスタッフは「2名」とのこと。
開発に協力したオーディオ評論家の角田郁雄氏は、「PCやネットワークを使ったオーディオを推進してきたが、DELAのようなNASが出てくるのを心待ちにしていた。オーディオの音を決めるのはDACだと思う。だからそこまではとにかくシンプルに情報を流すことが重要。ネットワークオーディオにおいて、音楽プレーヤーはかなりの水準まで来たが、NASは音質も使い勝手も不満が残っていた」とし、それらが解消されることを歓迎した。
また、HDD残量が確認できたり、KLIMAXと並べても同格の佇まいを持っているなど、オーディオ機器的使い勝手、デザインもDELAの特徴。角田氏は「NASではなく、ハイレゾデータトランスポートと呼ぶべき。どこのメーカーの機器(ネットワークオーディオ再生機器)でも使えるトランスポートだ。実際に使ってみても、動作は静かで、音の鮮度はびっくりするほど。ものすごく気に入っている」と語った。