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10兆円企業パナソニックへ。AV/白物融合し、脱日本依存。新経営方針はBtoB/海外強化
(2014/3/27 21:30)
3月27日、パナソニックは2014年度事業方針を発表した。パナソニックの津賀一宏社長は、創業100周年を迎える2018年度に売上高10兆円を目指す計画を明らかにし、「過去にも10兆円の売上高目標を掲げてきた経緯ある。だが、何度もはじき返されてきた。因縁の10兆円をなんとしてでも達成する」と、中期的な目標達成に強い意思をみせた。
また、家電、住宅、車載、BtoBソリューション、デバイスという5つの事業領域と、日本、欧米、そして新興国による海外戦略地域の3つの地域軸を掛け合わせた15のマトリクスにおいて、どの分野に注力するのかといったことを明確化し、経営リソースを大胆にシフトする姿勢も明らかにした。
さらに、AVCネットワークス社のコンシューマ事業のリソースを、白物家電事業などを担当しているアプライアンス社に集結。2018年度の家電事業2兆円達成に向けて、現行のカンパニーや事業部の枠組みを超えた戦略立案と実行。製販連結による強い商品の創出、および家電事業トータルでのリソースの最適活用を図るという。
また、同社では、兵庫県尼崎市のプラズマディスプレイパネル生産のPDP第5工場の建屋を、流通加工工場として活用する計画に関して、兵庫県企業庁、尼崎市、関西電力などと基本合意したことを明らかにしたほか、車載向けを除く電源および電源関連部品の開発、製造、販売に関する事業を日本マニュファクチュアリングサービスに譲渡することで基本合意したことを発表した。
'13年度は「最低限の目標は達成」
津賀社長は、2013年度の業績見通しについて、売上高7兆4,000億円、営業利益2,700億円、当期純利益1,000億円、フリーキャシュフローでは2,000億円以上をあげ、「昨年、中期経営計画のCV2015を発表し、そのなかで一刻も早く赤字事業をなくすこと、自分たちが力強く進んでいける道筋をつけることの2点に対して、不退転の決意で取り組むと宣言した。中期計画の1年目は、営業利益2,500億円以上、純利益500億円以上を目標とし、復配することを最低限の目標としていたが、期初公表値を達成し、最低限の目標は達成した」と総括。また、4つの重点施策と位置づけた「財務体質の改善」、「赤字事業の止血」、「脱・自前主義による成長・効率化」、「お客様価値からの逆算による取り組み」については、ネット資金でマイナス3,000億円の水準が見えたことでの財務体質の大幅な改善や、半導体事業において北陸3工場をイスラエルのタワージャズと合弁化し、アジア3工場はシンガポールのUTACへ譲渡したことで、脱・自前主義による競争力強化を図れたとしたほか、Fujisawaサスティナブル・スマートタウンによる街づくり事業や、ローソンとの協業などにより、パートナーとともに顧客価値を高める成果があがっていることを示した。
だが、赤字事業の止血については、テレビ・パネルや半導体、回路基盤、光デバイス、携帯電話の5つの主要課題事業に加えて、デジタルカメラ、エアコンの2つの新たな課題事業が加わったことに改めて触れ、「黒字化に向けた手を打っており、止血には一定のめどが立ったが、2013年度には合計で1,000億円規模の赤字が残る。赤字事業止血に向けてしっかりと改革をやりきる」と、強い口調で語った。
一方、2014年度の事業方針については、「2014年度は、中期経営計画達成への基盤を固める年であることと、2018年の新しいパナソニックに向けた成長戦略を仕込む年になる」とし、2014年度の経営目標を、売上高7兆7,500億円、営業利益3,100億円に置いた。
「中期経営計画達成に向けた道筋をつくる。この数字はなんとしてでも達成する」と強調した。
また、事業構造改革費用として、2013年度とあわせた2年間で3,000億円を計上。「2013年度は主要課題事業への手を打ち終えるために前倒しで進めてきたが、それに対して2014年度は将来に向けての事業構造を変えていくための1年になる。細かい部分でもやることが見えてきている。強い事業体に変えるための改革を推進していく」とした。
セグメント別には、エコソリューションズにおいて、国内の住宅関連事業が消費税増税後の需要減の影響を受けて減益予想とするが、アプライアンス、AVCネットワークス、オートモーティブ&インダストリアルシステムは増益を見込んでいる。
また、2013年4月から開始した事業部制の導入では、当初は49の事業部体制だったが、これを2014年度は43事業部でスタートし、「競争力がある事業はさらに伸ばし、将来が描けない事業は統廃合する。リチウムイオン電池は向き合う産業を変え、空気清浄機は向き合う地域を変えたことにより成功した事業の例になる」などと述べた。
'18年売上高10兆円を目指す。白物/AV統合、海外強化で“脱日本依存“
2015年度を最終年度とする中期経営計画「CV2015」において、売上高の目標をあえて公表してこなかった津賀社長は、その姿勢は変えていないが、今回、初めて2018年度の売上高の目標を10兆円に置くことを示した。
そのなかで、家電、住宅、車載という3つの事業において、それぞれ2兆円の売上高を目指す一方、「住宅・車載以外のBtoB」としてきた領域を、今回、デバイスとBtoBソリューションに分割。デバイスでは1兆5,000億円、BtoBソリューションでは2兆5,000億円の売上高を目指す計画を示した。
また、津賀社長は、「過去の10兆円への挑戦が達成できなかったのは、売れば利益が落ちるという事業を含めて計画をしていたこと、伸びる事業と縮む事業が混在していたことがあげられる。この1年で売り上げが伸びれば利益が伸びる体制になったこと、なにをやったら赤字になるのかということが理解できている点が異なる。また、世の中の成長領域にどれぐらいフォーカスできるのかといったことや、成長する領域にリソースを投入することが大切である。すべての領域で戦うのではなく、5つの事業領域×3つの地域のマトリクスにおいてフォーカスした分野で、相手を明確にして戦っていく」とした。
だが、10兆円達成時の利益率については、「まずは5%の利益率を達成することが目標。現時点ではわからない。2015年度に目標としている3,500億円以上の営業利益が見えたときに、改めて考える」などと述べ、「非連続な打ち手を含めて、各事業領域で収益を伴った成長を目指す」とした。
家電事業の2018年度売上高2兆円に関しては、「現在の延長線上では将来を描くことが難しい。こうした状況に陥ったのは、スペック優先、イノベーション不足などの反省点がある。これらの解決に向けて、2兆円の目標からの逆算で、家電事業を一元化することにした。両者の家電事業が持つ強みを結集し、掛け合わせて、競争力のある新たな家電事業を作るという決意である」としたほか、「白物家電事業は、ローカルの生活に密着した形で事業を推進しており、グローバルなコスト競争力を持っていたのかという点が問題だった。基本戦略は日本向けの付加価値製品が中心となっていた。これに対して、デジタル家電事業はグローバルに事業を進めており、グローバルで戦える人材も備えている。また、エレクトロニクス技術、ネットワーク技術もある。この2つの事業が入り交じることで、新しい強みを生み出せる。これまでは日本における白物家電事業とデジタル家電事業が体制が分かれていたことで強みが出せなかった。これが一体化することで、最適化され、行動が起こせるようになる」と述べた。
テレビ、オーディオ、BDレコーダー、アクセサリーなどは白物家電事業を行うアプライアンス社と統合。レッツノートによるPC事業などのBtoB中心の事業はAVCネットワークス社に残る。
「若手を中心として、ワーキンググループをつくり、もう一度、家電事業を見直す活動を進めている。Wonders!と言われる製品が登場することを期待してほしい」と、津賀社長は述べた。
一方、住宅事業については、「今後大きな成長が見込まれる日本のリフォーム市場に対して徹底攻勢を仕掛ける」とし、国内61カ所のショールームをリフォーム対応の窓口へと刷新し、顧客接点を強化。リフォーム対応製品のラインアップを拡充するという。さらに、ASEAN、中国、インド、トルコ、CIS、中近東での事業拡大を図るという。
同じく2018年度に売上高2兆円を目指す車載事業では、テスラモーターズ向けの円筒形リチウムイオン電池のほか、角形リチウムイオン電池でも複数の自動車メーカーからの受注が増加していること、ヘッドアップディスプレイや、クラウド連携のコックピットシステムといった車載専業メーカーにはないインフォテイメント分野での強みを生かす考えを示した。
BtoBソリューション事業では、アビオニクス事業に代表される業界特化型事業を新たに創出すること、各地域にエンジニアリング会社を設置し、地域ごとや顧客ごとに最適なソリューションを提供できる事業を創出することを掲げる。ここでは、レットノートで展開してきた物販型ビジネスも鍵になるといえそうだ。
デバイス事業では、光デバイスやパソコン用電池などのICT向け商品の事業環境が厳しいことから、産業分野へとシフト。エナジーデバイスをコア技術として、小型化や集積化、モジュール化やシステム化が求められる産業分野を重点的に攻略するという。
今回、新たに示したのが、5つの事業領域と、3つの地域を掛け合わせた15個のマトリクスだ。
「事業軸を中心に進めてきた経営を、顧客により近い地域軸からの逆算を加えた経営へと進化させる必要がある。このマトリクスの上で、どこに注力していくのかを明確にしたい」としながら、日本においては、住宅、車載、BtoBソリューションとの組み合わせ、欧米においては車載とBtoBソリューションの組み合わせ、海外戦略地域では家電、住宅、BtoBソリューションが、それぞれ「2018年度の売り上げ目標と、現在の売り上げとのギャップが大きい領域」とし、「これらの領域では大きな挑戦が必要であり、海外を中心に、ヒト、モノ、カネのリソースを大胆にシフトしていく」と語った。
さらに、「パナソニックの売上高から比較すると、欧米ではGDPが大きく、新興国では人口規模が大きく圧倒的なポテンシャルを感じる」と前置きし、「とくに成長余力が大きい海外戦略地域(新興国)の攻略については、脱・日本依存をキーワードに、戦略地域事業推進本部を設置し、インド・デリーに代表取締役副社長の山田喜彦氏を駐在させ、全権を委任する。代表取締役が海外に駐在するのは初めてのことであり、海外戦略地域の成長を取り込むことができなければ、パナソニックの成長はないという強い思いのもと、この地域での成長を実現したい」と強い姿勢をみせた。
今回の事業方針説明では、中期経営計画の2年度目の方針だけに留まらず、創業100周年を迎える2018年度の売上高や、その事業別内訳を公開するなど、将来に向けた姿勢をこれまで以上に明確にしたものになった。
それは、これまでの事業構造改革が着実に成果をあげていることの裏返しともいえよう。そして、テレビ事業をはじめとするデジタル家電事業と白物家電事業との統合も、パナソニックの新たなモノづくりにどんな影響を及ぼすかが注目されるところだ。