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キヤノン、4K試験放送見据え、CINEMA EOS向け放送用レンズ。フルHDカメラ「XF205」も

 キヤノンは3日、現地時間の5日から米ラスベガスで開幕する映像機器展「NAB Show」に合わせ、業務用ビデオカメラや、シネマ用4Kカメラで4Kテレビ向けコンテンツ撮影をサポートする「CINE SERVOレンズ」などの新製品を発表した。

CINEMA EOSを放送業界で活用できるCINE SERVOレンズ

「CN7×17 KAS S/P1」、「CN7×17 KAS S/E1」

 キヤノンでは、4K対応の映画撮影用カメラとして「CINEMA EOS SYSTEM」を展開している。一方、4Kの試験放送を控えた放送業界でも、4K撮影システムのニーズが高まっており、CINEMA EOSを4K番組の撮影に活用する例が増えているという。

 しかし、映画撮影用レンズは「EFシネマレンズ」も含めて基本的にズームや絞りなどの操作がマニュアルであるため、例えばサッカーなどのスポーツを放送用カメラライクに撮影したいというニーズがあるという。そこで、CINEMA EOS向けに開発されたのが「CINE SERVOレンズ」。なお、コンパクトなレンズは映画撮影でもニーズがあると判断し、放送用だけでなく、シネマ用途にも訴求していくという。

【お詫びと訂正】
 記事初出時に、オートフォーカスにも対応すると記載しておりましたが、誤りでした。お詫びして訂正いたします。(2014年4月3日)

 新発売のレンズは「CN7×17 KAS」で、PLマウント用の「CN7×17 KAS S/P1」と、EFマウント用の「CN7×17 KAS S/E1」を8月下旬に発売予定。価格はどちらも340万円(税別)。

 焦点距離は17~120mmで、光学7倍。レンズの脇にドライブユニットと呼ばれるものが取り付けられており、このユニットを使ってズーム、絞りを操作。ユニットには撮影ボタンやズームレバーなどを備えている。このユニットは取り外す事もでき、マニュアル操作のシネマ用レンズとして使うこともできる。なお、このユニットとレンズは調整されているため、同じシリアルナンバーのものを組み合わせて使う必要がある。

 動作する電源を供給するための12ピンレンズケーブルを接続でき、対応カメラからの給電が可能。市販の外部電源も利用できる。16bitエンコーダ出力機能や通信機能を装備する事で、バーチャルシステムとも接続できる。なお、通信機能はPLマウントモデルはCookeのiTechnologyに、EFマウントモデルはEOS-LENS通信に対応する。

 なお、CINEMA EOS SYSTEM関連では、RAWで撮影した4K映像を処理するソフト「Cinema RAW Development」が10月にCinema RAW Development 1.3にアップデート予定。Intelのソフトウェア開発キット「Intel Media SDK」に対応する事で、第4世代のIntel Coreプロセッサを搭載したPCで利用すると、従来も高速に4K RAWの現像ができるという。

フルHD業務用カメラ「XF205」

XF205

 フルHD業務用カメラの「XF205」は、7月中旬発売予定で、価格は45万円前後(税別)。発売中の「XF305」と「XF105」の間に位置するモデルで、X305と較べて手持ちがしやすい小型化を実現。XF105と比べても、レンズフード部分がわずかに長い程度に収まっており、日本人の体格でもハンディカメラとして使いやすいサイズを追求する。グリップは120度回転するタイプで、ハイアングル/ローアングル撮影もしやすいという。

 報道などの撮影現場からの声を多く反映させているのが特徴。XF105は機能切り替え式だったレンズリングを、フォーカス、ズーム、絞りで、独立した3本のレンズに変更。各リングには段差をつけ、ブラインドでも操作しやすいという。ズームリングのスピードもアップ。ゲインやホワイトバランスの設定も、独立トグルスイッチで選択できる。

 レンズフードには防塵力を強化したバリアを搭載。レンズキャップ紛失を防いでいる。音声は従来モデルの2ch記録から4chへと強化した。

 センサーやレンズはXA25と同じ。1/2.84型のCMOSを採用し、有効画素数は291万画素。レンズは光学20倍ズームで、焦点距離は35mm換算で28.8~576mm(ワイド画角設定OFF時)。絞りは8枚円形絞り。

 MXFとMP4の同時記録に対応し、カードスロットはCF×2、SDメモリーカード×1を搭載。CF×2にMXFを記録し、SDカードにMP4を記録するといった使い方が可能。CFには最大で50Mbpsの1080/60p/30p/24p、SDにはMP4の35Mbpsで1080/60p/30p/24pの記録が可能。モバイル用に、SDカードにMP4の640×360ドット/30pで記録し、スマートフォンを介してテレビ局などに素早く送信するといった使い方も可能。FTP転送機能を用いて、REC Pause中にMP4ファイルを転送する事もできる。

 常時記録(バックアップ記録)も可能で、MP4で常時撮影をしながら、録画開始/停止ボタンが押された間はMXFでも記録、停止ボタンを押してMXFの記録が停止しても、引き続きMP4で常時録画を続ける事も可能。

 ネットワーク機能として、2.4/5GHzの無線LANに対応するほか、本体にEthernet端子も搭載。無線LANが不安定な環境でも有線LANで通信ができるという。ファイルの転送だけでなく、ノートパソコンやタブレットのWebブラウザからカメラにアクセスし、カメラを遠隔操作する機能や、カメラ内の動画を再生する機能も搭載する。

 3G/HD/SD-SDI端子、GENLOCK/SYNCアウト端子、HDMI、ヘッドフォン、AV端子などを搭載。外形寸法は約160×353×201mm(幅×奥行き×高さ)。重量は約1,560g。

その他

 フルHD用標準レンズにも新モデル「HJ18e×7.6B」を7月下旬に発売する。このレンズもドライブユニットがついており、サーボモーター付きモデル「IASE S」が205万円(税別)、無しのマニュアルフォーカスタイプ「IRSE S」が190万円(税別)。

 焦点距離は7.6~137mmで、従来モデル「HJ17ex7.6B」と比べ、テレ側が130mmから137mmに伸びている。これにより、より離れた撮影が可能になり、記者会見シーンでは80cm下がっての撮影が可能になり、後ろの列からの撮影であっても対応できる点をアピールしている。

 56cmまで近づいて撮影する事もでき、厨房など、狭い場所での撮影にも対応。同時に、1.58kgと軽量化も実現している。

(山崎健太郎)