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パイオニア、“音を追い込める”DSD/バランス/8ch DAC×2の本格派ヘッドフォンアンプ

 パイオニアは、ESS製の8ch DACを2基搭載し、パラレル駆動させ、バランス出力も備えたUSB DAC兼ヘッドフォンアンプ「U-05」を7月下旬に発売する。価格は105,000円。同社初のUSB DAC内蔵ヘッドフォンアンプとなる。

USB DAC兼ヘッドフォンアンプ「U-05」

 外形寸法296×271×101mm(幅×奥行き×高さ)のコンパクトな筐体に、8ch DAC×2基のパラレル駆動や、DSD 5.6MHz/PCM 384kHzまで対応するUSB DAC機能、バランス伝送回路、バランス出力、大型電源トランスなどを搭載したモデル。バランス出力は2つのXLR端子を使ったXLR3タイプと、1つの端子でバランスに対応するXLR4タイプの両方に対応。アンバランスの標準ヘッドフォン出力も備えている。プリアンプとしても利用可能。

8ch DACを2基搭載。音を追い込む設定も可能

 同社はこれまで単品コンポでカナダESS TechnologyのDACを採用した製品を多数手がけているが、そのノウハウを活かし、DACの性能を引き出すとともに、左右それぞれに8ch DACの「ES9016」を採用。左右それぞれを8chパラレル駆動させ、信号レベルを8倍にする一方で、ノイズを大幅に低減。高いSN比を実現している。そこから、後述するバランス信号伝送方式を採用したヘッドフォンアンプへとバランスのまま送られる。

 USB DAC機能は、DSDが2.8/5.6MHz、PCMは384kHz/32bitまでサポート。ASIOドライバによるDSDネイティブ再生を可能にしている。PC接続時はアシンクロナス転送によりジッタを低減している。

「U-05」
内部
8ch DACの「ES9016」を2基搭載している

 同軸デジタル×2、光デジタル×2、AES/EBUも搭載。USB DAC以外は192kHz/24bitまでのサポートとなる。

 DACの細かな設定機能をユーザーに開放しているのが特徴で、デジタルフィルタはESSが用意している「SHARP/SLOW」に加え、パイオニアが用意したパラメータを使った「SHORT」も選択可能。

ロックレンジアジャスト機能のカスタマイズをしているところ

 また、DACが同期する際のロックレンジ精度をユーザーが調整できる「ロックレンジアジャスト」機能を搭載。ロックレンジを広く設定すると、ロックしやすくなるが、ジッタノイズを多く受ける事になる。逆に狭くするとジッタノイズは減るが、ロックしにくくなる。ロックが外れる(同期が外れる)と、ブツブツと音が切れてしまう。ユーザーは音を聴きながら、音切れが起こらないギリギリまでロックレンジを狭くする事で、より高音質な再生が楽しめるというもの。

 製品出荷時は音が途切れにくいよう、4段階の調整幅となっているが、操作によってこの幅を7段階まで拡張できる。

 これ以外にも、原音を忠実に再生するという「DIRECTモード」、楽曲を384kHzや32bitまで拡張・アップサンプリングして処理する「オーディオスケーラー」機能も備えている。

バランス出力、2つのボリュームツマミ

 ヘッドフォンアンプ部にはバランス信号伝送方式を採用。8ch DAC×2基で処理した音を、バランス信号のまま伝送・増幅できる。アンプはAB級。ディスクリート回路構成を採用している。

 前面にアンバランスの標準ヘッドフォン出力、バランスのヘッドフォン出力を用意。バランス出力は左右独立した2つの端子で接続する3ピンのXLR3端子と、1個の端子でバランス接続が可能な4ピンのXLR4を用意する。XLR端子はいずれもノイトリック製。

 ヘッドフォン出力はアンバランスが180mW×2ch(32Ω)、バランスが300mW×2ch(32)Ω。対応インピーダンスは16〜600Ω。周波数特性は4Hz〜80kHz。SN比はアンバランス106dB、バランスが113dB。ゲイン切り替えスイッチも備えている。

 ボリュームは大きなツマミの下に、小さなツマミも用意。小さな方はファインアジャストボリュームと呼ばれるもので、大きなツマミでの増幅幅よりも細かな調整ができる。これによりメインボリュームで大まかな調整を行ない、ファインアジャストボリュームでより細かく理想の音量に設定できるという。

フルバランス回路の基板
3ピンと4ピン、2種類のXLRヘッドフォン出力を備えている
メインボリュームの下にある小さなツマミがファインアジャストボリューム

 背面にはアナログRCAと、XLR(XLR3)のバランス出力も搭載。プリアンプとして使うこともでき、ボリューム連動/固定が選択できる。RCA端子は削り出しタイプ。プリアンプ利用を想定し、リモコンも付属する。

 電源にはEIコアトランスを採用。これをシールドケースで覆い、内部にエポキシ樹脂を充填している。電源ケーブルは着脱可能で、極太ケーブルタイプが付属。オートパワーダウン機能も備えている。大型のトランスを採用した事などで、コンパクト筐体だが重量は6.3kgとなっている。

 筐体は、前面と天面、側面パネルにアルミを採用。デスクトップでパソコンなどと繋げて使うシーンも想定し、天面などにネジなどが見えないフラットデザインにこだわったという。インシュレータは試聴の結果決まったという3点支持タイプ。3点支持では、筐体後方を上から押すと、机などに傾いた筐体が触れる可能性があるが、それを防ぐために、5mmほどインシュレータより短いサポート用の脚も用意。その脚が先にデスクに触れる事で、筐体や机に傷がつくのを防いでいる。

背面
付属のリモコン
底面。3点支持のインシュレータに加え、後部に傷防止のサポート用の脚が搭載されている
前面と天面、側面パネルにアルミを採用。前面と天面は一体になっており、繋ぎ目のないデザイン

音を聴いてみる

 最終に近いという試作機の音を聴く事ができた。

ゼンハイザーのHD800と組み合わせた

 ゼンハイザーのオープンエアヘッドフォン・ハイエンド「HD800」を使い、XLR4でバランス接続。ソースはネットワークプレーヤーの「N-50」を使い、USBメモリに保存したハイレゾ楽曲を再生。同軸デジタルでU-05と接続した。

 HD800から音が出た瞬間に感じるのは、圧倒的なまでのSNの良さ、分解能の高さだ。広々としたステージに、極めてシャープでディテールが細かい音像が出現。濁りがまったくないクリアさと、音像へのフォーカスがバシッと合った感覚が心地良い。

 これは、8ch DAC(ES9016)を左右それぞれに使うという、良い意味で力技というか、豪快な仕様が効いている部分で、いままでのヘッドフォンアンプ/DACでちょっと聴いた事がないほどの情報量の多さだ。

 ヘッドフォンのHD800も、細かな音の描写が得意なモデルだが、色付けや響きの付帯も少ないため、例えばエッジをカリカリに立たせたような音を入力すると、高域が硬すぎて荒れたような、耳が痛いと感じるような音を出す事もある。

 しかし、U-05の場合、エッジを無理に立たせているのではなく、元々驚くほどの繊細な音が豊かに出ているため、ボリュームをグイッと上げていっても高域がまったく破綻せず、豊かな質感を保ったまま音がパワフルになっていく。ヘッドフォン側の再生能力の高さを再認識できるアンプだ。

 ESSのDACは全体の傾向として、分解能が高く、繊細な描写と得意とするが、それゆえ音の線が細く、弱々しく感じられるような製品もある。しかし、U-05の場合は大型電源トランスなどを搭載する事で、低域の沈み込みも深く、重心が腰高にならず、安定感がある。ストリングスが重なって押し寄せるような描写でも豊かな音圧でグワッと迫ってくるダイナミックさも持ちあわせており、ESS DACの音をしっかりとサポートしている印象だ。低域も分解能が高いため、低域と高域の解像感が違って聴こえるというような事も無く、全体のまとまりも良好だ。

DAC兼プリアンプとしても高い能力を持っている

 2chプリメインアンプのA-70や、EXシリーズのスピーカーと組み合わせ、プリアンプとして使った音も聴いてみたが、ヘッドフォンの時と同様に、分解能やSNの良さに驚かされる。スピーカーでは音場の奥行きの深さがヘッドフォンよりもわかりやすい。

 ジッタノイズを軽減させるロックレンジアジャスト機能を調整し、音が途切れるギリギリのところまで追い込んでみると、分解能や音のシャープさや、奥行きの深さがレベルアップ。研ぎ澄まされた刃を突きつけられているような気分にすらなってくる。また、デジタルフィルタも前述のように3種類から選択できるが、フィルタによる音の違いも非常にわかりやすい。

 8ch DACやバランス出力の充実など、ヘッドフォンやPCオーディオマニアが気になる機能を先取りして充実させたようなモデルだが、理想とする音を細かく追い込む機能を豊富に備えている点も、マニア心をくすぐる要素だ。音質も一聴の価値アリ。要注目モデルだ。

(山崎健太郎)