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パナソニック、'14年度上期は純利益809億円。「売上10兆円へ積極的に舵を切る」

 パナソニックは、2014年度(2014年4月~9月)の連結業績を発表。それにあわせて、同社の津賀一宏社長は、2015年度を最終年度とする中期経営計画の営業利益目標である3,500億円を、1年前倒しで2014年度に達成する考えを明らかにした。さらに、営業利益率5%の達成についても、「今年度見通しは4.5%となるが、5%達成が視野に入ってきた。今年度中に前倒しで達成したい」と述べた。

津賀一宏社長

 次期中期経営計画がスタートする2016年度からの成長戦略へのシフトも、前倒しして2015年度から実行に移す。さらに、創業100周年を迎える2018年度の売上高10兆円の目標についても「まだ構造改革の最中であり、事業売却によって売上高が下がっている中で、このままのオーガニックな成長では10兆円には届かないと考えている。非連続領域に対して、M&Aや協業などを積極化させることが必要である。10兆円に向けて積極化することに舵を切る。これまでの進捗をみると、10兆円の達成に向けては手応えを感じている」とした。

 津賀社長就任以来の一連の構造改革の成果があがっていることを強調する会見内容になった。

2014年度の位置付け
中期計画を1年前倒しで達成へ

車載事業、住宅、BtoB事業が新しい3つの柱

 津賀社長は、「パソナニックは、これまでは家電の会社であったが、これからの新たなパナソニックには3つの柱がある。ひとつは車載事業であり、自動車メーカーとのパートナーシップを推進する。もうひとつは住宅メーカーであるということ。海外でも基盤を築きたい。そして3つめがBtoB事業。アビオニクスなどの小さい事業の集合体であるが、ここで骨格となる事業はこれであるということを示したい」とコメント。パナソニックの事業構造の改革にも引き続き取り組んでいく姿勢を示した。

 津賀社長は、2014年度を、「2015年を最終年度とする中期計画の基盤を確立する年」と位置づける一方、「2018年度の新しいパナソニックに向けた成長戦略を仕込む年」とも位置づける。

 その上で、いくつかの指標を示してみせた。

 ひとつは事業部の収益性の改善だ。2012年度には、赤字事業部が29%と約3割を占めていたが、2014年度見通しでは5事業部だけが赤字。構成比では12%と約1割に縮小した。一方で、5%以上の営業利益率をあげる事業部が18事業部、0~5%の営業利益率の事業部が20事業部であることを示しながら、「全体の42%と、約半数が5%以上の利益率をあげている。着実に収益改善が進んでおり、これにより全社で5%の営業利益率という着地点が見えてきた。今回、5%の営業利益率を視野に入れたという発言は、5%に届いていない事業部は少し遅れているということを自覚してもらいたいという思いもある」とした。

事業部の収益性。2014年度は5事業部だけが赤字となる見通し

 赤字事業である5つの事業部のうち、「私が課題事業と認識しているのは、テレビ、半導体、光ドライブ、PLD(液晶パネル)の4つの事業。テレビ事業は、5%の営業利益確保は難しいと考えている。ではなぜ継続するのか。パナソニックのテレビを必要とする人がいること、家という大きな空間において、テレビのようなデバイスが不可欠であることがその理由。この事業をやっている人のモチベーションをどう保つかも重要である。地域での競争力、商品力を意識したモノづくりを進める。テレビ事業は、赤字と黒字のところをフラフラしているが、テレビは残す。その上で、どうすればテレビが残せるのかということを考えている」と語った。

 また、「半導体事業は固定費の重たい事業であり、回復まで時間がかかるが、腹をくくって取り組んでいく。車載分野や産業分野などに展開する上で、一定の半導体事業を維持することは不可欠である。光ドライブは市場がシュリンクするなかで、最後にどう収益をあげるのかということを考えていくこと、技術者を新規領域に取り組ませることが大切。PLDは、非テレビ用途が堅調であり、円安効果で32型などのテレビ向けでも利益が出始めている」などと述べた。

 なお、デジタルカメラ事業については、「コンパクトデジカメが予想以上に市場が縮小した。想定が甘かった。だが、4K動画や4K静止画といった他社がやりきれていないところにフォーカスしている。プレミアム感があるカメラを投入して、事業を好転させたい」と語った。

 また、日本、欧米、インドを中心とした海外戦略地域の3つのエリアと、家電、住宅、車載、BtoBソリューション、デバイスという5つの事業領域を組み合わせたマトリクスのなかで示している重点領域での成果についても説明。「家電×戦略地域」では、アジアにおける強い商品展開を進めるとして、2014年秋から、MADE IN JAPANを含む約40機種のプレミアム製品をアジア市場に投入。「憧れを作るマーケティングを通じて市場競争力、ブランド力を強化し、売り上げ拡大につなげていく」とした。また、2015年4月には、開発、製造、販売、マーケティングを統合した地域自己完結型組織のAPアジアを設置。400人規模の開発者体制で、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、テレビに関して、アジアにおける地域密着型製品の創出を行い、さらにODMを活用してスピーディーなラインアップ拡充を図るという。

重点事業にリソースを集中する

 「住宅×戦略地域」では、パナホームを中核に、マレーシアでの富裕層を対象としたスマートシティの開発を進める一方、同じくマレーシアでプレハブ技術を活用し、断熱、換気、防水に優れたたW-PC構法による地域密着型住宅を投入。現地水準価格で提供するとともに、工期が3カ月と従来工法に比べて半減できるという。2015年4月にはASEAN住宅統括会社を設立し、インドネシア、ベトナム、タイにもこの事業を展開するという。

 「車載×欧米」では、テスラモーターズが設置した米ネバダ州のギガファクトリー内にリチウムイオン電池の生産会社を設立し、EVの普及を支援。フィコサ・インターナショナルS.Aとの資本業務提携により、電子ミラー開発を加速し、安全な運転をサポートするという。

 「BtoBソリューション×日本」としては、2020年の東京オリンピックおよびパラリンピックの公式パートナーとしての強みを生かし、未来のくらしを創造。映像機器、白物家電、電気自動車などを活用することで、高齢者や障害者をサポート。「パナソニックの技術力を発信する絶好の機会である」とした。

家電では、アジアにおいて強い商品を展開
住宅ビジネスもASEAN地域へ本格参入

2014年度上期の純利益は809億円の黒字

 一方、今回発表した2014年度上期連結業績は、売上高が前年同期比0.4%増の3兆7,228億円、営業利益は20.7%増の1m769億円、税引前利益は41.2%減の1,219億円、当期純利益は52.2%減の809億円の黒字となった。

連結決算概要
連結決算概要(累計)
河井英明代表取締役専務

 パナソニックの河井英明代表取締役専務は、「テレビ事業などの課題事業の減収や、国内における消費増税に伴う駆け込み需要後の反動もあり、売上高は前年並となったが、営業利益ではその他事業を除くすべてのセグメントで増益となり、ネット資金も、2009年9月末以来、5年ぶりの黒字化となった。上期は、計画を上回る推移となっており、通期業績見通しでは、営業利益計画を3,500億円に上方修正する」と総括した。

 ネット資金の黒字化については津賀社長がコメント。「ネット資金のマイナスが増え続け、このままでは経営の自由度を失いかねないというのが最初の認識。全社をあげて、なりふり構わずメスを入れたのが、この領域。東京・汐留のビルも売却している。自分たちが思っている経営をやるにはネット資金の黒字化は大きな意味がある」と述べた。

 地域別売上高は、円ベースにすると、国内が前年同期比2%減の1兆7,499億円。海外では、米州が1%増の5,613億円、欧州が3%減の3,439億円、中国が5%増の5,369億円、アジアが6%増の5,209億円。海外全体では3%増の1兆9,730億円となった。

 「日本では増税後の家電事業や住宅関連事業が低迷。米州では車載関連は堅調だが、PDP事業終息によるテレビ事業の低迷をこれでカバーできなかった。欧州はデジタルカメラ事業が低迷し、ウクライナ情勢などの影響も出ている。だが、アジアや中国といった戦略地域では、住宅関連事業やエアコン事業が好調である」とした。

 セグメント別では、アプライアンスの売上高が前年同期比1%増の9,164億円、営業利益は141%増の324億円。そのうち、テレビ事業に関しては、第2四半期単独の売上高が16%減の1,031億円、営業利益は22億円の赤字。「PDP事業の終息によるテレビ事業の縮小や、欧州における競合他社の価格攻勢のマイナス影響があったが、4Kテレビの販売増加、米国におけるファクトリーダイレクトモデルによる流通改革効果、パネル調達の合理化といった成果が着実に出ている」とした。

 また、白物家電、コールドチェーン、デバイスが堅調に推移。エアコンやテレビの収益改善効果、モーターなどの高収益製品の増販などによるデバイス事業の増益効果があったという。エアコンは日本での天候不順の影響があったが、中国での増販効果が出ているとした。

 AVCネットワークスの売上高は、前年同期比3%減の5,316億円、営業利益は前年同期の24億円の赤字から39億円の黒字に転換した。堅牢パソコンやプロジェクターなどが販売増となったが、PDPの終息や、デジタルカメラ事業の絞り込みなど、課題事業の構造改革に伴う販売減があった。だが、BtoB事業の増販と、事業構造改革効果で増益になった。

アプライアンス
アプライアンスの主要課題事業の実績
AVCネットワークス

 エコソリューションズは、売上高が2%増の7,904億円、営業利益が6%増の418億円。国内は住宅用ソーラーやLED照明が好調に推移。トルコのVikoの新規連結による売上げ増、戦略地域であるインドでの伸長がみられた。

 オートモーティブ&インダストリアルシステムズは、売上高が2%増の1兆3,782億円、営業利益は9%増の522億円。「コンピュータシステム事業の譲渡による販売減があったが、インフォテイメントシステムなどの車載向けや電子部品の実装機の販売が堅調だった」という。液晶パネル事業は業務用パネルが大きく伸長したほか、材料費用や固定費の削減、円安効果によりテレビ向けパネルの販売も堅調だったという。

エコソリューションズ
オートモーティブ&インダストリアルシステムズ

 その他事業では、売上高が18%減の2,979億円、営業利益は71%減の19億円となった。

 一方、2014年度の通期業績見通しは、売上高は前年比0.2%増の7兆7,500億円と据え置いたものの、営業利益は400億円増の3,500億円、税引前利益は400億円増の1,600億円、当期純利益は350億円増の1,750億円に上方修正した。「住宅関連事業の伸長などによるエコソリューションズの成長が見込まれるほか、円安効果、テレビ事業の構造改革の進捗が進んでいることなどが理由」とした。

 セグメント別では、売上高ではアプライアンス社が400億円減の修正とし、1兆7,790億円としたほか、営業利益ではエコソリューションズで200億円増の上方修正としている。

(大河原 克行)