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地上波4K放送に向けた標準規格、ARIBで承認。オブジェクトベース音響やスクランブル対応
2025年4月15日 11:07
地上波による4K放送の実現を目指して、NHK放送技術研究所が中心となって研究開発を進めてきた次世代の地上テレビジョン放送方式(地上放送高度化方式)の標準規格が3月、一般社団法人電波産業会(ARIB)で承認された。
放送方式とは、電波の有効利用を目的として、その技術基準が省令・告示として定められるとともに、その実施に必要となる無線設備の標準的な仕様などがARIBの標準規格として規定されるもの。
地上放送高度化方式は、地上波による4K放送の実現を目指して検討されてきたもので、総務大臣の諮問機関である情報通信審議会での審議を経て、2024年5月に省令・告示が改正されていた。改正を受けて進められたARIBでの各種会合には、NHK放送技術研究所のメンバーが参加し、標準規格の策定に貢献したという。
策定された標準規格は、主に以下の5つの技術分野に分かれている。これらの技術が標準規格として規定されたことで、地上波で4K放送を実現するための基本的な準備が整ったことになる。
- 映像符号化方式
高効率な圧縮性能を有するVVC方式を放送で使用するための技術条件を規定。電波の利用効率が改善するとともにマルチレイヤー符号化技術も規定され、視聴者がレイヤーを選択することで個人の視聴形態に適した映像サービスが可能になる - 音声符号化方式
オブジェクトベース音響に対応したMPEG-H 3D audio方式を放送で使用するための技術条件を規定。オブジェクトベース音響では、視聴者による音声オブジェクト(異なる言語の解説音声など)の切り替えや、音声オブジェクト(解説音声や背景音など)ごとの音量バランスの調節ができるため、個人の視聴形態に適した音声サービスが実現できる - 多重化方式
映像、音声、番組表、アプリなどの番組やサービスを構成する情報を1つのストリームにまとめるとともに、受信機が映像や音声などの情報を適切に提示できるようにするもの。衛星放送とメディアトランスポート方式の共通化を図りつつ、個人の視聴形態に適した番組やサービスの実現に必要な制御情報などを規定 - 限定受信
計算機の性能向上や大規模な量子計算機による将来的な安全性の低下を考慮するとともに、複数の多重化方式に対応できるよう、番組コンテンツの暗号化・復号を行なうスクランブルサブシステムと暗号アルゴリズムを規定 - 無線伝送方式
4K映像を伝送するために伝送容量を増加させるとともに、多様なサービス実現のための信号構造と送信所から無線で送信するための技術を規定