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ソニー、有料音楽ストリーミング強化などでエンタメ事業を拡大へ

 ソニーは、投資家やアナリスト、報道向けにエンターテイメントやエレクトロニクス事業の今後について説明する「Sony IR Day 2014」を開催。18日と25日の2日間に分けて実施し、初日となる18日にはエンタテインメント事業(映画・音楽分野)について説明し、社長 兼 CEOの平井一夫氏も登壇した。

社長 兼 CEOの平井一夫氏

 平井社長は冒頭、9月に発表したモバイル・コミュニケーション(MC)分野における中期計画の見直しにより、2014年度第2四半期において、MC分野の営業権全額の減損約1,800億円を営業損失として計上する事や、7月に発表した2014年度の連結業績見通しを、純損失500億円から2,300億円へと、約1,800億円下方修正した事、長年継続してきた配当を無配とした事などについて、株主へ陳謝。早期の復配を目指している事を説明した。

構造改革をやりきる事の重要性をアピール

 そして、2015年からの3年間に成長フェーズに移行するため、継続的に収益を上げられる企業になるために、問題を先送りせず、PC事業終息、テレビ事業の分社化など、エレクトロニクス事業の徹底的な改革を推進している事を改めてアピール。

 また、MCG分野と「その他」の分野以外の全てのセグメントで収益が改善している事を示し、「私達の変革の成果が現れている。しかし、エレクトロニクスの利益レベルはまだまだ低く、本社も高コストになっている。変革の手を緩めることなく、推進していきたい」とした。

 ソニーモバイルコミュニケーションズの社長人事も説明。11月16日付けで鈴木国正氏が退任し、十時裕樹氏が新代表取締役 兼 CEOに就任しており、「市場や競争環境が大きく変化したモバイル事業において、新経営体制で、収益構造の安定化のための変革を推進していく」とする。

 詳細は25日に十時新社長が説明する予定だが、平井氏は、「市場で確固たる地位を築いているXperia Zシリーズなど、付加価値や差異化が実現できうる製品にエンジニアリソースを集中させ、投入する国毎に最適化もしていく。各地のオペレーターとの関係もより良くし、コストの最適化に取り組んでいく」と今後のMC分野の方針を示す。さらに、MCG分野も含む各事業に対して、市場の環境や状況をしっかり分析し、それを踏まえた事業計画を立てる事をより徹底するよう指示したという。

 MCG分野以外の、デジタルイメージング事業については、付加価値のとれる差異化された商品づくりに注力し、収益性を上げていく。ゲーム&ネットワークサービス分野では、PlayStation 4のインストールベースの拡大と、ユーザー数の拡大、ネットワークサービスの拡充により、売上と収益の拡大を目指す。デバイス分野では、イメージセンサーとバッテリ事業に集中、「積極的な投資も行ない、スマートフォン向けのみならず、車載やウェアラブルなど、新たな用途の開拓にも挑戦する」とした。

ゲーム&ネットワークサービス分野の目標
デバイス分野では、車載やウェアラブル機器への開拓にも挑戦

 長年の課題となっているテレビ事業を含む、ホームエンタテインメント&サウンド分野については、「商品の差異化と徹底したコストコントロールにより、安定した収益体質の確立を目指す」と説明。

 平井社長は、こうした施策を実施し、ソニーグループを高収益企業に変化させた後、「その先にどこへ向かうのかという中長期的な“ソニーの目指す姿”を示す事が、私に求められている事」と語り、今年度中に、新規事業への取り組みについての説明会を開催する予定である事も明らかにした。

音楽ビジネスは、ストリーミングサービスの有料配信への転換がカギ

 平井社長はエンタテインメント事業(映画・音楽分野)の重要性について、「私が社長就任以来、エンタテインメント事業はソニーグループにとって大変重要な事業。ソニーにとってメインはエレクトロニクスで、エンタテインメント事業をあくまで副業のようにとらえる向きもあるが、エンタテインメント事業は18年連続で黒字の、ソニーグループの大きな柱の1つ。半世紀前に音楽事業をはじめ、ソニー・ピクチャーズでは90本以上の全米劇場公開ナンバーワン作品を手掛けている。メディアネットワークは180カ国、10億人のサブスクライバー向けにコンテンツを提供するなど、それぞれの分野でリーディングポジションを築いている」と説明。

 音楽分野の今後については、「ストリーミングサービス市場の成長機会を捉え、これまで蓄積してきた質の高いアーティストマネジメント力を活用し、更なる収益性向上を目指す」とする。

 エンタテインメント事業の詳細については、ソニー・エンタテインメントのマイケル・リントンCEOが説明。映画事業におけるコスト削減や、音楽のストリーミング配信といった市場トレンドへの対応を進めていく事で、2017年度の経営数値目標として、映画分野で売上高100~110億ドル、営業利益率7~8%、音楽分野では売上高48~52億ドル、営業利益率10.5~11.5%を目指す。

ソニー・エンタテインメントのマイケル・リントンCEO
成功を収めたアーティストの一例

 音楽分野では、「ストリーミング配信が盛り上がりをみせているが、パッケージメディアやダウンロード販売の落ち込みを補うほどではない」という。しかし、ファレル・ウィリアムスやフー・ファイターズ、日本では西野カナ、L'Arc~en~Cielなど、今後が期待されるアーティストを列挙。こうした「次世代のスーパースターになる事を予感させる」アーティストを発掘し、プロデュースする確かな能力がある事をアピールし、それがストリーミング配信時代で活きてくると説明。

 「日本ではまだパッケージが主流で、ストリーミング配信はまだ初期段階だが、2016年頃にはマスマーケットにも普及していくだろう。その際に重要な事は、広告を見る事で無料で利用できるストリーミングサービスを利用している人に、いかに有料会員になってもらうかという事。無料配信で、有料配信と同じ売上を実現するためには7倍のストリーミングが必要になるからだ」という。

 一方で、音楽レーベルにとっては、「サプライチェーンのコストがかからず、パッケージ販売よりもコストが抑えられ、良いビジネスになる。音楽や映像のストリーミングの強さを活かし、無料配信から有料配信への転換をしていけば、音楽業界の未来は明るいと考えている。(十年来縮小傾向にある音楽市場が)、次の10年、成長に転じると予測しているアナリストもいる」とした。

映画や映像配信ビジネスではインドに注力

PlayStationの人気ゲーム「アンチャーテッド」シリーズの映画化など、ゲーム分野と協力した作品も今後場するという

 映画事業は、利益率が縮小傾向にあるが、これは「幾つかの映画の不信や、インド市場の低迷、ネットワークの視聴率の問題、為替の問題などで、これらに対して徹底的に対応している」と説明。

 市場動向としては、スマートフォンやタブレットなどのデバイスで映画を楽しむ人が増加、全世界におけるネットワーク環境の拡大などにより、「より多くの人が、ソニー・ピクチャーズのコンテンツに興味を持ってくれる状況になる」と予想。ネットワーク配信がさらに活発化する事で、映画のライセンスビジネスも拡大が見込まれる。

 また、製作会社のTriStar Productionsを発足させ、20世紀フォックスで長年活躍してきたトム・ロスマン氏がそれを率いている事や、配給会社の「TRISTAR STUDIO 8」とも協力、ビジネスのリスクを低減させつつ、コンテンツの魅力を高め、大きな成長に繋げるとする。

 映像コンテンツのネットワーク配信ビジネスでは、新興国の178カ国向けにも展開し、12億人のサブスクライバーにリーチ。特に、テレビ市場が急速に伸びているインド向けに注力しており、インドの農村の人々に向けて、現代を舞台に女性が活躍するドラマ番組を作るなど、各国のユーザー層にマッチするコンテンツの提供にも注力。「ネットワーク配信はまだ若いポートフォリオだが、2018年になればサービス開始6年以上となる。オペレーションのコスト低減も見込める。既存のテレビ放送、ネットワークの双方に投資を行ない、プレミアムコンテンツを投入し、広告収益も増やしていきたい」とした。

(山崎健太郎)