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JVC、木の振動板を採用したハイレゾヘッドフォン。上位機は木のバッフルや響棒採用

 JVCケンウッドは、木の振動板を採用したJVCブランドのヘッドフォン「HA-SW01」(愛称:WOOD 01 ウッド ゼロワン)と「HA-SW02」(WOOD 02)を12月上旬に発売する。ハイレゾ再生に対応。価格はどちらもオープンプライスで、店頭予想価格は「HA-SW01」が70,000円前後、「HA-SW02」が50,000円前後。

「HA-SW01」(WOOD 01)

 どちらのモデルも、新開発の40mm径ハイレゾ対応ウッドドームユニットを採用。「“木”の自然な響きとハイレゾ音源の持つクリアで繊細な音表現に加え、大口径ならではの余裕のあるサウンドを実現たという。9月に発売されたハイレゾ対応ヘッドフォン「SIGNA(シグナ) 01」、「SIGNA 02」と同じ、“上質な価値を提案する”「CLASS-S」シリーズの第2弾製品となる。

「HA-SW02」(WOOD 02)

 「WOOD 01」は、「WOOD 02」をベースにしながら厳選した音響ウッドパーツを投入し、さらなる高音質化を図ったプレミアムモデルと位置づけられている。01のみの特徴として、ウッドバッフル、響棒、整振ウッドプラグなどの音響ウッドパーツを、最適な組み合わせの材質、形状で配置している。さらに、高品質な音響用ハンダも投入、音の濁りを抑制し、音の余韻や奥行きまで繊細に表現するという。

薄型化したウッドドーム振動板

 どちらのモデルも、最大の特徴はウッドドーム振動板を採用している事。振動板を木で作成する挑戦は30年前からスタートしており、伝搬速度が速く、素材に異方性があるため定在波が発生しにくいなどの利点があるものの、安定品質が得られず、量産化に向けた研究を継続。2004年に量産を実現し、ウッドコーンスピーカーが発売された。

「HA-SW01」(WOOD 01)
「HA-SW02」(WOOD 02)

 メディア事業統括部 AVC統括部 AVC技術部の北岩公彦氏によれば、実はその後、2005〜2006年頃、ウッドドームのヘッドフォンを試作していたとう。しかし、木の振動板の厚さが100μm以上あり、重く駆動しにくかったため、ヘッドフォンの性能・音質面での目標を達成できず、一度開発は中止された。

 その後、匠の技で加工する事で、薄さ80μmのウッドシート開発に成功。2007年の「HA-FX500」など、ウッドドームユニットを採用したイヤフォンが製品化された。

薄さ50μmのカバ材シート

 この技術により、ヘッドフォンの開発計画も再開された。しかし、例えばウッドドームイヤフォン「HA-FX1100」に搭載されている11mm径のユニットと比べ、ヘッドフォンで使う40mm径ユニットは約11倍の面積がある。この大きさでは、80μmで作っても、音圧や高域特性が低下し、性能が出せなかった。

 そこでさらなる軽量化のため、薄さ50μmのカバ材シートの開発に着手。カバ材の選定、薄く加工する刃物の選定、刃物を送るスピードの調整、削る際の木材の濡らし方など、生産プロセスを徹底的に見直し、80μmから50μmへと40%近い薄型化に成功。新聞に重ねると、裏側の文字が透けて見えるほどの薄さ。「PETで振動板を作った際と、同じくらいの重さを実現した」(北岩氏)という。

メディア事業統括部 AVC統括部 AVC技術部の北岩公彦氏
2005〜2006年頃に試作されたウッドドームのヘッドフォン
薄さ50μmを実現した新モデルのウッドドームユニット

 ウッドドームの周囲、サスペンションの部分は剛性の高いPENを仕様。こちらも薄さを16μmとし、軽量化。こうした結果、振動板全体の質量を30%低減した。

 磁気回路には、1テスラを超える磁束密度を実現した新開発「ハイエナジー磁気回路」を採用。リニアリティを大幅に高めた独自形状の磁気回路プレートや、ボイスコイルの動きが前方と後方で均一に近づくよう形状や配置をチューニングする事で、ウッドドーム振動板の忠実な駆動が可能という。

 振動板の後方には、リング状に加工したウッドプレートを配置。ユニット内の反射音を吸収、拡散し、高分解能を実現するという。振動板の前方には、真鍮製ブラスリングも装填。ABS樹脂のイヤーダイレクトバッフル、高強度ポリアミド樹脂のユニットホルダなど、異種素材を組み合わせて音をチューニングしている。

「HA-SW01」(WOOD 01)の内部構造
「HA-SW01」(WOOD 01)

 ハウジングは、薄さ1mmの無垢材を数十層重ねて一体化したもので、強固であり、水分や湿度による特性変化が少ないのが特徴。吸音材やダンパー類も効果的に配置し、制動感と余韻感のバランスを追求している。ハウジングはスイーベルする。

 さらに、耳の角度に合わせてバッフルを傾斜。ロスなく音を伝える「イヤーダイレクトバッフル」としている。ユニット前面のメッシュ素材や開口率にもこだわっており、「ハイレゾ音源のポテンシャルを余すことなく引き出す」というコンフォータブルタイプイヤーパッドを採用した。

ハウジングはスイーベルする
ヘッドフォン側の端子は3極のステレオミニ
プレーヤー側の入力プラグも3極のステレオミニ。端子の直前までグランド分離されているという

 ケーブルは着脱可能で1.2m、布巻きでからみにくくしている。ヘッドフォン側は3極のステレオミニ、プレーヤー側も3極のステレオミニ。チャンネルセパレーションを向上させるため、L/Rのグランド分離接続にも対応している。ただし、グランドが分離しているのはヘッドフォンからケーブルまでで、ケーブルの入力端子において、左右のグランドが合わさり、プレーヤーと接続される。

「HA-SW02」(WOOD 02)
左がWOOD 02、右がWOOD 01。01の方が若干濃い目のカラーになっている

 入力端子が4極のステレオミニなどになり、対応プレーヤーやアンプとグランド分離接続、もしくはバランス駆動するためのケーブルをJVCブランドで発売する予定は今のところ未定だという。

 主な仕様は2モデルで共通。出力音圧レベルは105dB/1mW、再生周波数帯域は8Hz〜45kHz。インピーダンスは56Ω。最大許容入力は1,500mW。重量は01が約330g、02が約320g。

音を聴いてみる

 ウッドコーンユニットのスピーカーは、振動板の剛性の高さを活かしたシャープでハイスピードなサウンドを奏でるイメージがある。そんなサウンドを想像しながら「WOOD 01」を装着。ポータブルハイレゾプレーヤーの「AK380」でドライブして試聴した。

 一聴してわかるのは、色付けの少ないワイドでクリアなサウンドになっている事。低域の沈み込みは深く、高域の抜けも良好。付帯音は少なく、モニターライクなサウンドだ。響きも良くコントロールされており、ゆったりとした質感や余韻が適度にありつつ、それが残りすぎてヴォーカルや楽器の音像を不明瞭にはしていない。

 01にはウッドバッフル、響棒、整振ウッドプラグなどの音響ウッドパーツ投入してチューニングが行なわれたというが、その効果が発揮されているようだ。

 個人的に意外だったのは、シャープでハイスピードな“木製振動板らしさ”が強く強調されておらず、極めて自然な音になっている事だ。振動板の剛性が高い事は音を聴くとわかるが、“硬い木の板が鳴っているなぁ”という、“音の硬さ”は感じない。50μmに薄型化した事も関係しているのかもしれない。

 WOOD 02に変更すると、響きの成分が増え、音に硬さが出てくる。悪い意味ではなく、個人的なイメージの“ウッドドームらしい音”はこちらのモデルだ。明瞭でハキハキしたサウンドで、響きも多めなので迫力がある。01と02で明らかに個性と方向性が異なる音作りだ。音像の数が多い音楽を、ボリュームを上げ目で再生すると、響きも増えるため、ややゴチャとした印象になる。アコースティックでシンプルな楽曲がマッチするヘッドフォンかもしれない。

プロモーションビデオには家入レオを起用

 メディア事業統括部 AVC統括部 AVCマーケティング部の安富稔氏は、ヘッドバンドタイプのヘッドフォンが、ハイレゾ効果などもあり、今後も数量・金額ともに成長していく試乗だと予測。特に1万円以上の高付加価値モデルが引き続き伸長するとした上で、「そこにしっかりと対応していくモデル」とし、WOOD 01と02を紹介した。

 新イメージ戦略として展開している「CLASS-S」シリーズの第2弾製品。安富氏はターゲットユーザーとして、音楽が日常の欠かせないものになっており、なおかつ本質を追求する人々に、「情景が目に浮かぶようなサウンドを提供したい」というのがコンセプト。

 SIGNAはどちらかというとハイレゾ入門層に向けたもので、今回のWOODシリーズは大口径ユニットならではの臨場感、木の素材の魅力を最大限に引き出していることから、主にマニア層に向けたモデルとして展開。今後もCLASS-Sシリーズとして、様々な製品が予定されているという。

メディア事業統括部 AVC統括部 AVCマーケティング部の安富稔氏
ヘッドフォン各シリーズの位置づけ
「CLASS-S」シリーズは今後もラインナップを増加させていく
発表会はビクタースタジオで開催。秋元秀之ビクタースタジオ長は、録音現場において、コントロールルームではモニタースピーカーが使われるが、レコーディングエリアではヘッドフォンがメインである事、スタジオではハイレゾ収録が当たり前である事、音楽が生まれる場所でもある事などを踏まえ、ハイレゾヘッドフォンの発表にふさわしい場所であると説明した

 CLASS-Sシリーズのプロモーションビデオにはビクターエンタテインメント所属のアーティスト・家入レオさんを起用。家入さんは発表会にも登場し、「目を閉じるだけで情景が思い浮かぶようなサウンドをお届けしたいと思っておりますので、そのお手伝いができてとても嬉しい」とコメント。

家入レオさんもゲストとして登場

 WOODシリーズのサウンドについては、「一度使うと、他のヘッドフォンが使えなくなるくらい上質なサウンド。装着感も良くて、何十時間でも聴いていられるような安心感がある」という。同時に、「ブレスの音も全部聴こえてしまうので、アーティスト泣かせともいえます(笑)。今まで聴いていたイヤフォン/ヘッドフォンと比べると、同じ曲なのに、まったく新しい世界観が生まれる。音楽の幅がグッと広がると思う」と気に入った様子だった。

 新プロモーションビデオの冒頭では、今年のヒットシングル「君がくれた夏」をアカペラで歌い、「CLASS-Sの目指す “情景が目に浮かぶサウンドライフ”を表現して、本物のアーティストが本物のレコーディングスタジオから登場するストーリー」になっているという。

 音声はバイノーラル録音しており、ヘッドフォンで臨場感のある再生ができるという。スペシャルサイトでは、「WOOD」の発売を記念して、家入レオのサイン入りポスタープレゼントキャンペーンも実施予定。プロモーションビデオは渋谷駅ハチ公口、スクランブル交差点脇の「シブハチヒットビジョン」など、各地の屋外ビジョンでも放映。詳細スケジュールはJVCのページに記載されている。

JVCヘッドホン|「家入レオ」Class-S 2ndプロモーションビデオ WOOD編|JVC

(山崎健太郎)