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V-Low放送「i-dio」が3月から東京/大阪/福岡で“プレ放送”。5月にIPサイマル配信も

 地上アナログテレビ放送終了後のVHF-Low帯で行なわれる「V-Lowマルチメディア放送」が、'16年3月に東京、大阪、福岡で“プレ放送”という形でスタートする。コミュニケーションネームは「i-dio(アイディオ)」。それに先立ち、放送の詳細を紹介する発表会が2月29日にTOKYO FMにて開催された。ラジオと同様に無料で聴取できるサービスとなる。

i-dioの市販第1号受信機として昨年12月から販売されているSIMフリースマートフォン「i-dio Phone」

 発表会を開催したのは、i-dio事業全般を推進する、FM東京が中心となって設立したホールディング会社のBIC。さらに、基幹放送局提供事業者(ハード事業者)となるVIP、関東甲信越広域圏の移動受信用地上基幹放送曲(ソフト事業者)の東京マルチメディア放送。

 V-Lowマルチメディア放送は、地上アナログテレビ放送終了後に空いたVHF-Low帯(99MHz〜108MHz)を使ったマルチメディア放送。音声だけでなく、映像やデータ放送も活用するのが特徴。従来の、放送コンテンツを通信の伝送路で配信するものとは反対に、通信に流れる映像や音声などを含むあらゆるデータを、放送波を使ってブロードキャストする「IPDC(IPデータキャスト)」技術を活用。チューナを内蔵した機器が、リアルタイムで、輻輳(ふくそう)が無く、プッシュで誰でも情報を享受できることなどを目指している。

i-dioのロゴマーク

 こうした特徴を活かし、例えば48kHz/320kbpsのAACで高音質に音楽を放送するチャンネルを用意。2017年にはHDS(High Definition Sound)として96kHz/24bitの放送も予定されている。

 さらにリルタイム動画、電子チラシ、電子クーポンなども配信可能。リアルタイム放送の合間にTTS(Text TO Speech:自動音声読み上げ)を割り込ませたり、受信デバイス内のデータ更新をi-dioの放送波で行なうことなどもできる。

 一方で、災害発生時や大規模イベント開催時など、多くの利用者が集中する時間や場所でも、通信のようにアクセス集中による回線混雑が発生せず、必要な人に必要な情報を届けられる放送の利点も内包。

 i-dioを活用した防災情報システム「V-Alert」も用意し、自治体から地域住民に向けた避難情報を音声やデータで指定したエリアだけに配信する事もできる。例えば「海沿いの家に津波の危険性を知らせる」、「山沿いの家に土砂崩れを警告する」といった事も可能。緊急時は放送局の編成権が一時的に制限され、CMなどの合間でも割り込んで防災・安全情報を放送。自治体からの情報を放送局が一切加工しないで流すなどの契約になっているという。

「V-Alert」で自治体がi-dioで防災情報を放送する際の流れ

 '16年3月の東京・大阪、福岡でのサービス開始以降のエリア拡大予定は、'16年度に名古屋・静岡・浜松・広島・播磨・仙台・会津若松・福島・神奈川西部・前橋・宇都宮・長崎・大分・熊本、 2018年度に札幌と九州・沖縄ブロック6極、2019年度に全国エリアに拡大。'19年度には世帯カバー率78.3%を目指している。

受信方法

 i-dioの市販第1号受信機として昨年12月から販売しているのが、 SIMフリースマートフォン「i-dio Phone」(開発元:コヴィア/VIP)。スマホにi-dioのチューナを内蔵しており、アプリから聴取できる。

「i-dio Phone」で、動画をメインとした「Creator's Channel」を受信しているところ

 さらに、i-dioの放送波をWi-Fiに変換することで、従来のスマートフォンでi-dioを受信できるようにする「Wi-Fiチューナー」も開発。第1期無料モニターとして、合計5万人に配布予定で、2月29日まで応募受付を実施。さらに、第2期無料モニターとして、さらに5万台を配布。10万人に向けたモニターを実施する。

従来のスマートフォンでi-dioを受信できるようにする「Wi-Fiチューナー」

 上記2モデルで利用するチューナアプリ「i-dioアプリ」は、29日にAndroid版がリリースされた。iOS版もまもなくリリース予定だという。このアプリだけでなく、今後、コンテンツプロバイダ各社から、各社の放送サービスをより便利に利用できる独自受信アプリが発表予定。

 今後の予定としては、自動車内でサービスを利用できるようにする車載Tuner Box(仮称)を今年の4月に発売予定。夏の高温など、激しい車内環境に対応できるチューナで、フロントガラスにフィルムアンテナを貼って、安定した受信ができるという。

 さらに、前述の防災システム「V-Alert」を導入する自治体向けに、加賀ハイテックが開発した、V-Lowマルチメディア放送とFM放送が両方受信できる防災ラジオ「MeoSound VL1」も用意。自治体が防災情報を届けたい家庭に向けて配布する形で提供が開始されている。この防災ラジオは、電源がOFFになっていてもV-Alertを受け取ると自動で起動し、防災情報を流す事ができる。

防災ラジオ「MeoSound VL1」

 また、オーディオ機器やカーナビなどの機器でのi-dio受信を可能にするため、i-dioのチューナなどを搭載したモジュールの開発も実施。そのモジュールを、家電メーカーなどへ提供する事も検討されている。

5月からIPサイマル配信もスタート

 現在、ラジオ放送のIPサイマル配信をradiko.jpが行なっているが、それと似たサービスとして、i-dioの放送を5月からIPサイマル配信する予定。スマートフォン/タブレット向けに、IPサイマル配信を受信するアプリを提供予定だという。

 このIPサイマル配信では、i-dioが放送する音声や映像などのデータをそのまま配信するのが特徴。48kHz/320kbps/AACや、96kHz/24bitの高音質放送もIPサイマルで楽しめるという。

どのような放送が行なわれるのか

 3月1日からスタートするのは、音声チャンネル「i-dio Selection」3チャンネルと、動画をメインとした「Creator's Channel」1チャンネル、さらに高音質な音楽を特徴とする「TS ONE」、車内でのリスニングに適した放送やサービスを提供する「Amanekチャンネル」。合計で音声5チャンネル、映像1チャンネルでのスタートとなる。

3月から音声5チャンネル、映像1チャンネルでスタート

 この内、「i-dio Selection」と「Creator's Channel」はソフト事業者であるマルチメディア放送自身が実施。「TS ONE」はTOKYO SMARTCASTが、「Amanekチャンネル」はアマネク・テレマティクスデザインがコンテンツプロバイダとして参入して放送する。マルチメディア放送はi-dioのプラットフォームをこの2社に提供し、2社は利用料を支払って放送を行なう関係となる。

今後の展開予定

 i-dioは3月から5月までを「第1期:認知獲得期」と位置づけ、i-dioがどのような特徴を持っているか、進化する放送への期待感の醸成などを行なう予定。6月からを「第2期:コンテンツ訴求期」と位置づけ、前述の「TS ONE」が独自の聴取アプリを6月1日にスタートして本格的に開局する事、7月1日にAmanekチャンネルがアプリをリリースし本格開局する事を受け、3月の時点ではプレ放送、第2期を「i-dioの本開局」と位置づけている。

 さらに、10月から11月を第3期と設定。新たなコンテンツプロバイダの開発・検証が順次完了し、サービスインを行なうなど、本格的な普及拡大時期と位置づけている。

 音声放送の「i-dio Selection」は、JAZZ/クラシック/マスターピースという3つのチャンネルで構成。それぞれ24時間ノンストップで、セレクトされた音楽を放送する。

 動画をメインとした「Creator's Channel」では、「秘密結社 鷹の爪 DO」や、美容・フード・ファッション情報を届ける動画マガジン「MINE TV presents キレイをつくるビューティーチャンネル」、声優やアイドル、ゲーム実況者が日本のレトロゲームに挑戦する「NC2Lab presents ひよこ GAMES」を放送する。

 音楽をメインとする音声チャンネルの「TS ONE」では、一級のレコメンダーによる音楽番組などを中心に提供。小林克也、JAZZギタリストの小沼ようすけ、岡村靖幸などのDJやアーティストが担当する番組を編成。中には、レーザー光線でアナログレコードを読み取り、再生するエルプ社のレーザーターンテーブルを使い、音楽ライターの金澤寿和と、エルプの竹内孝幸が様々なアナログ・レコードを紹介する番組なども含まれている。

TS ONEの番組紹介

 「SOUND SCAPE」という番組は、国内外の自然音と音楽をコラージュしたもので、番組は96kHz/24bitで作成。3月の放送開始時は48kHz/16bit/320kbps/AACで提供するが、96kHz/24bitの高音質放送がスタートした際は、より高音質で楽しめるという。

アナログ音声出力で外部コンポと接続し、高音質をアピールするデモも

 音楽番組を流すだけでなく、聴取アプリでは流れている音楽の情報や、Amazonで購入するためのリンクなどを表示。番組を楽しみながら、楽曲を手軽に購入できるようにする。さらに、音楽やアーティストにまつわるエピソードを文字で提供、それをWebマガジンとして「TS ONE」の公式サイトに用意し、放送が終わった後でも読み物として楽しめるようにするという。

 さらに、プレゼント企画への応募、クーポン広告の提供など、アプリや写真、文字を活用した様々なサービスが予定されている。

音楽やアーティストにまつわるエピソードを文字で提供、それをWebマガジンとして「TS ONE」の公式サイトに用意し、放送が終わった後でも読み物として楽しめるようにする

 「Amanekチャンネル」は、日本初のモビリティ向け専用ラジオチャンネルとしてスタートする。車メーカーのホンダで、テレマティクスサービスを牽引してきた今井武氏がChief Executive Officerを務めるアマネク・テレマティクスデザインによる放送で、車の中で聴く事に最適化されている。

 番組内では、アナウンサーが音楽などをかけるが、スタジオに気象情報、道路情報、Twitterのハッシュタグで集められた情報を常時表示。それを見ながら、アナウンサーが、ドライバーに有益な情報を随時提供していくという。

 さらに、受信している車の位置情報も活用。リスナーがいる場所に局地的な豪雨の予報があったり、近くのガソリンスタンドで使える割引クーポンがあるなどした場合、自動読み上げ音声を使って、それらの情報を提供。ドライバー個別に、きめ細やかな情報の提供ができるとする。

車載用チューナは4月の発売を予定。よりAmanekチャンネルを活用できるアプリも開発されている
ドライバーの位置に合わせ、最適な天気や交通情報、サービス情報を提供する

 選曲する音楽も、“車に乗っている人向け”を意識したものになっているほか、気に入った音楽が流れていた場合に、スマホやナビの画面にタッチするだけで、その情報をクリップメモして、車から降りてチェックしたり、手軽に音楽購入サイトへジャンプできるリンクを表示するといった、ドライバに対してストレスフリーな放送になるとしている。

運転中に気に入った曲を気軽にメモ。車から降りた後で、購入できる

 また、技術的にはカーナビの地図データの差分書き換え用データをi-dioの放送で提供したり、IoT機器の制御データをi-dioで一斉同報する事なども可能という。

「自治体の3分の1程度が採用してくれるのではないか」

東京マルチメディア放送の籐勝之社長

 東京マルチメディア放送の籐勝之社長は、i-dioの魅力を「“進化する”放送」と紹介。「ラジオ免許は“音声しか流してはいけない”、テレビ免許は“映像と音声を流さなければいけない”というものだが、i-dioは音声や映像に留まらず、ゼロと1のデジタルデータであれば何を流してもいいよというもの。ネット上にあるデータをなんでも流せるほか、受信アプリをバージョンアップする事で、今までのラジオやテレビと違い、機能追加ができる。さらに、受信アプリのバージョンアップをi-dioの放送で行なう事もできる。モニターやユーザーのニーズを取り入れ、サービスのラインナップを増やしていく事ができる」と説明。

 さらに、ビジネスモデルとしては、「従来のラジオ局のコスト部分を分解したような形になる。我々東京マルチメディア放送はプラットフォームをコンテンツプロバイダ(CP)に提供する形だが、役割としては放送局の技術部のようなもの。設備投資の費用や電波利用料などをCPに負担してもらう形になる。CPは、音声CMや様々なデータを活かして収益が得られる」と解説。

 また、V-Alertに対応している事から、自治体からのi-dioへの注目度が高い事にも触れ、「自治体が放送を行なう際には、自治体がCPとして費用を負担していただく形になる。また、自治体が対応チューナを配布していただくと、災害時ではない平常時は、そのチューナはi-dioが楽しめるチューナになるため、i-dioのインフラになる。我々としては全国の自治体の3分の1程度が採用してくれるのではないかと想定しており、それらの自治体では基本的に全戸に配布される。そのため、日本の世帯数の3分の1くらいに4年、5年後には普及するくらいのニーズがあると考えている」とした。

(山崎健太郎)