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日本初、車向けi-dioラジオ「Amanekチャンネル」。車載ロボやドローン制御も

 地上アナログテレビ放送終了後のVHF-Low帯において、3月から東京、大阪、福岡で“プレ放送”を開始した「i-dio(アイディオ)」。高音質な放送だけでなく、映像やIPデータも放送できるなど、特徴的なチャンネルが用意されている。その中で、車をメインターゲットとし、ドライバーの現在地に合わせた情報を提供する「Amanekチャンネル」が、サービス内容の説明会を開催した。

Amanekチャンネルの利用イメージ。車載チューナからの放送をスマホで受け、音声をカーオーディオで再生しているところ

 i-dioは、地上アナログテレビ放送終了後に空いたVHF-Low帯(99MHz〜108MHz)を使った「V-Lowマルチメディア放送」のコミュニケーションネーム。通信に流れる映像や音声などを含むあらゆるデータを、放送波を使ってブロードキャストする「IPDC(IPデータキャスト)」技術を活用し、従来のラジオやテレビよりも多様な放送ができるのが特徴。詳細はプレ放送開始前の説明会や、レビュー記事でレポートしている。

 対応チューナは、SIMフリースマートフォン「i-dio Phone」(開発元:コヴィア/VIP)が販売中。i-dioの放送波をWi-Fiに変換することで、従来のスマートフォンでi-dioを受信できるようにする「Wi-Fiチューナー」の第2期無料モニターの受付も4月末締め切りで行なわれている。

 さらに、4月には車載用チューナーボックスも12,800円で発売予定。i-dioの放送波をWi-Fiに変換し、通常のスマホ+アプリで受信。その音声をカーオーディオにBluetoothなどで伝送して楽しむカタチとなる。フロントガラスに取り付けるフィルムアンテナも用意する。アンテナを外し、ロッドアンテナを接続する事で、家の中でも利用できる。

4月に発売予定の車載用チューナーボックス

 '16年3月の東京・大阪、福岡でのサービス開始以降のエリア拡大予定は、'16年度に名古屋・静岡・浜松・広島・播磨・仙台・会津若松・福島・神奈川西部・前橋・宇都宮・長崎・大分・熊本、 2018年度に札幌と九州・沖縄ブロック6極、2019年度に全国エリアに拡大。'19年度には世帯カバー率78.3%を目指している。

日本初のモビリティ向け専用ラジオ「Amanekチャンネル」

 「Amanekチャンネル」は、日本初のモビリティ向け専用ラジオチャンネルとしてプレ放送を開始しており、7月には本放送を開始予定。そのタイミングでさらなる機能強化も予定されている。

Amanekチャンネルのロゴマーク

 また、既存のi-dio受信用アプリとは別に、Amanekチャンネルがより快適に楽しめる受信アプリ「Amanekアプリ」も無償で提供予定で、放送中に気になる情報をスマホ画面をタッチするだけでメモでき、車を降りたらまとめてチェックする機能などを備えている。

下部が「Amanekアプリ」の概要

 Amanekチャンネル最大の特徴は、“車の中で楽しむ放送”に特化している事。通常のラジオのように、番組内ではパーソナリティが音楽をかけるが、その選曲も車の中で聴くのにマッチしたものになっている。

 さらに、放送スタジオ内に「アマネクモニター」を設置。日本地図に雨や風といったリアルタイムの気象情報、道路情報を重ねて表示できるもので、例えば「豪雨になってきたので国道○○号線を走行中のドライバーさんは気をつけてください」、「風が強いので海沿いの○○道路を走っている方はご注意ください」といったように、ドライバーにとって有用な情報を素早く提供。“ドライバーを空から見守れる放送”をテーマとしているという。

Amanekチャンネル、放送スタジオの様子。左の奥にあるモニタが「アマネクモニター」
アマネクモニターで雨の状況をリアルタイムで表示
風の状況を表示したところ
天気予報や観光地の情報なども表示できる

 さらに、i-dioチューナがGPSを内蔵している事を活用。15分に1回、ドライバーが走行している場所の“15分後の気象情報”をTTS(自動音声)で伝えてくれる。例えば「走行中のエリアで15分後にゲリラ豪雨が予想されます」といったように、多人数向けの番組内では提供するのが難しいポイント的な情報を、個々のドライバーに届ける事が可能になる。

 現在の一般的な天気予報は市町村単位だが、このサービスを提供するため、7月に向けて、日本全国を1km単位のメッシュ状に区切り、その1km四方のマスの中の気象情報を取得し、ドライバーに提供していくシステム作りを勧めているという。こうした気象情報に強い放送・サービスを実現できるのは、気象協会の協力があるためで、Amanekチャンネルも池袋サンシャイン60の気象協会内に設置。番組のパーソナリティには気象協会のメンバーも起用されている。

 「アマネクモニター」には観光地の情報も表示でき、それを見ながらパーソナリティが放送を行なったり、Twitterの情報を地図に重ねて表示する事も可能。防災情報をTwitterで募り、それをモニターで確認しながら放送に活かすといった展開も想定されている。

 気象情報だけでなく、観光やサイネージと関連した展開も予定。例えば、番組で紹介した飲食店で使えるクーポン券を放送のデータ配信でスマホに提供する事がi-dioでは可能だが、Amanekチャンネルではガソリンスタンドに近づいたらそのスタンドで使えるクーポンを配信といった、GPS情報を活用した配信の仕方が可能。野外フェスで、その近辺にいる人のチューナにだけ主催者情報を提供したり、地域ごとに内容の異なるチラシデータを提供する事も可能。

 また、今後登場すると思われるi-dioチューナ搭載したカーナビ向けの展開として、放送波を使ってナビの地図更新データを提供するといった研究も進められている。日本全国の地図はデータ量が大きいため、個々のユーザーが頻繁に走る場所の更新データを優先して放送波からダウンロードする事も可能という。現在、ナビ向けの共通地図フォーマットのNDSに対応したシステムが開発されている。

地図データの更新イメージ
緑色のブロックが、更新地図データを受信できた範囲を示している

 将来に向けた研究テーマとしては、車を離れた活用や、Amanekチャンネルをコミュニケーションプラットフォームとして使う事も検討されている。

 「Amanekドローン」は、ドローンにi-dioのチューナを搭載。放送を使って制御コマンドをドローンに送る事で、プロポ無線が届かない範囲でもドローンを制御できるというもの。ドローンの大敵となる風の情報も、Amanek気象予測情報として持っているため、強風予想のエリアを迂回して目的地まで自立飛行させるといった事も可能になるという。

Amanekドローン
風が強い予報のエリアを避けて飛行するなど、放送波で制御を行なう
パートナーロボットのイメージ

 「Amanek車載パートナーロボット」は、Amanekチューナを内蔵し、放送やTTSデータを受信できるロボット。擬人化されたTTSでAmanekチャンネルの情報を読み上げられるという。APIをオープンにする予定で、様々な人のアイデアで育てる“ドライブパートーナーロボット”と位置づけ。ハッカソンなども検討されている。

多彩な広告展開が可能

 アマネク・テレマティクスデザイン ビジネス・ディビジョンの田辺義仁ゼネラル・マネージャーは、Amanekチャンネルが受信できるチューナの普及予想台数として、2020年に1,000万台を超え、1,285万台を目指すと説明。内訳は、カーナビが585万台、その他が700万台と見込んでいる。

アマネク・テレマティクスデザイン ビジネス・ディビジョンの田辺義仁ゼネラル・マネージャー
チューナの普及予測台数

 また、来年にはスマホと連携せずにi-dioの受信ができる市販のカーナビも登場する見込み。順次ディーラーオプションのナビにも採用されていくとする。

 ビジネスモデルとして、Amanekチャンネルにおけるマーケティングについても開設。マスに向けた広告は全国に同じ広告を放送するのではなく、関東甲信越ブロック、近畿ブロックといった、広域ブロック単位でCMを放送する。

 さらに、スマート広告としてすべての音声CMにデータをプラスして放送。CM内容をより詳しく説明したテキストデータや、クーポンなどの画像データ、YouTubeなどの動画CMへのリンクなども付けて放送できるという。

 また、個々のチューナにはID(シリアルナンバー)が付与できるので、狙った属性やターゲットに絞った情報配信も可能。同じ車種、同じファン層に向けたCMを流すといった事も可能だという。

BtoB展開も

 Amanekチャンネルは2セグメントの帯域を割当られており、Amanek番組は1セグメントを使って放送している。残りの1セグメントは、「Amanekコラボレーションチャンネル」として、3つチャンネルに分けて活用していく予定。

 1つは「サードパーティーチャンネル」として、他社のサービスや事業と連携した活用を想定。前述のAmanekドローンなども、このチャンネルを活用するという。

 もう1つは「業務車両用チャンネル」で、輸送トラックやバス、タクシー、レンタカーなどに向け、データ放送を活用した今までにない業務用テレマティクスサービスを提供するという。

 3つ目は「サイネージチャンネル」。カーナビ向けのサイネージ展開は前述の通りだが、車と離れたサイネージ展開にもAmanekチャンネルを活用しようというもの。例えば、公共交通機関のサイネージディスプレイや、街頭に設置されているサイネージディスプレイは、現在ネットワークに接続されているものは少なく、例えば内容を更新する際などは、搭載しているメモリーカードを差し替えるといった手間がかかる。

 これを解消するため、Amanekの放送を受信できるモジュールを開発中。これを搭載したサイネージディスプレイは、放送の受信が可能。新しい表示コンテンツのデータを放送波で多数のサイネージディスプレイに届け、一括して表示を切り替えるといった制御が可能。

デジタルサイネージのイメージ

 特定の範囲にあるサイネージディスプレイだけに情報を表示する事もできるため、例えばデパートの中に設置したディスプレイに、そのデパート内の駐車場出口の混雑状況を表示、「いま車を出して帰ろうとすると、混雑して時間がかかりそうだから、もうすこし買い物をするか」といった判断をユーザーにしてもらう事も可能だという。ただし、屋内や地下鉄などではAmanekの放送が受信できない環境もあるため、実際にサイネージディスプレイを製品化する際は、通信機能にも対応できるハイブリッドタイプを想定しているという。

カーオーディオなどへの内蔵を想定した、i-dio受信用のモジュール。安定した受信を行なうため、2チューナのダイバーシティ方式となっている

i-dio対応のGPS付移動体向け防災デジタルラジオも開発

 GPSを搭載した、移動体向け防災デジタルラジオの開発もスタートしている。アマネク・テレマティクスデザインのジョイントベンチャー企業であるPCIソリューションズがソフトを開発、バイテックシステムエンジニアリングがi-dio対応チューナモジュールを提供、リズム時計工業が開発しているもの。

バッテリ、スピーカー、ライト、GPSも搭載した移動体向け防災デジタルラジオ

 i-dioが受信できる円柱形のデジタルラジオで、FM放送の受信も可能。無指向性スピーカーを内蔵するほか、ライトも装備しており、バッテリ駆動も可能。防災ラジオとして使えるものになっている。

 Amanekチャンネルの音声放送に加え、TTSデータも受信でき、設置した場所の天気情報を自動音声で読み上げ。防災情報配信システムのV-Alertにも対応しており、AC信号で起動。防災情報をリスナーに提供する。

 直径67mm、横幅は220mmで500mlのペットボトル程度のサイズ。車の中にあるドリンクホルダなどに気軽に挿入でき、車内でAmanekチャンネルが楽しめるという。スマートフォンに放送を転送したり、ディスプレイに映像/静止画データを表示する機能は無い。

「伝える」のではなく「伝わる」ことが大切

 アマネク・テレマティクスデザインの今井武CEOは、ホンダ技研工業で「インターナビ」を立ち上げるなど、テレマティクスの開発に長年携わり、2014年に任期を満了。新たにアマネク・テレマティクスデザインを創設した。

今井武CEO

 Amanekチャンネルをスタートさせた想いとして、今井CEOは5年前の東日本大震災を振り返る。「当時、(対応した車に通信経由で情報を提供する)インターナビで津波の情報を配信した。しかし、大地震の影響で通信網が破壊され、その情報は誰にも伝わっていなかった。震災では14万台の車が流された。あの時、大地震が起きたら通信は使えなくなる、放送を使ってやるべきだと痛感した」と語る。

 その上で、「この経験を“たられば”で終わらせてはいけない。情報は“伝える”のではなく“伝わる”ことが大切」としたメッセージ映像を上映。「7,500万台の自動車と、全てのモビリティに向けて、安全で快適で、楽しいモビリティ社会を提供したい」と、想いを語った。

情報は“伝える”のではなく“伝わる”ことが大

(山崎健太郎)