「3Dテレビへの普及に挑む」とパナソニック大坪社長

-社名変更後初の株主総会を開催


議長を務めた大坪文雄社長

6月25日開催


 パナソニック株式会社は25日、大阪・城見の大阪城ホールで、第102回定時株主総会を開催した。

 昨年10月1日に、松下電器産業からパナソニックに社名を変更した同社が、パナソニックとして初めて開催する株主総会となった。

 インターネットなどによる議決権行使を含めた出席株主数は、午前10時時点で7万116人、議決権行使個数は1,553万771個(総議決権個数は2,049万8,128個。株主総会の模様は、東京・有明のパナソニックセンターと、名古屋の中継会場にもハイビジョン配信された。

 また、会場への出席株主数は、午前10時時点で2,784人。午前11時時点では3,466人が参加した。大阪城ホールの本会場への参加者は、最終的には3,491人となり、過去最高だった昨年の3,022人を上回った。

会場の大阪城ホールHD配信での中継も行なわれた

■「3Dテレビの普及に取り組んでいく」

2008年度業績

 議長を務めた大坪文雄社長は、「世界的な金融危機に端を発し、世界規模での急速な需要の減少や急激な円高が進行するなど、経営環境は大きく悪化した。この難局を乗り切るのが経営と認識して取り組んできたが、遺憾ながら3,826億円の税引き前損失を計上した。経営を預かるものとして反省している。申し訳ない」と株主に謝った。

 2008年度の事業報告については、ビデオで紹介。対処すべき課題については、大坪社長自らが行なった。

 「2009年度は、昨年度以上の厳しい経済環境が続くと見込んでいる。世界的な不況と需要縮小、新興国市場の拡大、低価格品への需要シフト、環境への認識の高まりといった市場構造変化が、同時に重なりあって進行する状況であり、経済環境が回復した時点で同じ体質のままでは生き残れないという認識のもと、経営体質の再構築、次なる成長への仕掛けをしっかりと行なう年にしていく。経営環境が当初想定と大幅に乖離するなかで、中期経営計画であるGP3計画の最終年度となるが、計画の方向性は修正せず、引き続き取り組みを推進し、市況回復時には大きく飛躍することを目指す。躊躇せず、妥協せず、スピーディーにやるという姿勢を貫いていく」とした。

 また、「すべての基本は商品力の強化にある。パナソニックらしい商品を追求する。方向性、新事業・新商品での新市場を創造する、既存事業・商品をグローバル展開、ボリュームゾーンの攻略にある」とした。

 構造改革については、「事業の選択と集中、グローバル拠点再編の観点から前倒しで実行、さらに、イタコナ活動の浸透・定着、調達コストダウン、調達コストダウンの推進、コストバスターズ活動の強化、設備投資の抑制/在庫圧縮といったコスト力強化を行なう」とした。

「パナソニックらしい商品を追求」構造改革について

 同社が掲げる「4つの戦略事業」のうちのひとつであるデジタルAV事業については、PDP国内第5工場(尼崎)、IPSアルファテクノロジ姫路工場への大型投資を一部抑制するものの、「薄型、省エネ、動画性能の強みを生かして、競争力のある商品を、積極的に展開し、薄型テレビ事業拡大の基調を堅持し、他社を上回る成長を果たしていく。2009年度は、PDPでは775万台、液晶で775万台を目指す」と語ったほか、「プラズマの特徴を生かすことができる3Dテレビにも取り組む。テレビ、BDレコーダとの組み合わせで家庭への商品提案を行なうのに加え、技術の統一を図るために、映画会社や、他の電機メーカーとの話しあいを進めながら、先頭に立って3Dテレビの普及に取り組んでいく」とした。

薄型テレビ事業について3Dテレビの普及に取り組むという

新興国市場への取り組み

 新興国市場への取り組みについては、「BRICS+ベトナムでは、中間所得層へとターゲットを拡大することで、前年比113%の2桁成長を見込んでいる。さらに、次なる新興国として、MINTs+B(メキシコ、インドネシア、ナイジェリア、トルコ、バルカン諸国)へと対象国を拡大していく。これらの市場に向けてはボリュームゾーンの製品を展開する。そのためには、イタコナ活動などを徹底し、設計・生産思想を根本から変えることが不可欠。勝てる原価を実現する」との方針を示した。

 また、三洋電機との資本・業務提携については、「各国の競争法当局の審査を経て、公開買い付けで取得する方向で進めている。現在、公開買い付け完了後に緊密な協業関係を構築すべく、コラボレーション委員会を設置し、競争法に十分配慮しながら、幅広いテーマで検討する。なかでもエナジー事業は極めて成長のポテンシャルが高い事業分野であり、5つめの戦略事業と位置づけ、今後の成長を担う柱となる事業に厚みを増していく」と説明した。


■ 「2010年度以降に他社以上に大きく成長する」

 質疑応答では、7人の株主が質問した。

 経営責任に対する質問に対しては、大坪社長が回答。「2010年度以降に他社以上に大きく成長する、大きく回復することで、株主の期待に応える。また、構造改革や投資についても、新たな発展のための投資であり、ひとつひとつについて過剰投資であるとは考えていない」とした。

 世界戦略については、大月均専務取締役が回答し、「海外事業は最先端技術を搭載し、富裕層をターゲットとするV商品、ネクストリッチ層をターゲットとするEM-WIN商品がある。BRICS+Vでは、102%増の4,200億円の売上高となった。2桁成長は遂げられなかったが、業界全体では94%の実績であり、当社は5か国におけるシェアを伸ばしたといえる。今年度は2桁成長の113%を目標とする。また次の新興国としてMINTs+Bを目指す。すべての新興国を対象にするには効率が悪い。ターゲットを絞り込んでいる」とした。

 次世代エネルギーへの取り組みについては、大坪社長が回答した。「パナソニックには、いまのところ、太陽光発電の生産能力はないため、パナホームは他社から購入している。しかし、TOBが完了すれば、三洋電機をグループ化でき、パナホームには、パナソニックグループから太陽光発電パネルが供給されることになる。パナソニックは、燃料電池は東京ガスと協業し、今年5月から本格的にスタートしたところである。今後は、家庭において、自らエネルギーを創ることが極めて重要になってくる。我々には大きなビジネスチャンスがある。三洋電機の子会社化によって、太陽電池、燃料電池によって、ハイブリッド化し、家まるごとの提案を行なえることになる」とした。

 なお、「定款一部変更」、「取締役19人選任」の決議事項については可決。株主総会は、午前11時32分に閉会した。

新たな戦略事業エナジー事業への取り組み

(2009年 6月 25日)

[Reported by 大河原克行]