小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第1201回

プロジェクター入門に! 実売3万円切りの「Dangbei N2 mini」を試す
2025年12月10日 08:00
意外になかった「ちゃんとした」エントリーモデル
メディアの接触率では、ネットコンテンツがテレビを抜いてもう久しいわけだが、そのネットコンテンツを何で見るかにも多様化が進んでいる。
一番手軽なスマホはOLED搭載モデルが増え、HDR対応になったが、いかんせん画面は小さい。一方スマートテレビは輝度も解像度も十分だが、テレビが見たい家族と取り合いになる。よって自分だけが独占できるプライベートな大画面として、若い人を中心にプロジェクタが注目されている。
とはいえ、エントリーモデルはどれかというのも、悩ましいところだ。当然コスパが視野に入ってくるわけだが、低価格モデルは可搬性を重視していて、キャンプ場などには持っていけるが、部屋内に固定・常設という感じでもなかった。案外ちゃんとしたエントリーモデルというのが空席だったわけだ。
そんなところに目を付けた……のかはわからないが、各社コスパを意識したエントリーモデルに力を入れ始めている。とにかく最初の一歩を踏み出してほしいというわけだ。
そんな中、Dangbeiが今年4月に発売を開始した「N2 mini」が、じわじわと売れてきているようだ。発売当初の公式サイト価格は39,900円だったが、現在は27,540円に値下げされている。ブラックフライデーは終わったがセールは続いているようで、執筆時点では楽天とAmazonでは23,991円で売られているようだ。
多くの選者から「コスパ最高」と評されたN2 miniの実力を、じっくり試してみよう。
優れたバランス感覚が魅力
Dangbeiは以前からエントリーモデルに力を入れているメーカーで、2023年の「Emotn N1」は500ルーメンを確保しながら71,999円という価格で、よく売れた製品だ。
2024年1月には薄型の「Dagbei Atom」をリリースしたが、価格は134,800円と若干高かった。およそ半年後の6月にリリースした「Dangbei N2」は専用スタンドが付属しており、単体でもスタンドに取り付けてもいいというモデルで、公式ストア価格54,720円である。
今回のN2 miniは、N2の直系ということになるのだろう。なおEmotnブランドは今後Dagbeiブランドに統合されることになっている。よってN1、N2、N2 miniという流れでエントリーモデルが続いているということになる。
N2 miniのポイントだが、N2では付属品扱いであったスタンドを一体型にしている。さらに電源はこの脚部に接続することで、プロジェクタ部を上下に大きく振ってもケーブルが邪魔にならない。さらにACアダプタではなくメガネケーブル直挿しとなったことで、配線をすっきりさせている。
なお本体の振り幅は、190度となっている。上へは90度以上向くので、天井への投影も安定している。下方向にも90度以上向くのだが、真下に照射するニーズはあんまりないと思われる。
ボディはグレーの樹脂製だが、全体的に脚部ありきのデザインで綺麗にまとまっており、前面はお面をつけたような、ちょっと浮き上がった感じになっている。
光源はLEDで、ディスプレイは透過型LCD方式。よって明るさは200 ISOルーメンと、今どきのプロジェクタとしてはやや暗めだ。このあたりでコストを下げているのだろう。解像度はフルHD。なお光学エンジンは密閉型となっており、高い防塵性能のほか、静音動作、30%寿命向上となっている。
スピーカーは6Wで、Dolby AudioやDolby Digital、Dolby Digital Plusに対応するが、モノラルスピーカーだ。背面上部に、後ろ向きにつけられている。
端子類は背面で、HDMI、USB-A入力、3.5mmステレオミニオーディオ出力がある。またBluetooth5.2対応なので、ヘッドフォンやイヤフォンも接続できる。
OSはLinuxで、Netflix、Amazon PrimeVideo、YouTube公式認定となっている。
リモコンも見ておこう。中央部に十字キーを備えた標準的な設計だが、Google系OSではないのでボタン配置は割と自由だ。十字キー上の3本ラインが設定へのショートカットボタン、その両脇のFボタンはフォーカスの微調整となっている。
十字キー下は、左右にボリュームボタンを備え、真ん中が「戻る」ボタンになっている。多くのリモコンは戻るボタンが左下にあるものが多いので、他のリモコンに慣れている人はちょっと戸惑うところだ。
メディアショートカットは、Netflix、YouTube、PrimeVideo、Open Browserとなっている。ブラウザにショートカットを割り当てるのは珍しい。
補正機能は上位モデルと同じ
大型プロジェクタは大抵据え置きなので、毎回フォーカスや台形補正などをやる必要はない。一方小型プロジェクタでは、使わない時は片付けておき、必要な時だけ出してくるので、毎回微妙に位置が変わる。よって重要なのは、いかにテンポラリ的な設置に対して自動で快適なセッティングにできるか、である。
その点N2 miniは、正面にあるセンサーを使って投影状態を把握し、AIを使って自動セットアップを行う。オートフォーカス、自動台形補正はもちろん、障害物があれば避けて投影するなどの機能を持っている。またスクリーンが小さければ、それに合わせて投影面積を変更するといった機能もある。これらは上位モデルに搭載されている機能と同じだ。
電源を入れればそれらのセットアップが自動的に行なわれる。設定機能は全体的にシンプルで、難しい機能はない。プロジェクタとしては一般的なものばかりなので、初心者でもわかりやすいはずだ。昨今のプロジェクタは、フレームを補間してヌルヌルに動かす機能を搭載しているが、本機にはそのような機能はない。
最大スクリーンサイズは120インチとなっているが、このサイズにするにはスクリーンから3.37m離れる必要がある。スクリーンとサイズの関係は以下のようになっている。
| スクリーンサイズ | 距離 |
| 60インチ | 1.7m |
| 80インチ | 2.22m |
| 100インチ | 2.78m |
| 120インチ | 3.37m |
だが輝度が200 ISOルーメンしかないので、120インチで投影するとかなり輝度が低くなる。近づければ輝度は上がるので、可能ならなるべくスクリーンに近づけた方がいいだろう。
今回のテストでは距離約2.5m、サイズ90インチ弱で投影しているが、昼間ではカーテンを閉めて遮光したぐらいではそれほど見やすくはならない。夕方陽が陰って以降であればそこそこ実用範囲である。もっとも多くの人がコンテンツを楽しむのは夜だと思われるので、明かりを消してしまえば実用上問題ない。
映像と音声の調整は、ホーム画面から設定へ進む必要はなく、リモコンの設定ボタンを押せば、右サイドに専用メニューが現れる。視聴中のコンテンツを止めずに調整項目に入れるので、モード変更の結果も確認しやすい。
映像は「標準」、「高輝度」、「鮮やか」、「スポーツ」、「シネマ」、「カスタム」の6モードがある。「カスタム」は輝度やコントラスト比などを自由に設定できる。ある意味「高輝度」よりも輝度を上げることはできるが、上げすぎると黒浮きしてくるので、概ね70ぐらいが限度だろう。
オーディオは「標準」、「鮮やか」、「スポーツ」、「映画」、「音楽」、「ニュース」、「カスタム」の7モードが選択できる。「カスタム」ではベース、高音の値が設定できる。「ダイヤログ強化」はモードに関わりなく独立して設定できる。
今回はNetflixで公開中の「トロール2」を視聴した。前作はやはり何かのプロジェクタのレビューで視聴してなかなか面白かったのだが、まさか続編が作られるとは思っていなかったので、嬉しい誤算である。
全体的に夜のシーンが多い(トロールは夜しか活動しない)ため、輝度の不足感はそれほど感じなかったが、それでもプロジェクタ自体がHDR対応ではないので、もう少しコントラストがあったらなとは思う。ただ解像度などは十分で、多くのコンテンツは問題なく楽しめるだろう。
スピーカーは背面についているが、前面から聞いてもそれほど遠い感じはない。見たところスピーカー径は4~5cm程度しかないが、それにしてはかなり奮闘している。サウンドモードは「スポーツ」や「映画」は音声と高域の通りを重視しているが、「音楽」は低音の出もなかなか頑張っている。
総論
エントリーモデルというと小型モデルを思い浮かべる方も多いと思うが、本機はそれほど小さいわけではない。小さくすることにコストをかけないという方向の製品だと言える。
自動補正機能は上位モデルと同じなので、使い勝手は良好だ。コストダウンの影響があるとすれば、やはり輝度だろう。LED光源やLCDディスプレイは、プロジェクション方式としては若干前時代なので、昼間でも使えるような輝度は期待できない。
重量的には1.72kgなので、ちょっと重たい一眼カメラ程度である。スタンド底部には三脚穴があるので、耐荷重2kg程度の三脚があれば装着できる。上下角と合わせて高さや位置が自由になれば、かなりいろんな場所に投影できる。
せっかく仰角が90度以上あるので、天井へ向かって投影するのもいいだろう。ベットの上で布団に潜り込みながら、大画面でコンテンツが楽しめるのは、この冬にぴったりの楽しみ方である。
実質3万円以下で買えるプロジェクタながら、ここまでのクオリティの製品はあまりない。プロジェクタ入門としてはいい選択だろう。欲をいえば、あちこち持っていけるようにハンドルが欲しかったところだが、デザイン的に邪魔なので付けなかったのかもしれない。

















