クリプトン、USB DACと50Wアンプ内蔵の小型PCスピーカー

-24bit/96kHz対応の「KRIPTY」。49,800円


6月下旬発売

直販価格:49,800円


 クリプトンは、PCオーディオ向けの「HQM」ブランドのスピーカー「KRIPTY」(クリプティ/KS-1HQM)を6月下旬に発売する。直販価格は49,800円。

 PCをメインのオーディオ機器として利用する人が増えているという実態を受け、PC内のデジタル音源を高音質で再生することを追求した、USB-DAC搭載のアクティブスピーカー。電源ケーブルやインシュレータ、スピーカーベースに至るまで、同社が培った高級オーディオの技術が投入され、トータルでチューニングを行なっている。

Tymphany製の6.35cmフルレンジユニットを搭載

 外形寸法86×105×170mm(幅×奥行き×高さ)の小型筐体に、25W×2chの高出力デジタルアンプを搭載。音声入力はUSB(タイプB)と光デジタル、アナログ音声(ステレオミニ)を各1系統装備。デジタル入力は24bit/96kHzまで対応する。

 スピーカーユニットはTymphany(旧Peerless)製の6.35cm径フルレンジユニットを使用。エンクロージャはバスレフ型で、ポートの空気の流れをアンプの冷却にも使用しているという。前面から天面、底面、背面を覆う部分にはアルミを使用。側面は樹脂を使用している。

 付属のスピーカーベースは、木製の筐体に粒状の鉄を敷き詰めたものを使用し、左右合わせて1.6kgもの重さを持つ。スピーカー本体の余分な振動を吸収するほか、設置する机などからの振動とも分離できることから、置き場所を問わず使用できるとしている。また、スピーカーとベースの間にはハイカーボンスチール製のインシュレータを3点支持で配置。インシュレータのサイズは20×5mm(直径×高さ)。スピーカーベースの外形寸法は、100×120×50mm(幅×奥行き×高さ)。

【訂正】
記事初出時、外形寸法とユニットサイズが誤っておりましたので訂正いたしました。(5月28日)


右スピーカーの前面のランプで電源や入力などのステータスを表示右スピーカーの背面端子部。端子の上にバスレフポート電源ケーブル(写真のタップの右下に接続)は、PCスピーカーとは思えない太さ。ACアダプタ(写真右下)を経由してスピーカーにつながっている

付属リモコン

 アンプや入力端子は右側の筐体に内蔵。重量は右側が710g、左側が700g。消費電力は57W。電源ケーブルはOFC線で、同社が単品販売しているものを使用。長さは2m。電源のON/OFF、ボリューム調整、入力切替えが行なえるカード型リモコンが付属する。

 新製品の説明が行なわれた同社スタジオで「KRIPTY」を試聴した。24bit/44.1kHzのFLACを用いた高音質楽曲販売として話題になったビートルズのUSBメモリ「ザ・ビートルズ BOX USB」から「DRIVE MY CAR」を再生。

 まず驚かされるのはそのパワーで、小型の筐体から想像できない迫力に圧倒される。インシュレータとスピーカーベースの強固な支持により、かなりボリュームを上げても筐体が鳴るようなことはない。

 試しにスピーカーベースとインシュレータを外した状態で鳴らしても、ある程度までは持ちこたえるが、どうしても低域の音像がぼやける。ベースとインシュレータを再び付けると、締まりのある低域が確認できた。

 パワーだけでなく、低域から高域までの高い解像感と、フルレンジならではのつながりの良さも実感できる。同社が24bit/96kHzの高音質配信サービスで提供しているウィーンの「モーツァルティステン」による演奏でも、複数の弦楽器がそれぞれの帯域で発する音が丁寧に描き分けられていた。

ずっしりした重さをもつスピーカーベーススピーカーベースを外した状態試聴にも使用した「ザ・ビートルズ BOX USB」


■ PCオーディオ時代の新システム

 製品の開発背景を説明した同社EC事業部の高桜淳一氏は、「iTunesに代表されるPCオーディオ時代の新しいタイプのオーディオシステムとして提案する」としてKRIPTYを紹介。

 高桜氏は、'09年度の「音楽メディアユーザー実態調査」(日本レコード協会)から、普段使っているオーディオ機器として、パソコンを挙げる人が最も多いという点を指摘。この調査では、コンポ/ミニコンポ(48.2%)を上回る、57.7%がパソコンをメインに使っているという結果になっている。

 マーケットとしては、これまで同社は高級スピーカーとHQM STOREの高音質配信を、ハイエンドユーザーをターゲットとして展開してきたが、前述のユーザーの変化を受け、ミニコンポがUSB端子を付けるようになったことにも着目。「機能的には進化したが、音質的には(圧縮音源のため)退化した。しかし、一般ユーザーは音質が悪いままで良いかというと、そうではなく、高音質で聞きたいというニーズはある」との考えを示す。そこで、ミニコンポがターゲットとしていたマーケットに対し、ステップアップとして高音質の製品を提案。新たなマーケットを作っていくという。

 なお、KRIPTYの発売に合わせたプレゼントキャンペーンも実施。購入者先着50名に限り、HQMの配信楽曲から3タイトルを選んで無料ダウンロードできるという。

EC事業部の高桜淳一氏音楽メディアユーザー実態調査(日本レコード協会)の結果の一部HQM配信と新スピーカーで、従来のミニコンポに代わる新たな市場の創出を目指すという


■ 24bit/96kHz配信のHQM STOREに2レーベルが追加

 クリプトンは、スピーカーなどのハードウェア以外に、前述の通り24bit/96kHzの高音質配信サイト「HQM STORE」も展開している。今回のスピーカーとともに、HQM STOREに加わる2つの新レーベルも発表された。配信料金は、1アルバム当たり3,150円。

 1つは、サックス奏者であり、「METAL GEAR SOLID」シリーズなどの作曲を手掛けた日比野則彦氏による「HSTL」(Hibino Sound Therapy Lab)レーベル。日比野氏が主宰する日比野音療研究所の成果である「音源療法」で使用する楽曲の一部を提供。

 この研究所では、可聴範囲外の高周波成分(20~100kHz)の可能性に着目し、どのように収録された場合に心身に良い影響を与えるかを研究しながら、その条件に適合するハイエンド収録機材で“超高音質”の音源制作を行なっている。今回のHQM配信では、高額の投資を必要とした「音源療法」を身近にするものとして期待しているという。

 また、HQM STOREにクラシック楽曲を提供しているカメラータ・トウキョウが展開するジャズレーベル「insights」もラインナップに追加。ニューヨーク生まれのシンガーであり、作詞/作曲も手掛けるナンシー・ハロウ氏らによる最新アルバム「IN THE WEE SMALL HOURS」(NANCY HARROW & DON FRIEDMAN)を配信する。

 自身も医療の仕事に携わっているというクリプトンの濱田正久社長は、HQMの新レーベルである日比野氏のHSTLについて、「今の世の中に必要とされている音源では。“高音質のものでないと癒し効果が無い”、という日比野さんの趣旨に私も賛同し、今回の共同発表に至った」と述べた。スピーカーのKRIPTYについては、「HQM高音質配信への対応を重視した。いままで、高音質の音楽を簡単に聞けるものはなかったが、気軽に聞けないと普及できないだろうと考え、他に先駆けて、24bit/96kHzに対応したオールインワンのオーディオシステムを発売するに至った」と説明した。

ゲーム音楽を作り続けて10年以上になるという日比野則彦氏。「HSTL」レーベルを立ち上げた背景について「刺激の強い音楽、戦いの激しさを煽る音楽などの制作を続ける一方で、“音楽で人の役に立ちたい”という気持ちが大きくなった」と説明。ゲーム音楽で得た高音質の音楽体験が、HSTLの制作に活かされているというカメラータ・トウキョウの中野浩明社長。直近の情報として、ジャズの「スイングブロス」レーベルについてもHQM STOREで高音質配信する契約を結んだことを明らかにしたクリプトンの濱田正久社長


(2010年 5月 27日)

[AV Watch編集部 中林暁]

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