ソニー、新シリコンチューナ40製品を展開。販売強化へ

-ソニー以外にも拡販。2011年度に4,000万個を目指す


7月13日発表


約40種類のチューナモジュールをラインナップ

 ソニーは、世界各国の放送方式に対応したシリコンチューナIC搭載のチューナモジュールの商品構成を拡充。7月よりサンプル出荷を開始する。

 世界各国のアナログ放送、デジタル放送に対応した独自開発の第4世代シリコンチューナICを搭載したチューナモジュール。アンテナスイッチ機能付や、ループスルー対応、デコーダ内蔵など、顧客や地域ニーズにあわせた商品ラインナップを強化。約40モデルを揃え、全世界市場に向けて積極的に販売するという。


型名タイプ出荷時期サンプル価格
SUT-Rx200シリコンチューナ7月5,000円
SUT-Dx200復調機能付
シリコンチューナ
10,000円
SUT-Rx300薄型シリコンチューナ9月10,000円

 チューナデバイスは、従来主流のコイルチューナからシリコンチューナへの移行期を迎えており、今回の各製品は、主に薄型テレビやレコーダ向けの展開を予定している。特徴は低消費電力性能で、ソニーの従来製品(コイルチューナ)に比べて、約40%の消費電力削減を図っている。また、従来比で約70%の小型化も実現し、セット基板面積の削減に貢献するという。

薄型モデルのSUT-RA301T。容積は3.8cc

 シリコンIC化により、受信チャンネル間の性能ばらつきや、周辺温度などの使用環境による性能変化が少なく、安定した受信性能を実現。スタンバイ時の電力も従来の約半分となる50mWを実現し、セットの省電力化を実現できるという。例えば、「外部入力を使って録画番組を見ている場合でも、従来はチューナの電力消費が発生していた。スタンバイモードを活用することで、使っていないチューナの消費電力を抑えることができる(デバイスソリューション事業本部 フォトニックデバイス&モジュール事業部 アプリケーションモジュール部 事業企画課 統括課長 須田徹氏)」とする。

 また、高周波回路技術とシミュレーション技術を駆使することで、セット周辺回路からの飛び込みノイズの影響を受けにくい設計を実現。セット開発を容易にするという。英国の地上デジタル放送で2009年12月からスタートした「DVB-T2」方式など、新しい放送方式に対応したモジュールもラインナップする。

 薄型モデルの「SUT-RA301T/Z」は、外形寸法25×30×5mmで、容積3.8cc。電源電圧は2.5V、消費電力は500mW(Typical)、受信周波数は47~866MHz。 


■ 2011年度には世界のテレビの2割をソニーのシリコンチューナに

ソニーチューナの歴史

 セットトップボックスやPC向けのチューナでは採用例の多いシリコンチューナだが、「テレビ向け」に限ると、ソニー以外の大手テレビメーカーにおける採用例は多くない。唯一ソニーのみが例外的にシリコンチューナ化を積極的に推進しており、BRAVIAでは、2008年から順次切り替えが進み、2009年以降の製品ではほぼ全てシリコンチューナ化が図られているという。

 “ソニー以外”のテレビメーカーのシリコンチューナ採用が進まない理由としては、STBやPCほど小型化の要求が強くないことや、感度への不安など、いくつかの要素があったという。

 しかし、ソニーでは、2008年よりシリコンチューナモジュールを量産開始。既に1,000万個以上を生産し、テレビに搭載するなど、十分な実績を集めている。さらに、新チューナでは、高い妨害耐性や受信チャンネルや量産品の個体間バラツキが少なく、省電力などの多くの利点がある。

 そのため、シリコンチューナモジュールの利点を訴求しながら、全世界市場に一気に展開するためにラインナップを強化。40モデルを揃えた。つまり、“ソニー以外”のテレビでの採用も強く意識したのが、今回のラインナップなのだという。

 40というチューナモジュール数は、多すぎるようにも感じるが、「ループスルー(レコーダからテレビへのスルー出力)やデコード機能の有無、ダブルチューナなど、顧客の要求は多岐にわたる。地域によってさまざまな対応が必要になるため、これだけの数になっている(アプリケーションモジュール部 事業企画課 須田統括課長)」という。

 ソニーでは、2010年にシリコンチューナモジュールの出荷2,000万個を見込む。さらに、2011年には2億台のテレビ市場のうち、約20%の約4,000万個をソニーのシリコンチューナにしていく計画。

デバイスソリューション事業本部 フォトニックデバイス&モジュール事業部 アプリケーションモジュール部 事業企画課 統括課長 須田徹氏(右)、同部 事業企画課 シニアビジネスプロデューサー 高松宏行氏(左)新チューナ

(2010年 7月 13日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]