【CEATEC 2010】HDMI切替をさらに高速化する「InstaPort S」

-従来比30%高速化。MHLはスマートフォン採用を目指す


 Silicon Imageは、CEATEC会場の幕張メッセ近隣のホテルでプライベートショーを開催。関係者、招待者向けにモバイル機器向けのデジタル映像インターフェイス「MHL」や、HDMIポートの切替を高速化する「InstaPort S」などの技術を紹介している。


■ MHLはスマートフォン向けに展開

右が「InstaPort S」のロゴ。右は従来の「InstaPort」用

 モバイル機器向けのデジタル映像インターフェイス「MHL」は、ノキアやSamsung、Silicon Image、ソニー、東芝などからなるコンソーシアムで策定された規格で、5月に仕様が確定。主にスマートフォンやモバイル機器などでの採用を見込む。

 最高1,920×1,080ドット/30Hzまでの映像信号とデジタル音声信号を5本の信号線だけで出力可能にする規格で、HDMIよりピン数を抑えて端子を小型化できるほか、USBのような電源供給機能を備えている点が特徴。

 モバイル機器向けのトランスミッタ「SiI9244」や、ポートプロセッサ「SiI9381A」、MHLとHDMI用のブリッジ「SiI9292」の3製品のサンプル出荷を開始し、携帯電話メーカーやテレビメーカーに採用を呼び掛けている。2011年の第1四半期には対応製品が発売される見込み。

 MHLで出力した信号は、そのままではHDMIでは受信/デコードできないため、ポートプロセッサ側で処理する必要がある。ポートプロセッサの「SiI9381A」には、4ポートのHDMIと1系統のMHL/HDMI共用端子を備えており、MHL対応ポートにMHLを接続した場合は、MHL映像をそのままテレビなどに出力可能としている。


MHLを備えたポータブルプレーヤー試作機モバイル機器向けのトランスミッタ「SiI9244」MHLの特徴
SiI9381Aを搭載したデジタルテレビ用基板SiI9381ASiI9292搭載のHDMI-MHL変換アダプタ
HDMIのCEC機能と同様に、テレビのリモコンからMHL搭載機器をコントロールできる

 MHLの最大の訴求ポイントは「充電対応」という点。ポータブル機器内の映像をテレビで表示する場合、機器側で映像/音声をデコードするため、バッテリがすぐになくなってしまう。MHLの場合5V/500mAの給電を行なうため、機器を充電しながら、テレビで映像を楽しむことができる。

 また、HDMIのCEC機能に相当し、HDMI CEC機器からMHL搭載機器を制御できるUniversal Remoteと呼ぶコマンドを装備しており、テレビ側からも再生/停止や早送りといった操作も行なえるという。

 携帯電話メーカーなどとの話し合いでも、特に充電機能が支持されており、「iPodをパソコンで充電する人が多いが、テレビで携帯電話を充電という利用方法が定着するのではないか」という。テレビのスタンバイ中でも、MHL接続時には電源を供給する仕組みを取り入れており、特にテレビの前面や側面にMHL端子を装備することを想定しているという。

 同社では「携帯電話の通信を使って購入したコンテンツを、テレビで見るといった相乗効果も期待でき、特にスマートフォンとテレビでの採用が進むのではないか」としている。


■ 従来比約30%の高速HDMI切替を可能にする「Instaport S」

右が「Instaport S」のロゴ。右は従来の「Instaport」用

 Silicon Imageでは、従来からInstaportと呼ぶHDMIポート高速切り替え技術を提供しており、既に5,000万以上の対応機器が出荷されている。このInstaportの切り替えをさらに30%程度高速化した技術として、「Instaport S」も発表している。

 同社のテレビ用ポートプロセッサに順次搭載され、テレビに組み込んだ際の切り替え時間も2秒程度だったものが、1.5秒程度にまで高速化される。なお、従来のInstaportと同様に出力機器側での対応は特に必要ないという。

 海外で発売されているSamsungの液晶テレビなどで採用が始まっており、日本メーカーの製品についても、2011年春ごろの製品には搭載されそうだ。また、Instaport Sの発売に合わせて、新たにロゴを規定。従来のInstaportロゴは文字だけだったが、InstaportとInstaport Sの2つのロゴを用意し、対応製品の判別を容易にする。

 また、新型ポートプロセッサのデモでは、HDMIのHEC(HDMI over Ethernet)やARC(オーディオリターンチャンネル)機能、MHL/HDMI共用ポートなども紹介。

 HECは、HDMIケーブル上でEthernetのプロトコルを伝送可能にするもので、HDMIの映像/音声伝送と、100MbpsのEthernet通信を1本のHDMIケーブルで実現。デモではパソコン内の音楽ファイルをHDMI HECのデータ転送機能を利用してテレビで再生。さらに、そのテレビの音声をARC機能を使って、PCに接続したトランスミッタに戻し、PC用のアクティブスピーカーから鳴らすなど、HECとARCを使った利便性向上について紹介している。

HECやARC、InstaPort Sなどの最新機能を紹介。パソコン内の音楽ファイルをテレビから選択して再生

(2010年 10月 7日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]