ソニー、世界初の聴感補正対応AVアンプ「TA-DA5700ES」

-ネットワーク再生強化。ベルリン・フィルのホール再現


AVアンプ「TA-DA5700ES」

 ソニーは、映画制作者が意図した迫力あるサラウンドを家庭でも楽しめるという世界初の聴感補正技術「サウンド・オプティマイザー」を搭載したAVアンプ「TA-DA5700ES」を12月10日に発売する。価格は27万3,000円。

 最大出力160W/ch、定格出力120W/chの7.1ch AVアンプ。最大の特徴は、映画などの制作時の音量と鑑賞時の再生時の音量の違いが原因で発生する音場感や低音感の違いを自動で補正するという「サウンド・オプティマイザー」を搭載したこと。家庭で映画を鑑賞しても、映画制作者が意図した迫力あるサラウンド音場を楽しめるという。

 その他の特徴として、ネットワークオーディオを高音質するという大型ヒートシンク付きの「ハブ対応型高速ネットワークエンジン」を搭載。さらに、USB接続したウォークマンやiPhone/iPod touchの音楽再生にも対応。そのほか、iOS/Androidスマートフォンアプリ「ES Remote」からのリモコン操作も可能になった。




■聴感補正技術サウンド・オプティマイザー

 家庭での映画鑑賞時の再生音量は、映画制作時の音量と比べて小さくなるのが一般的だが、人間の耳は、音量が小さくなると低音・高音が聴こえにくくなる一方、中域の音は若干聴こえ方がよくなる。この特性に着目したのが、聴感補正技術のサウンド・オプティマイザー。

 映画制作時の基準音量と、現在出力されている音量との違いが原因で発生する聴感上の違いを補正する技術で、同社の音場補正技術「D.C.A.C.EX」の測定値をもとに、アンプのボリューム値に応じて常に最適な聴感補正を行ない、小音量で映画鑑賞をしても制作者が意図した広がりや迫力に近いサラウンド音場が楽しめるという。低音感や音場感の相違を補正するための音圧周波数特性は、国際規格であるISO 226:2003を基本特性として採用。さらに、位相周波数特性は、映画や音楽鑑賞に最適化した基準特性を独自に開発したという。

 独自の自動音場補正技術「スピーカーリロケーションwith A.P.M.(オートマティック・フェーズ・マッチング)」は、新たにフロントハイスピーカーにも対応。7.1chアンプでも仮想的に9ch再生を可能にするもので、従来は、水平設置の4chから7chのスピーカーの位相特性をフロントスピーカーに合わせて整え、サラウンドスピーカーを設置していない場合はそのスピーカーの音を仮想生成し、常に水平7個のスピーカーが存在する音場を再現していた。新たにフロントハイにも対応したことで、フロントハイスピーカーを理想的な場所(フロントL/Rの真上付近)に置けない場合でもスピーカーのリロケーションを行ない、音質の低下を防ぐという。

 なお、プリアウトと別売の外部パワーアンプを追加することで、ディスクリートの9.1ch環境も構築できる。

 また、フロントハイを活用して楽しめるという9.1ch対応の音場モードも採用。新たに、音楽ソフトを楽しむ際に、ヴォーカルの位置をプロジェクタのスクリーンなどの高さと一致させる「ボーカル・ハイト」を搭載。

 音楽ホールを再現するモードも備え、「HD-D.C.S.」を構築した最新の8点マイク測定法でホールの音場測定を新たに行ない、音楽ホールの響きを再現。「フロントハイ・スピーカーを装備すると天井方向から到来する、降るような残響も再現が可能」だという。主に2chの音楽ソフト用に最適化されており、フロント2chの音はほとんど加工せず、フロント2chに含まれていないサラウンド側や天井方向からの残響成分を生成し、最終的にマルチチャンネル再生を行なう仕組みを採用。マルチチャンネルソフトでは、残響が少なめのソフトの残響を補強するような使い方ができるという。

 新開発のホールモードとして「ベルリン・フィルハーモニック・ホール」を用意するほか、「トゥルー・コンサート・マッピングA」、「トゥルー・コンサート・マッピングB」モードもリニューアル。「ベルリン・フィルハーモニック・ホール」は「明るくさわやかな音色の音場が特長」というモードで、インターネット動画試聴サービス、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団「デジタル・コンサートホール」を再生する際には、自動的にこのモードに切り替わる。

 その他のにも、「HD-D.C.S.」、「ジャズ・クラブ」、「スタジアム」、「ライブ・コンサート」、「スポーツ」、「マルチ・ステレオ」などの音場モードも踏襲。いずれもフロントハイ・スピーカーを活用した音場展開にリニューアルされており、DTS Neo:XやドルビープロロジックIIzの9.1chバージョンの再生にも対応している。



■ネットワークオーディオ機能も充実

 前面に備えたUSB端子に、ウォークマンやiPhone/iPod touchを接続することで、AVアンプ側でダイレクト再生が可能。WAV/MP3/WMA/AACに対応するが、DRM付き楽曲には非対応。USBメモリやUSB接続のHDDを接続し、再生する事も可能。

 USB DAC機能も備えており、PCとUSB接続し、USBオーディオデバイスとして動作可能。

 ネットワークオーディオ機能も備え、DLNAサーバーなどに保存されたコンテツを再生できるほか、スイッチングハブ機能を搭載し、音源となるネットワークHDDやPCをAVアンプと直結する事も可能。

 さらに、大型ヒートシンク付の「ハブ対応型高速ネットワークエンジン」を新開発。高速信号処理エンジンを使うことで、多彩なフォーマットに対応すると同時に、クロックの安定性も向上し、高音質での再生を実現したという。ヒートシンクはネットワークコンテンツ再生時に増大する発熱量を放熱するためのもので、温度が大幅に上昇した時に稼働し回路を守る小型静音ファンも装備。ただし、通常の使用時はファンがまわらない設計になっているため、騒音と振動を抑え高音質を維持するという。

 再生対応ファイルは、24bit/192kHzの2ch、24bit/48kHzの5.1chマルチチャンネルにも対応。MP3/AAC/WMA、FLACファイルも再生できる。

 GUIも一新。従来の「接続機器の選択」に加えて、「観る(Watch)」、「聴く(Listen)」など直感的に操作できるGUIを採用しており、操作性を向上させた。AVアンプの詳細設定を保存し、手軽に呼び出せる「イージーオートメーション」機能も新たに搭載。4種類の設定が可能で、うち2種類を、本体/リモコンのボタンで呼び出せる。

 iOS/Android端末向け無償アプリ「ES Remote」も用意。グラフィックを使ったGUIを備えたアプリで、AVアンプの基本操作から、ネット動画のコンテンツ再生なども行なえる。DLNAのDMC機能も備えたアプリで、ネットワークHDDやPC内のファイル選択や再生制御も可能。Android端末向けアプリでは、端末内の音楽ファイルをAVアンプで高音質再生する事もできる。

 有料の配信サービスでは、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の楽曲を楽しめる「デジタル・コンサートホール」や「Sony Entertainment Network(SEN)の映像配信サービス「Video Unlimited」などの再生機能も備える。



■音質面の特徴

 音質面の機能強化としては、同社の高級SACD/CDプレーヤーで採用している「パラレルD/Aコンバーター」をAVアンプに初めて搭載。1chあたり2個のDACで、同じデジタル信号を同時にD/A変換し、アナログ領域で合算することで高SN比を実現する。

 さらに、信号を受信するインターフェイス回路とDAC、アナログのローパスフィルタ回路という音質上重要なセクションをバックパネルに近い距離に配置。マスタークロックがインターフェイス回路からDACに直接入力されるようにし、ジッタを低減。DSPがマスタークロックから離される効果もあり、音質が向上したという。この技術をソニーでは「ダイレクトクロッキング・コンストラクション」と名付けている。

背面

 HDMIは入力6系統、出力2系統で、2系統同時出力も可能。3DやARC、パススルーにも対応。CECのブラビアリンクもサポートする。そのほか、映像入出力はコンポーネントが入力2系統/出力1系統、コンポジット/S映像モニター出力1系統を装備。音声入力は光デジタルが4系統、同軸デジタル3系統、フォノ入力(MM)が1系統。アナログ音声とコンポジット入力は入力5系統/出力1系統。音声出力は光デジタル1系統と、REC OUT 1系統、マルチチャンネルプリアウトは1系統、サブウーファ出力も2系統備える。スピーカー適合インピーダンスは4Ω以上。

 消費電力は300W、待機時消費電力は0.5W。外形寸法は430×420×187.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量は18.2kg。多機能リモコンと簡単リモコン、音場補正マイクなどが付属する。



(2011年 9月 28日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]