ニコン、3,630万画素CMOS搭載デジタル一眼「D800」

-フルHD AVC録画。ローパス無効化モデルも


デジタル一眼レフカメラ「D800」

 ニコンは、動画撮影機能を強化したデジタル一眼レフカメラ「D800」を3月22日に発売する。価格はオープンプライス。店頭予想価格は30万円前後。「AF-S NIKKOR 28-300mm f/3.5-5.6G ED VR」レンズをセットにしたレンズキットも同日発売で、店頭予想価格は40万円前後。

 また、センサーの前面の光学ローパスフィルタを無効化したモデル「D800E」も4月12日に発売。こちらもオープンで、店頭予想価格は35万円前後。

 D800/800Eのどちらも、ニコンFXフォーマットのCMOSセンサーを搭載したデジタル一眼レフカメラ。35mmフィルムサイズに準じた撮像素子を備えたデジタル一眼として、世界最高という有効3,630万画素を採用しているのが特徴。「中盤デジタル一眼レフや、中判デジタルバックに匹敵するほどの解像感が得られる」としており、A1サイズ(594×841mm)までの引き伸ばしにも対応できるという。

D800


ニコンFXフォーマットのCMOSセンサー。世界最高という有効3,630万画素を採用

 撮影データも大容量となり、被写体によっても異なるが、14bitの非圧縮RAWで撮影した場合1枚あたりのファイルサイズは74.4MB、14bit/圧縮RAWで41.3MB程度。JPEGのFINEでは16.3MB程度のサイズとなる。

 それを処理するためのエンジンとして「EXPEED3」を搭載。色再現性や階調処理、高感度撮影の処理も高速に行なえるという。また、動画撮影でもノイズの少ない、豊かな階調表現を実現したとしている。

 動画撮影機能「Dムービー」を強化。「プロユースにも対応する本格的な機能」としており、素子からのデータ読み出し速度を向上。ローリングシャッターによるひずみを大きく改善したという。

 動画撮影フォーマットはMPEG-4 AVC/H.264、ファイル形式はMOV。1,920×1080/30p/25p/24pに対応。1,280×720/60p/50p/30p/25pも選択できる。ビットレートは非公開。1つの動画は最長で約29分59秒の撮影が可能。音声はリニアPCM。モノラルマイクを内蔵するほか、別売の外部ステレオマイク(ME-1)の接続も可能。


D800を持ったところ

 また、FXベースの動画フォーマットと、DXベースの動画フォーマットの2つの撮像範囲が選択可能。FXベースであれば、被写界深度の浅いボケ味を重視した表現が、DXベースであれば映画の35mmフィルムに近い、「シネマトグラファーに馴染み深い画角での作品作りができる」という。

 微速度撮影にも対応。設定した撮影間隔で撮影した静止画を動画として記録するもので、通常再生速度の24倍~36,000倍の動画をカメラ内で作成可能。作成したデータは動画として保存される。なお、微速度撮影の最長時間は20分となる。


背面記録メディアはCFカードとSDカードのダブルスロット外部マイク入力も備え、別売のステレオマイク「ME-1」が接続可能

 また、HDMI出力端子も備え、ボディ側の液晶モニタと外部モニタへの同時出力が可能。動画撮影や動画ライブビュー時の背面液晶モニタに表示される設定情報をHDMI出力映像に表示しない事もでき、ライブビューの映像を外部機器で直接記録する事もできる。ただし、動画撮影中にHDMIから出力される映像は1,280×720ドット以下のサイズとなる。

 HDMIを介して外部のレコーダで録画する事を前提とした機能として、カスタムメニューに「パワー絞り」を用意。露出モードA/Mで動作するもので(動画撮影中は機能せず)、動画ライブビュー時に、滑らかな絞り制御が可能。「インデックスマーキング」を使えば、撮影中の動画の重要なフレームにインデックスマークを付けることもでき、カメラでの動画再生・編集中に目的の場所を素早く見つけられる。

 外部マイク入力も備え、別売のステレオマイク「ME-1」が接続可能。音声確認用のヘッドフォン端子も備える。また、音声レベルインジケーターにより、動画ライブビュー中に音量を視覚的に確認しながらマイクの設定ができる。

シャッターボタンの手前、左側にある赤いボタンが録画用ボタン背面モードダイヤル部分

 既に発表されている「D4」と同じ、アドバンストシーン認識システムを搭載。撮影シーンの色や輝度を厳密に分析して認識。より高度なAF、自動露出、i-TTL調光、アクティブD-ライティング、オートホワイトバランスなどを可能にするもの。また、ファインダーを使っている場合でも顔認識が機能する。

 測光システムは「3D-RGBマルチパターン測光III」に進化。前述の顔認識やハイライト解析などの詳細なシーン分析情報を使う事で、さらに精度が向上。顔領域の明るさを考慮した背景と人物のバランスのとれた露出制御を可能にするという。

D4との機能比較。D4の機能の大半をD800も搭載している。なお、スライドのミスだが、起動時間やレリーズタイムラグもD4と同じだというD4とD800の棲み分けラインナップの一覧

 ISO感度は100~6400まで対応。ISO 6400に対して、約0.3、0.5、0.7、1段、2段(ISO 25600)までの増感が可能。液晶モニタは3.2型のTFT液晶で、約92万画素。

 外形寸法は約146×81.5×123mm(幅×奥行き×高さ)。重量は本体のみで約900g、前モデルのD700と比べ、10%軽量化した。バッテリやメモリーカードを含めると約1kg。記録メディアはCFカードとSDカードのダブルスロット。CFはUDMA7に対応。SDカードはSDHC/SDXCもサポートする。

記録メディアはCFカードとSDカードのダブルスロットD4(左)とのサイズ比較



■D800E

D800E

 D800Eは、センサーの前面にある光学ローパスフィルタを無効化したモデル。光学ローパスフィルタはモアレや偽色を防ぐために、通常のデジタルカメラに使われているものだが、必要な反面、解像感を低下させるなどのデメリットがある。

 D800Eはその働きを無効化することで、より高い解像感のある画像が撮影可能。高画素な撮像素子の力と、ニコンレンズの描写力をダイレクトに発揮できるとしている。高い解像感が求められる風景、美術品などの撮影に適しているが、反面、被写体や撮影条件によってモアレや偽色が目立つ事がある。


D800E
 なお、ローパスフィルタを完全に取り外しているのではなく、フィルタ自体は取り付けられている。通常のD800では、ローパスフィルタで光を複屈折させ、4つの光にしてセンサーに届けているが、D800Eでは2つの光にするローパスフィルタと、2つの光を1つに戻すフィルタを組み合わせて搭載。ローパスフィルタの働きを無効化するような構造になっている。これは、単純にローパスフィルタを外してしまうと光の屈折係数が通常モデルと変わってしまい、フランジバックの長さなども変化し、カメラ自体を新しく設計し直さなければならないため。D800との製造上の共通性を維持するための仕組みとなっている。また、ローパスフィルタの働きを無くしてはいるが、IRコーティングや反射防止コーティングの機能は通常のD800と同じ。


ローパスフィルタを省き、高精細な撮影が可能。図書館を引きで撮影したものだが、本がしっかりと解像されているD800Eをミラーアップさせたところ

 なお、D800とD800Eの販売比率としてはニコンでは「想定としてはD800に対して、D800Eが1割切る程度ではないかと考えているが、初めて製品なのでわからない部分もある。市場の声を聞きながら進めていきたい」としている。

中央左がニコン映像カンパニー開発本部の山本哲也本部長、右がニコンイメージングジャパンの五代社長
 ニコンイメージングジャパンの五代厚司社長は、世界最高有効画素のデジカメを投入した理由として、「24メガピクセルのD3Xを投入しているが、お客様からさらに高解像度なものが欲しいという要望が多く寄せられた。スタジオ撮影や物撮り、風景撮影などの用途では、D800の36.3メガピクセルが役立つと考えている。また、超高感度撮影が可能なD3を投入した時もそうだったが、我々が製品を提案する事で、カメラマンの方々が新たな撮影の仕方を切り開いてくれる。D800でも、我々の想定を超える使われ方がされるだろう。写真の可能性が、このカメラで広がっていくのではないかと考えている」と説明した。

 さらに、「D800は国内生産なので、タイの洪水の影響はほとんど受けないが、下位モデルに関しては昨年以降、大きな影響を受けてしまった。しかし、タイの工場も現在では復興の準備が進んでおり、一刻も早く元の状態に戻して、今年は飛躍の年にしていきたい」と、新機種を含めた抱負を語った。



(2012年 2月 7日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]