niconico、動画とメルマガなどを組み合わせた「ブロマガ」

-EPUB形式でも。小沢一郎や押井守など76社/人が配信


新サービスの名称は「ブロマガ」

 niconicoは21日、公式動画配信サイト「ニコニコチャンネル」に、新機能「ブロマガ」を追加した。ブログベースのサービスだが、文字や静止画だけでなく、ニコニコチャンネルの機能である動画のアーカイブ配信、生配信も可能。さらに、投稿された記事をEPUB形式でダウンロードする事も可能で、PCのWebブラウザだけでなく、スマートフォンやタブレットなどの対応端末で読む事もできる。

 サービスによって異なるが、有料のブロマガが基本になる見込み。全て無料のブロマガも用意される。また、基本は有料だが、一部が無料といった設定も可能で、配信者が柔軟に設定できる。1記事単位で課金ができる「都度価格設定」と、1カ月間の購読料を課金できる「月額価格設定」がある。支払いはクレジットカード、ポイント支払い、キャリア決済の3種類から選択可能。

 ただし、21日からの1カ月は、サービス開始を記念し、無料で全てのチャンネルを読む/視聴する事ができる。なお、利益配分に関しては、売上から事務手数料14%を引いた残りの86%を、ドワンゴ30%、権利者70%で分配するという。


メルマガと動画、生配信、電子書籍を組み合わせたものサービス概念図

 21日のサービス開始時点では、政治家の小沢一郎氏や、堀江貴文氏、アーティストのGACKT、ジャーナリストの津田大介氏、映画監督の押井守氏、タレントのデヴィ夫人など、65チャンネルが開設。76社/人がブロマガコンテンツを配信し、今後も増やしていくという。

ドワンゴの夏野剛取締役

 ドワンゴの夏野剛取締役は「ブロマガ」の立ち位置について、「これまでは報道機関のようにメディアが情報を発信する事が多かったが、ソーシャルメディアにより個人が発信するようになった。しかし、発信する人が多くなり過ぎ、内容もプライベートなものになり、(発信するのも、それを読むのにも膨大で疲れてしまう)“ソーシャル疲れ”などとも言われている。今回のブロマガは、既成メディアとも、個人が趣味でやるものとも違う、その中間。Twitterでキュレーターの役割を担える人が、マルチなフォーマットでコンテンツ配信できるプラットフォームだ」と説明。

 また、そのサービスをniconicoが行なう意義については、「イノベーティブなサービスでも、それを展開するプラットフォームに人がいなければ、イノベーティブさを伝える事ができない。niconicoのプラットフォームには集客力がある。このプラットフォームの力をいかに使っていくかが大事」と語り、6月末時点でのniconicoの総登録会員数が2,808万人、プレミアム会員数は169万人になった事を報告した。


 



■ユーザーとの交流も可能

ブロマガのサービスイメージ
読者と著者、読者同士でのコミュニケーションも可能
ブロマガをEPUB形式でダウンロードする事もできる

 ブロマガは基本的に、ブログのような形式のサービスだが、そこで文章や静止画だけでなく、動画コンテンツも提供できるのが特徴。さらに、記事コンテンツをアップロードする際に、記事をメルマガ形式に自動変換し、登録者に送信する事も可能。送信時間を設定する事もできる。

 また、読者は投稿された記事をEPUB形式でダウンロードする事も可能。PCのWebブラウザだけでなく、スマートフォンやタブレットなどの対応端末で読む事もできる。

 さらに、ブロマガのページで、会員同士や、会員と著者間でコミュニケーションをとる事も可能。

 夏野氏は有料サービスとした理由について、「自分の経験として、Twitterに疲れると3日くらいつぶやかなかったり、呑んだワインを紹介しようと思っているFacebookでも酔っ払うとアップロードするのを忘れてしまう。しかし、有料のサービスとなると、呑んだワインを全部紹介しようという(投稿者としての)オブリゲーション(責務)が上がる」と説明。

 さらに、「有料サービスにする事で、発言者を“サポートしたい”と思っている人を集める事ができ、前向きに、ポジティブに、例えば僕の意見を読みたいと思ってくれる人が集まる。そうすれば、少し過激な、テレビや、ニコ動でも言えないような事が言えるようになる。もちろん悪気がある事を言うというのではなく、普通のTwitterやブログでは、批判されかねず、それでも議論しないままでもいけないような話ができるコミュニティがここに出来る。閉じたコミュニティに閉じこもっている事が良いというわけでもないが、ブログやTwitterなどのオープンなサービスがある中で、ブロマガのような“オプション”が今までなかった。それをニコニコで作っていきたい」とした。

 さらに夏野氏は、今後の展開として、「ブロマガから展開して行って、書籍を出すなんて展開もありえるだろう。その際も、生放送番組で書籍を使ってアピールしたり、書籍と連動した生配信をするといった事も可能」と、多様な可能性を持っている事をアピール。

 さらに、ニコニコニュースでブロマガの話題を取り上げたり、アフィリエイト広告の「ニコニコ市場」に、ブロマガを貼る事もできるという。

 また、現在は各業界の有名人や企業がブロマガを開設しているが、将来的にはniconicoで有名な配信者などが、自身のブロマガを開設できるようにする予定。

 サービス開始時のブロマガ開設者/社の一覧は、以下の通り。


  • 小沢一郎
  • 堀江貴史
  • GACKT
  • 津田大介
  • 押井守
  • 大淵愛子
  • 人力舎
  • ヨシナガ
  • 家入一真
  • 木下晃伸
  • 伊藤喜之
  • 藤津亮太
  • ニコニコ動画研究所
  • 上杉隆
  • 宇野常寛
  • 夏野剛
  • 佐々木俊尚
  • シノドス
  • ハックルさん(岩崎夏海)
  • 福島瑞穂
  • エンタジャム(JIN:俺的ゲーム速報@刃)
  • ジャンバリ
  • 久田将義
  • 杉作J太郎
  • ミリオン出版(芸能ジャパン)
  • 杉田勝
  • 小林よしのり
  • BusinessMedia誠
  • 有村悠
  • タケルンバ
  • 株式会社宮内吉雄事務所(芸能ガラパゴス/B級ニュースGON動画/トンガリキッズ)
  • デヴィ夫人
  • ビデオニュース
  • 畠山理仁
  • 株式会社講談社(田原総一朗)
  • 河野太郎
  • 小飼弾
  • Modern Freaks Inc.
  • 押井守
  • 有田秀穂
  • 晶エリー
  • 家畜人ヤプー
  • 声優グランプリ
  • 石鹸屋
  • 花田紀凱
  • うしじまいい肉
  • 菊地成孔
  • HEADZ(佐々木敦)
  • トラベルハック
  • 東映
  • 松永天馬(アーバンギャルド)
  • 武田邦彦
  • 小明
  • キングオブコメディ
  • 株式会社メディアジーン(ライフハッカー[日本版]/ギズモード・ジャパン/roomie/kotaku/MYLOHAS/マイスピ)
  • TechWave
  • MOONGIFT
  • 海燕
  • 萌え理論ブログ
  • アルテイシア
  • オガワカズヒロ
  • 菅原浩志
  • 宋文洲
  • AOLオンライン・ジャパン株式会社
  • Autoblog.
  • 週刊アスキー
  • よしもとクリエイティブ・エージェンシー株式会社(R藤本/天津向)
  • 青山裕企
配信チャンネルの紹介。著者からのビデオレターも上映された。小沢一郎氏のチャンネルは「小沢一郎すべてを語る」。国民との交流を兼ねた初の試みで、総選挙に向け、「国民の生活が第一」の政策を、読者とともに創り上げていくという「堀江貴文のブログでは言えない話」。「収監前の記者会見で、“出てくるまでニコニコ動画が続いていればいいですね”と言ったけど、思った以上に続いているようでビックリです。しかも新しくメルマガサービスを始めるらいいですね。どうせなら、僕のメルマガ読者数もがっつり増やしてくれることを期待しています。ニコニコ動画はこれからもメディアのあり方を変えるため、引き続き頑張って欲しいと思います。ところで、ひろゆきは何してるの?」というメッセージが代読された押井守氏のチャンネル名は「世界の半分を怒らせる」。「雑誌で言いにくく、本にしにくい、書いたけど出せなかった文章を中心に行こうかなと思っている。「真実を語れば世界を凍らせる」という言葉があるが、そもそも言葉とはどこかしらそういうもの。できるだけ中身のある、ボリュームもクオリティもあるものにしたい」と意気込みを語る
その他にも多数の著者陣が紹介された新党日本代表の田中康夫氏も応援に駆けつけた

 発表会の後半では、津田大介氏、佐々木俊尚氏、ハックルさん(岩崎夏海氏)と、ドワンゴの川上量生会長も参加して、トークセッションも開催。

 川上会長は、ブロマガを考えたキッカケとして、「インターネットにおいて、ゲーム以外で有料課金が成功しているのが有料メルマガ。しかし、メルマガは16年間まったく進化していなかった。ここを起点に、新しいサービスを作れるのではないかと考えた」という。

 佐々木氏はメルマガについて、「他に課金モデルが無かったからやっていたのであって、こんなものに頼るつもりは毛頭なかった。将来的に目指さなきゃならないのは、コンテンツのサブスクリプションモデル。KindleやiBookstoreでは音楽や映像も配信できるなど、それが洗練されている。また、メールというテクノロジーが古く、見落とされる事もある。電子書籍のコンテンツのような形で、プッシュ配信するのが基本であり、ブロマガはそういう方向に進化しないといけない」と説明。

 川上会長は、「メルマガが成功したのはコンテンツではなく、プラットフォームだったから。ネット時代のコンテンツフォルダは、プラットフォームをとりに行かなきゃならない。ブロマガが目指しているのは、発信者が自由に、自分のプラットフォームを簡単に作れること。プラットフォームを簡単に作るための、プラットフォームを作りたい」と語った。

左から津田大介氏、佐々木俊尚氏ハックルさんこと岩崎夏海氏ドワンゴの川上量生会長

(2012年 8月 21日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]