ULTRASONE、初のイヤフォン「IQ」と「Tio」を披露

BA+ダイナミック両搭載。「女性にもedition8を」


 タイムロードは27日、同日より開幕した「秋のヘッドフォン祭2012」の中で、新製品発表会を開催。ULTRASONE初のイヤフォン、「IQ」と「Tio」や、既発売のヘッドフォン「edition8」の新バージョンで、ケーブルが着脱式になり、カラーやデザインが変更された、「edition8 Romeo」と「edition8 Julia」を紹介した。

 概要は既報の通りだが、イヤフォンは10月27日発売で、価格はオープンプライス。店頭予想価格は「IQ」が79,800円前後、「Tio」が46,200円前後。「edition8 Romeo」と「edition8 Julia」は11月中旬発売で、価格はどちらも151,200円となる。

 なお、概要が既に発表されているため、今回の発表会は、来日したCEOのMichael Willberg氏と、COOのMichael M. Zirkel氏へインタビューを行ない、より詳しい情報を聞いていくという形式になった。




■「IQ」&「Tio」

 上位モデルの「IQ」は、バランスド・アーマチュア(BA)ユニットと、8mm径のダイナミック型ユニットを内蔵した、異なる方式のユニットによる2ウェイハイブリッドイヤフォンになっているのが特徴。

BAとダイナミック型を両方搭載した「IQ」BAとダイナミック型を両方搭載した「IQ」
イヤーピースを外したところケーブル部分。なお、IQの装着方法は、ケーブルを耳の裏にかける、いわゆる“Shure掛け”に対応するIQの内部。下にある丸いパーツがダイナミック型で、横向きに搭載しているのが特徴

 「Tio」はシングルのBAユニットを搭載したモデルでは、ハウジングはアルミニウム削り出し。ケーブルはOFCで、マイク付きリモコンも装備している。

シングルのBAを搭載した「Tio」
COOのMichael M. Zirkel氏

 イヤフォンを開発した経緯について、Zirkel氏は「こうしたショーに来るたび、長年“イヤフォンを作って欲しい”という要望が寄せられていました。最初は考えていなかったのですが、近年その要望がさらに強くなった事、そして、ULTRAZONEらしいサウンドをイヤフォンでも実現できる可能性が出てきたので、開発に乗り出しました」と説明。

 しかし、同社を代表する、ヘッドフォン向けの頭内定位解消技術「S-Logic」は、小さなイヤフォンでは使えないという問題がある。Zirkel氏は、「世の中にある全てと言ってもいいくらい、各社のイヤフォンを集めまして、聴いて、特徴を調べあげ、どのような部分が、どのような音を作っているのか、良い所も悪い所も研究しました。それを我々のイヤフォンのチューニングに活かし、広がりのある立体的な音響を実現しました」という。

 「IQ」が、BAとダイナミック型のハイブリッドになっている理由を、Willberg氏は「BAの精緻なサウンドと、エネルギッシュなダイナミック型を組み合わせる事で、自分たちの理想とするサウンドが実現できるため」と解説。


装着イメージ

 ダイナミック型のユニットが、横向きに配置されている事については、「スリムな筐体に仕上げるための工夫で、ユニットの向きが音に影響しないような配慮もしている」とのこと。

 また、各モデルの名前の由来については、「IQ」が「ハイブリッドイヤフォンなのに、スリムな筐体に収まっているインテリジェンスさと、知能指数という意味をからめた」、「Tio」はスペイン語で「yours(あなたのもの)」という意味で、純粋に「あなたに使っていただきたい」という意味が込められているという。」




■edition8 Romeo/Julia

 どちらも「edition8」の新バージョン。共通する特長として、ケーブルが着脱式になっており、マイクリモコン付きのケーブルを同梱。

 「Romeo」は、ブラック仕上げのアルミニウムヘッドバンド、ブラックエチオピアンシープスキンレザーのヘッドパッド&イヤパッドを採用。ハウジング部分には輝きのあるブラッシュ仕上げのブラックパラディウムコーティングを施し、インレイ部分はブラックアルミニウムを採用する。

左からedition8 Romeo、右がJuliaedition8 Romeo。ハウジングには輝きのあるブラッシュ仕上げのブラックパラディウムコーティング、インレイ部分はブラックアルミニウム

 「Julia」は、フクシアという赤紫の花のカラーを使い、エチオピアンシープスキンレザーやヘッドパッドを染め上げている。ハウジングにはルテニウム・コーティングを施し、青貝のインレイと、カーブを描く刻印をデザインアクセントとして施している。なお、青貝のインレイは天然のもので、同じものは無いとのこと。

 その他の仕様は共通。頭内定位を緩和するS-Logic Plusテクノロジーや、低域電磁波低減ULEテクノロジーなどを採用している。

edition8 Juliaハウジングにはルテニウム・コーティングを施し、青貝のインレイと、カーブを描く刻印を施している
CEOのMichael Willberg氏インタビュアーは、ブログ「Music To Go」を運営し、ライターとしても活躍している佐々木喜洋氏

 両モデルについて、「従来のedition8と、音の違いはあるのか?」という質問に対し、Zirkel氏は「ノー(笑)。我々としては、まったく同じだと考えています」と回答。ケーブル交換については、「ユーザーの皆さんから要望が多かっため、対応しました。我々はケーブルメーカーではないため、自身で交換用のケーブルを出すつもりは今のところありませんが、コネクタも入手しやすいスタンダードなものなので、ケーブルメーカーさんからもリケーブル製品が出てくると思います」とコメント。

 製品のターゲット層については、「女性の方にもハイエンドヘッドフォンを使っていただきたい」(Willberg氏)という。なお、製品名がRomeo/Juliaで、ロミオ/ジュリエットでない理由は、「ドイツではジュリエットをジュリアと呼びます。我々はドイツのメーカーなので、ジュリアと名付けました」(Willberg氏)とのこと。


装着イメージ



■「IQ」&「Tio」ファーストインプレッション

 会場で短時間ではあるが、「IQ」&「Tio」を試聴できたので印象をレポートしたい。プレーヤーやiBasso Audioの「HDP-R10」を使っている。

 BAシングルの「Tio」は、シングルながらワイドレンジ、かつバランスの良い再生音が特徴。付帯音の少ない、高解像度なBAらしいサウンドだが、金属的な響きもほどよく抑えられており、第一弾イヤフォンながら完成度の高さを感じさせる。どちからというと、高域の抜けの良さ、分解能の高さが印象に残るタイプで、同社ヘッドフォンの特徴でもある、高域のクリアさを連想させてくれる。

 対する「IQ」は、ダイナミック型が低域を担当しているため、低音の沈み込みや量感が豊か。それに負けないBAの高域がほどよくミックスされ、異なる方式のユニットが組合わされている不自然さは感じない。ダイナミック型を搭載していても、中域が膨らみ過ぎる事も無く、見通しの良いサウンドにまとまっており、こちらも第一弾ながら“音作りの上手さ”が光る。

 特筆すべきは空間描写の広さで、これもS-Logicを使った同社のヘッドフォンをどことなく連想させるサウンドと言える。ハイブリッドイヤフォンと言えば、AKGの「K3003」(約13万円)が君臨しているが、「Tio」は実売79,800円前後ながら、その“良きライバル”になりそうだ。


同じくULTRASONEの新製品である「Signature DJ」も展示された。10月27日発売で、価格はオープン。店頭予想価格は88,200円前後。新開発の50mm径マイラードライバと、「S-Logic PLUS」を搭載。低域電磁波を最大98%低減するULEテクノロジーも採用している

(2012年 10月 27日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]