レビュー
ソニー新ヘッドフォン「WH-1000XM6」、編集部員ふたりで聴いてきた
2025年5月16日 09:06
ソニーが5月30日に発売するワイヤレスヘッドフォンの新フラッグシップモデル「WH-1000XM6」。発売に先駆けて実機を触ってきたので、ファーストインプレッションをお届けする。音質の進化はもちろん、“世界最高クラス”を謳うノイズキャンセリングの進化が光る1台だった。
WH-1000XM6は2022年5月発売のワイヤレスヘッドフォン「WH-1000XM5」の後継機。5月30日発売で、価格はオープン。ソニーストアでの直販価格は59,400円。海外では3色展開だが、日本では発売時点でブラックとプラチナシルバーの2色展開となる。
開発段階からグラミー賞受賞/ノミネート歴のあるマスタリングエンジニアと協業することで高音質を追求したほか、従来比で処理速度7倍以上という新たな高音質ノイズキャンセリングプロセッサー「QN3」と、前モデルから4基多い12基マイクによるノイズキャンセリングの強化など、全面的なパフォーマンス向上が図られている。
AV Watchでは、発売に先駆けて編集部員ふたりが実機を試聴してきたので、それぞれのファーストインプレッションをお届けする。
外音取り込みの進化が印象的:編集部・酒井
WH-1000XM6では音質・ノイズキャンセリングの進化もさることながら、ヘッドバンドが幅広になるなど、装着性も改善されている。
実際に装着してみると、ヘッドバンドが頭にぴったりフィットしつつ、バンドが太くなったことで頭頂部にかかる圧力が分散され、長時間でもさらにストレス少なく装着することができる。
ただフィット感が増した影響か、頭を左右からホールドする側圧はWH-1000XM5から少し強くなった印象。頭を締め付けるような強さではまったくなく、長時間でも問題なく使える強さではあるものの、特にWH-1000XM5から乗り換える人は最初は違いを感じるポイントかもしれない。
音質の前にまずは強化されたノイズキャンセリング性能をチェックしてみた。今回は電車内の騒音やアナウンスなどをスピーカーで再生してみた。
電車の走行音では「ゴォー!」という低音成分がしっかりカットされ、ほとんど耳には届いてこない。またWH-1000XM5と比べると「コォーー」という中高音域のノイズも耳に届きにくくなっており、音楽を流していない状態でも、より無音に近い状態で、音楽をかければノイズはまったく気にならなくなる。
また特に違いを大きく感じたのは外音取り込み機能。WH-1000XM5の外音取り込みモードでは「サーッ」というホワイトノイズも大きく、いかにも“マイクで集音している感”が強かったが、WH-1000XM6ではホワイトノイズはまったく聴こえない。周囲の会話や電車の車内アナウンスなども“集音感”がない自然な聴こえ方だった。
続いて、XperiaとLDACで接続して、「BIA,JID/LIGHTS OUT」や「Wizkid/IDK」(いずれもFLAC)を、前モデルのWH-1000XM5と聴き比べてみた。前モデルのWH-1000XM5でもクリアで解像感の高いボーカル、迫力とタイトさを兼ね備えた低域とバランスの取れたサウンドを楽しめたが、新モデルのWH-1000XM6では、その性能にさらに磨きがかけられた。
例えばヒップホップの「LIGHTS OUT」は女性ラッパー・BIAのボーカルで始まる楽曲なのだが、そのボーカルの解像感がさらにアップ。ベールが2~3枚剥がれたようなクリアさで、高域部分が伸びよくスーッと空間に広がっていく。
音が複雑に重なり合うラップパートも、各帯域の描写力が高まっているので、ボーカルがしっかりと聴き取りやすい。低域もズシンッ! と芯に響くような力強さがありつつ、しっかりとタイトなのでボーカルを邪魔しない。
女性ボーカルだけでなく、男性ボーカルの描写力も高くWizkidによるレゲエ「IDK」も、ボーカルにしっかりとした存在感がありつつ、コーラスや各楽器のパートもしっかりと感じることができた。
最後に、新機能である「360 Upmix for Cinema」も体験してみた。これはソニー独自のリアルタイム信号処理によって、ステレオ音源を映画館で聴いているような臨場感ある立体的な音場に変えるというもの。今回はXperiaと組み合わせて使っているが、Xperia以外でも同機能を利用できる。
今回は山崎貴監督「ゴジラ-1.0」の冒頭、神木隆之介演じる敷島が初めてゴジラと対峙するシーンを視聴した。360 Upmix for CinemaをOFFにした状態では、セリフがとてもクリアで、敷島や青木崇高演じる橘など兵士たちが、未知の生物であるゴジラと対峙している緊迫感のある息遣いまでもしっかりと聴き取ることができる。ゴジラの咆哮や爆発音も迫力満点だ。
続いて360 Upmix for CinemaをONにしてみると、迫力満点のゴジラの咆哮・爆発音に、映画館で味わえるような「ズゥゥゥゥン!」と震えるような低域とリバーブ感が追加され、さらに迫力がアップ。セリフにも適度な反響感が加わって映画館の広いスクリーンで観ているような感覚を味わえる。
360 Upmix for Cinemaの迫力を一度味わったあと、同機能をOFFに戻すと、360 Upmix for Cinema体験前でも十分だと思っていたサウンドが、全体的にのっぺりとしたものに感じられ、物足りなさを感じてしまうほど。今回視聴した「ゴジラ-1.0」のような迫力ある映画や、アクションゲームの実況動画などでは特に効果を発揮する機能だろう。
空間表現がグッと増したライブ音源が楽しめるヘッドフォン:編集部 野澤
装着してみると、けっこうしっかり目に感じる着け心地。着けてすぐは側圧も若干強いように感じるのだが、不思議と押さえつけられるような感覚はない。これは、イヤーパッドの厚みが増したことで、よりしっかりフィットするようになったためとのことだ。
ノイズキャンセリングは、WH-1000XM5の時点でかなり精度があがっていたこともあり、パッと付け替えただけでは、そこまで大幅に良くなった!! と実感できる感じではないが、人の声や騒音の中低域辺りの音がさらに抑えられているようだ。
ノイズキャンセリングの圧迫感がほとんど感じられないのも前機種同様だが、こういった細かい進化がまとまって、装着時の快適さが向上しているように感じる。
明確に違いがわかるのはどちらかというと外音取り込み機能の方だ。マイクが増えたことでさらに音が自然に聞こえるようになったほか、あ〜外音取り込みオンになってるな〜と感じるホワイトノイズも一段と抑えられており、周囲が無音の状態でノイズキャンセリングと外音取り込みを切り替えるとどっちがどっちだかわからない。
音楽再生時も同様で、ノイキャンも外音取り込みも音楽を再生していて切り替えても違和感を感じないのが良いポイント。おそらくノイキャンをもっと特化しようと思えばできるのだろうが、快適性をしっかりまとめているように感じる。
音質面での第一印象は、SN感が向上して低域にモヤッとした響きがなくなり、全体的にメリハリが増したように感じること。ハイスピードでキレのある音にまとまっているが、低域はアタック感だけでなく、全身を包むような量感も兼ね備えている。
用意されていた試聴曲「BIA,JID/LIGHTS OUT」「Wizkid/IDK」の2曲はどちらも音が複雑でドラムのキックのような低域が効いている楽曲だが、力強い演奏をしっかり再現しながら、ボーカルがしっかりと主役の位置に立っている。
WH-1000XM5と比較すると、この2曲ではボーカルの存在感がグッと増していて、演奏とボーカルが別のレイヤーに居るような感覚になる。楽器の音は適度に混ざり合っているので、聴き疲れせずにずっと聴いていたくなる音に仕上がっていると思う。
手持ちのPixel 8aにLDAC接続して、「HACHI/ばいばい、テディベア(Accoustic Live)」を再生してみると、音の広がりがWH-1000XM5とは全然違う。立体的な音場を表現する「360 Upmix for Cinema」を切った状態でも、音の広がり方が2回りくらい広く感じる。試聴の際には是非ライブ音源も試してほしい。