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東芝、液晶TV事業は500億円弱の損失。2年連続赤字に

2012年度業績発表。減収、営業減益

 東芝は8日、2012年度(2012年4月~2013年3月)の連結業績を発表した。

 連結売上高は前年比4.9%減の5兆8,002億円、営業利益は4.1%減の1,943億円、継続事業税引前純利益は6.9%増の1,555億円、当期純利益は10.7%増の775億円となった。

 東芝の久保誠代表執行役専務は、「売上高は、社会インフラにおいて、国内外の火力発電、海外の原子力、エレベータおよび医用システムが好調であったのに加え、ランディス・ギアなどの社会システム関連も堅調に推移した。だが、デジタルプロダクツ、電子デバイスの減収、液晶ディスプレイ事業譲渡の影響があった。また、営業損益ではすべてのセグメントで増益となった。最終利益は事業構造改革費用増加の影響はあったが、為替決済差損益の改善、資産軽量化の効果が、増益につながった」とした。

 2012年度の構造改革費用は597億円となっており、これらの費用の主な使途は、映像事業の構造改革、ディスクリートおよびシステムLSIにおける構造改革、イオンフィナンシャルサービスへの全株式譲渡が決定した東芝ファイナンスの構造改革の3点をあげた。

TV黒字化に向けた構造改革の第2弾を計画

 セグメント別では、デジタルプロダクツ部門の売上高が前年比14%減の1兆4,327億円、営業損益は28億円改善したものの、マイナス244億円の赤字となった。

 「パソコンの需要減や国内を中心とした液晶テレビの市場縮小などにより、部門全体で減収になった。また、営業利益では、液晶テレビが事業構造改革を進めたものの、さらなる市場環境の悪化もあり、2年連続の赤字となった。パソコンは利益を確保するものの減益になった」と総括した。

 映像事業全体では、深谷工場の再編など大規模な事業構造改革によって、収益改善を目指していたが、結果的には、500億円弱の赤字が出たという。

 久保代表執行役専務は、「映像事業を改善させると約束していながら、年間で500億円弱の赤字を計上してしまった。大変申し訳なく思っている」と前置きし、「2010年度には2,400万台だった国内テレビ市場は、2011年度には1,600万台となり、2012年度は570万台となった。市場が大幅に縮小するなかで、在庫の拡販や生産調整を行なったが、2012年度下期からの欧米でのテレビ販売不振が響いた。また、今年1月以降は、日本では一定の販売改善がみられたが、円安が追い打ちとなり、それが計画未達の大きな要因となっている。現在、テレビ事業の第2弾となる大規模な構造改革を緊急で取りまとめている段階にある」とした。

 一方、パソコン事業は、売上高が前年比14%減の7,051億円、営業利益は51億円減の63億円と黒字を維持した。

 「国内は堅調に推移したものの、北米市場での需要減の影響を受けて販売台数が減少。継続的なコスト削減施策の徹底などにより利益を確保したが、コストの大半がドルベースであり、為替の影響も出ている。第4四半期は29億円の赤字が出ている」という。

 電子デバイス部門は売上高が前年比7%減の1兆3,353億円、営業利益は160億円増の914億円。社会インフラ部門の売上高は前年比6%増の2兆5,642億円、営業利益は68億円増の1,359億円。家庭電器部門は売上高が前年比3%増の5,915億円、営業利益が3億円増の24億円、その他部門が売上高が38.5%減の3,107億円、営業損失は330億円悪化となるマイナス118億円の赤字となった。

「2度と未達を繰り返さない」

 2013年度の連結業績見通しは、連結売上高は前年比5.2%増の6兆1,000億円、営業利益は33.8%増の2,600億円、継続事業税引前純利益は28.6%増の2,000億円、当期純利益は29.0%増の1,000億円となった。

 久保代表執行役専務は、「為替による影響で2,800億円の増収効果を見込んでいる。また、東芝テックにおけるIBMのPOS事業買収が年間で寄与し、半導体製造装置メーカーであるニューフレアテックの連携子会社化、社会インフラ事業における好調な受注などで1,600億円ある。この合計4,400億円にオーガニックな成長を見込む。今回の売り上げ計画は、2度と未達を繰り返さないという意思を持った数字」などとした。

東芝本社

 セグメント別では、デジタルプロダクツ部門の売上高が前年比4.7%増の1兆5,000億円、営業損益は494億円改善となる250億円の黒字転換を目指す。

 また、電子デバイス部門は売上高が前年比10.8%増の1兆4,800億円、営業利益は386億円増の1,300億円。社会インフラ部門は売上高が前年比10.0%増の2兆8,200億円、営業利益は341億円増の1,700億円。家庭電器部門は売上高が前年比11.6%増の6,600億円、営業利益が76億円増の100億円、その他部門が売上高が3.4%減の3,000億円、営業損失は82億円悪化となるマイナス200億円の赤字を見込む。

 「液晶テレビ事業は、2013年度第1四半期は50億円程度の赤字が残る。第2四半期からブレイクイーブンを目指す。事業成長に向けては、第2弾の構造改革による一層のコストダウンと、付加価値型製品をアジアの富裕層に対して販売するなどの展開を加速する。テレビ事業は苦しいのは確かだが、欧米市場を含めて、流通在庫がかなり正常化している。ただ、日米欧ともに、市場規模が想定よりも縮小したために、第2弾の構造改革を進める。アジアで利益が出る動きへとつなげていきたい」とした。また、「2013年度のデジタルプロダクツ部門の250億円の黒字は東芝テックの利益そのままである。テレビとPCは、円安基調のなかで、絶対に赤字にしないという姿勢で事業を進めていくことになる」と語った。

(大河原 克行)