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PCOCCに代わるケーブル用素材「PC-Triple C」

古河電工グループのFCMが開発

「PC-Triple C」の導体断面

 FCMは20日、オーディオケーブル用の銅素材として、独自の連続鍛造伸延方法を用いた「PC-Triple C」(Pure Copper-Continuous Crystal Construction/連結結晶高純度無酸素銅)を開発した。FCMは古河電気工業(古河電工)のグループに属しており、古河電工が2013年3月に製造・販売を中止したPCOCCに代わる新素材として開発された。今後メーカーに供給され、春頃には採用ケーブルが販売される見込み。販売元はプロモーションワークス。

 これまで、オーディオ用のケーブル素材として広く使われてきたPCOCC(単結晶状高純度無酸素銅)は、文字通り単一の結晶素材を使っているのが特徴。単結晶であるため、結晶と結晶の境目である結晶粒界が存在せず、その境目に不純物が入り込まないため、優れた導電特性を持っている。

 このPCOCCに代わるものとして新たに開発された「PC-Triple C」は、大きく2つの特徴がある。1つは、通常のOFCから鋳造時に、不純物が付着した数ミクロン単位の極微な異物をさらに除去する、独自の鋳造方法で製造された、古河電工の高純度無酸素銅(OFC)を使っている事。

 この銅素材は屈曲性や強度に優れ、オーディオケーブルに適しているほか、結晶粒界の不純物が極小であるため、微小信号まで伝達でき、さらにケーブル用導体として極細線まで引き伸ばす事ができる(大きな不純物がある場合、引き伸ばすとその部分で断裂してしまう)。しかし、単結晶素材ではなく、結晶粒界があるため導通特性はPCOCCには及ばない。

 そこで、この素材に対して、さらに「定角連続移送鍛造法」と呼ばれる作業を行なっているのが2つ目の特徴。この定角連続移送鍛造法は、OFCを一定の角度と方向を持たせた状態で、50%まで小圧力で数万回連続鍛造するもの。つまり、小さな力で、何万回も叩く工程となる。

 これにより、OFCの中で縦向きに並んでいた結晶構造が、横方向に“寝た”状態になりながら伸延されていく。これを続ける事で、結晶構造と粒界は細分化され、長手方向に並び、電流を遮る縦方向の結晶粒界も無くなる事で、電流がスムーズに流れるようになるという。さらに、鍛造する事で、導体内部の空礫なども消滅し、導通特性や音響特性に良い影響があるという。

鍛造処理をする前の導体断面
一定方向に連続鍛造していく事で、結晶と粒界が横方向に伸延されているのがわかる
50%(Sq比)まで鍛造した後の断面。結晶構造と粒界が細分化され、横方向に綺麗に並んでいるのがわかる。この状態になると電流がスムーズに流れるという
伸線後の導体断面。結晶同志が融着し、連続した結晶のように変化しているのがわかる

 こうして処理されたPC-Triple Cは、さらにケーブル細線へ伸延加工を施し、使用される導体の太さにより、それぞれ特定の温度、時間管理により焼鈍を行なう。これにより、銅結晶の結晶同士が融着。連続した結晶へとさらに変化するという。

 完成した線材は、1.3m径のもので、純度は99.996%以上、導電率は101.5 IACS%、抗張力は250MPa、伸びは35%。用途として、AV機器向けの各種ケーブルや、機器用内部配線材、スピーカーのボイスコイル、電源ケーブルなどへの利用が想定されている。

(山崎健太郎)