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クリプトン、ハイレゾ配信「HQM」でiOS向けクラウド配信。ユニバーサル参加で年内1,000タイトルへ
(2014/7/2 17:46)
クリプトンは、展開しているハイレゾ音楽配信サイト「HQM STORE」において、購入した楽曲をクラウド上に置いて、いつでも再生できるようにするサービス「HQMクラウド」を7月末から開始する。iOS端末向けにサービス対応のアプリ「HQM STORE Cloud Prayer」を無償で提供する。サービス開始時点で240タイトルが対応予定。価格は60分程度の楽曲で1,800円から。
さらに、7月11日からはHQM STOREの楽曲配信ラインナップに、ユニバーサル ミュージックが参加。11日の時点で50タイトル、年内を目処にジャズを約200、クラシックを約200、ポップス・ロックを約200の合計600タイトルを提供する。これにより、「HQM STORE」で現在配信されている350タイトルと合わせると、今年中に約1,000タイトルのラインナップになる予定。
HQMクラウドサービス
HQM STOREはこれまでクラシックやジャズを中心に楽曲をラインナップし、主にオーディオファンに利用されているが、ユニバーサル ミュージックの楽曲配信開始で、楽曲数やラインナップが大幅に拡充される。これに合わせ、よりカジュアルな使い方も提案し、ユーザー層の拡大を目指して導入するのが「HQMクラウド」となる。
HQM STOREでは現在、FLACでハイレゾファイルを配信。HQMクラウドがスタートすると、楽曲提供レーベルがクラウド提供を許可した楽曲に限り、新たにApple Losslessの48kHz/24bit、または44.1kHz/24bitのファイルの購入も選べるようになる。
楽曲購入時にApple Losslessの楽曲を選ぶと、FLACと同様にPCなどへファイルをダウンロードできるほか、クラウド上にあるApple Losslessデータがいつでも利用できるようになる。ダウンロード回数制限は無い。
このサービスに対応したアプリとして、iOSのiPad/iPod mini/iPhone対応の「HQM STORE Cloud Prayer」を無償で提供。同アプリは、iOS標準の音楽プレーヤー「Music」で管理されている音楽を再生できるほか、ユーザーの楽曲購入情報に基づき、HQM STOREで購入したApple Losslessの楽曲も、アプリのライブラリ内に表示。楽曲の横に、クラウドを示す雲のアイコンが表示される。
そのアイコンを触ると、クラウドからインターネット経由で楽曲を一旦端末へダウンロード。ダウンロードが完了すれば、そのままアプリ内で再生できる。なお、ストリーミング再生はできない。ファイルサイズの大きなハイレゾ楽曲を、常にiPadなどに保存するとストレージが不足するため、聴きたい時にダウンロードして楽しめる使い勝手を特徴としている。
HQMクラウドに対応した楽曲は、サービス開始時で240タイトル。価格は60分程度の楽曲で1,800円から。
なお、既にFLAC版を購入している楽曲でも、HQMクラウドを利用したい場合は、Apple Lossless版を購入する必要がある。クラウドサービス自体に追加料金はかからず、Apple Lossless版の楽曲を購入すれば、そのアルバムをいつでもダウンロード再生でき、ダウンロード回数に制限は無い。前述の通り、端末やPCにダウンロードし、ユーザーが保管する事も可能。オンラインストレージの制限容量なども無い。
「HQM STORE Cloud Prayer」アプリは、汎用のプレーヤーとして使うこともでき、iOSの標準音楽プレーヤー「Music」に登録されている楽曲を再生できるほか、ユーザーが持っているハイレゾファイルを転送/再生する事も可能。フォーマットはApple Lossless、FLAC、AAC、MP3に対応。「Music」で保存されている場合はWAV/AIFFフォーマットの再生も可能。カメラコネクションキットを使い、iOS端末とUSB DACを接続した場合は、192kHz/24bitのFLACまで再生できる。
また、アプリの機能として、音楽再生中に次に聴きたい曲を登録していく「テンポラリプレイリスト」が作成可能。アルバム/アーティスト/ジャンルごとの楽曲一覧表示も可能。HQM STOREへのリンクもアプリ内に備えている。
また、HQM STOREで配信されているブックレットやライナーノートなどのデータ付き楽曲の場合、音楽を楽しみながら、それらを閲覧できるビューワー機能も備えている。
HQM STOREのデザイン一新、ダウンローダーも機能強化
HQM STOREのデザインも新しくなる。トップページに「ショーウインドー」と呼ばれるメニューを用意。テーマごとにまとめられた売り場への入り口を担っており、クラシックやジャズといったジャンル別のショーウインドーもあれば、ノスタルジックな曲を集めた売り場や、ジャケットイメージからアルバムを選べる“ジャケ買い”用の売り場も用意される。
さらに、CDショップのように、HQM STOREのスタッフがオススメ楽曲をまとめた「お勧め」機能も用意。聞きどころやホットな話題などに合わせ、ユーザーにお勧めできる曲を紹介するという。
楽曲検索の多重絞込検索機能も強化。音楽のジャンル分けがよくわからない場合の検索もしやすくなった。
購入した楽曲をダウンロードするためのソフト「HQM ダウンローダー」も強化。Windows/Mac OS/Linuxのマルチプラットフォーム対応のソフトで、従来は伝送不具合のチェック機能がインターネット側にしか働いていなかったが、LAN側まで拡大。LANでの伝送時にエラーがあった場合でも、再度サーバーからダウンロードできるようにした。従来はインターネット側に問題がなければ、LAN内の伝送エラーは問題にならず、48時間が経過すると再ダウンロードができなくなっていた。
HQM事業室長の樋泉史彦氏は、HQMクラウドサービスの楽曲をApple Losslessの48kHz/24bit、または44.1kHz/24bitとした理由について、「オーディオマニア以外の人にもハイレゾの良さを楽しんでいただくためには、iPadが家で落ち着いて、じっくり音楽を楽しむには適したサイズだと考えた。そこで、iOSと親和性が高く、iPadからそのまま良い音で再生できるApple Losslessの48kHz/24bit、44.1kHz/24bitとした」という。
FLACでは192kHz/24bitなどで配信している楽曲でも、HQMクラウドでは48kHz/24bit、44.1kHz/24bitとなる理由については、「iPadの問題はストレージ容量が少ない事。そこでNASなどに保存して……となると、急にハードルが高くなってしまう。あくまでPCレスで楽しめるわかりやすさにこだわった。ファイルサイズが大きくなると、ダウンロードに時間がかかり、快適に楽しめない。無線LANを使わない場合は、通信の制限も問題になってくる。検証の結果、48kHz/24bit、または44.1kHz/24bitが適していると判断した」という。
クラウドサービスを開始した理由については、「HQMのサービスを開始した当初は、iTunesが伸びざかりでCDをどんどん上回っていたが、最近では一時期の勢いが無くなってきた。CDやアナログレコードなど、メディアの切り替えは約20年のスパンで来ているが、iTunesのようなダウンロード配信はその半分ほどの10年くらいではないか? そして、その次に来るものは5年くらいでチェンジするのではないかと考え、新たなサービスを用意した」と説明した。
クリプトンの濱田正久社長は、「音楽事業に15年携わっているが、参加した以上、競争するのではなく、新たに“何かの市場を作っていこう”という事を会社の目的としている。アクセサリ、音楽配信、ハイレゾ対応オーディオシステム、これら全てを用いてハイレゾワールドを作っていこうと、今年は邁進していく」と決意を語った。
ユニバーサル ミュージックのタイトルを配信開始
7月11日からユニバーサル ミュージックの楽曲50タイトルを配信開始。価格はアルバム1枚、約3,000円。年内を目処にジャズを約200、クラシックを約200、ポップス・ロックを約200の合計600タイトルの提供が予定されている。なお、ユニバーサルの楽曲は「HQMクラウド」には対応していない。
ユニバーサル ミュージックでは、Deutsche Grammophon、DECCA、EMI、Blue Note、Verveなど20以上のレーベルを傘下としており、11日の時点では「アントニオ・カルロス・ジョビン/イパネマの娘」、「クインシー・ジョーンズ/ソウル・ボサ・ノヴァ」、「ドナ・サマー/ダンス・コレクション」、「ノラ・ジョーンズ/カム・アウェイ・ウィズ・ミー」、「マイルス・デイヴィス/マイルス・デイヴィス ボリューム1」、「加藤登紀子/広島 愛の川」などをラインナップする。
ユニバーサル ミュージックのセールス・マーケティングMD代行 兼 戦略本部の深尾尚宏本部長は、ユニバーサルについて、「昨年EMIを合併統合し、名実ともにナンバーワンのレパートリーを誇る会社となった。レディガガ、ローリング・ストーンズ、新たにカタログとしてビートルズも取扱い、日本のアーティストでは福山雅治、ドリカム、松田聖子、ユーミンなどもある」と、取り扱うアーティストの幅広さを説明。
一方で、「ドイツ・グラモフォンがもともとの成り立ちであるため、クラシックに強いレーベルでもある。そこにBlue Noteも加わり、クラシックとジャズでもナンバーワンと言える。また、高音質を昔から追求しており、SACDやDVDオーディオも展開し、2007年にはポリカーボネートを使ったSHM-CD、昨年には純プラチナを採用した高音質ディスク・プラチナSHMも発表した」と、音質にこだわるレーベルである事も強調。そうした取り組みの中に、ハイレゾ配信サービスへの楽曲提供があるという。
「海外の本社を含めて、事業ドメインで一番伸びているのがハイレゾの配信。パッケージやダウンロードが頭打ちになる中で、ハイレゾの売上は倍々で伸びている。海外から見ても、日本はハイレゾが盛り上がっており、対応機器も切磋琢磨され、配信サービスも盛んだと見られている。ユーザーは男性が9割だが、年齢層が以前は50代、60代がピークだったが、昨年と今年は40代がボリュームゾーンのセンターになる。市場が成長する時には、ユーザー層の変化があるものだが、爆発的に広がる予兆が見えているというのが我々の見立てだ」と、今後のハイレゾ配信の盛り上がりに期待を見せた。