ニュース

Klipsch、スリムBAイヤフォン「X10」復活。約19,800円。完成度の高いフルレンジサウンド

 フロンティアファクトリーは、米Klipschが2007年に発売し、日本では2008夏から販売されていたカナル型イヤフォン「Image X10」を復活させる。型番をシンプルな「X10」とし、7月25日に新たに発売。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は19,800円前後(税抜)。「Image X10」の発売開始当初の価格は39,800円(消費税5%込)だった。

復活した「X10」

 型番はシンプルになったが、イヤフォンとしての仕様に大きな変更はない。当時、日本上陸第1弾の4モデル中、最上位のモデルとして登場。その後約3年間販売されたが、現在は販売を終了。しかし、復活を期待する声が多く寄せられていたという。なお、アジア地域限定での復活となる。

イヤーピースを外したところ

 小型のフルレンジ・バランスド・アーマチュアユニット「KG 926」を1基搭載。スリムなハウジングも特徴。再生周波数帯域は5Hz~19kHz。インピーダンスは50Ω。遮音性は-26dB。

 入力プラグはステレオミニ。「Image X10」はプラグが斜めにカーブした独特の形状だったが、X10ではストレートプラグになっている。

 キャリングポーチ、5サイズのイヤーピース「Oval Ear Tips」も同梱する。

「Image X10」の入力プラグ。カーブしていた
X10の入力プラグはストレートに
5サイズのイヤーピース「Oval Ear Tips」
キャリングポーチも同梱する

音を聴いてみる

X10

 日本に上陸した2008年、他の第1弾モデルも含めて「Image X10」もレビューしたが、それから約6年、「X10」が復活した。イヤフォンというよりも、ケーブルの先端が少し太くなっただけのように見えるスリムなハウジングは、登場当時非常に鮮烈だった。そのインパクトは、今見ても色あせていない。

 光沢のある赤みがかったゴールドのKlipschカラーも手伝い、“エレガント”という形容詞が似合うデザインだ。カナル型イヤフォンは、耳穴にピッタリはまる形状を追求する事で、カスタムイヤフォンを筆頭に、昨今はどちらかというと複雑な形状の製品が増えている。X10のシンプルなフォルムは、逆に新しさも感じさせてくれる。

 デザインでけでなく、あえてシングルのBAドライバを細身のハウジングに搭載し、耳の奥までキッチリ挿入し、シングルながら量感のある低音を出しつつ、シングルの利点と言える上から下まで繋がりの良い音を味わうというスタンスも斬新なものだった。ファイナルオーディオデザインなど、似たコンセプトのイヤフォンを手掛けるメーカーもあるが、市場にあるイヤフォンの多くはBAユニットを多数搭載したマルチウェイタイプであり、内部構成的にも、いまだ“斬新”なイヤフォンと言っていいだろう。

AK120IIと組み合わせたところ

 AK120IIと接続、192kHz/24bitの「イーグルス/ホテルカリフォルニア」を再生してみる。

 X10の音は良く知っているつもりだが、久しぶりに聴くと、この細いイヤフォンから、どうしてこんなに分厚い低音が出るのかと改めて驚かされる。BAを6基、12基など搭載するマルチウェイの高級イヤフォンと比較すると、最低音の低さは及ばない面があるが、肉厚でゆったりとした心地良い低音はシッカリと出せている。

 また、シングルBAイヤフォンならではの、繋がりの良い、自然で無理のない再生音が一番の魅力だ。豊かな低音が出る一方で、中高域の明瞭さも維持されており、それらの音がバランス良く耳に入ってくる。特定の帯域だけ主張が激しかったり、音が力強く出ている帯域と帯域の間にスコンと谷間があるような音ではなく、ダイナミック型イヤフォンを連想させるようなまとまりの良い音が大きな特徴だ。それゆえ、あら探しをせず、落ち着いて音楽を楽しめる。改めてX10の完成度の高さを確認できた。

 マルチウェイBAイヤフォンをいろいろと聴いてきた後で、今再びここに戻ると、シンプルさというか、原点回帰的な良さも感じる。懐かしいと感じる人だけでなく、名前は知っているけれど、聴いた事がないまま販売が終了していた……という人もいるかもしれない。復活を機に、一度聴いてみるのも面白いだろう。

(山崎健太郎)