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ソニー、メガネ型端末「SmartEyeglass」を'14年度内に発売
「主役は現実世界」。開発者向けに先行発売、SDK公開
(2014/9/19 14:47)
ソニーは透過式メガネ型端末「SmartEyeglass(スマートアイグラス)」を開発し、19日に開発試作機を国内で初披露した。開発者に向けて、ソフトウェア開発キット(SDK)を9月19日より提供し、SmartEyeglass本体を2014年度内に開発者向けに発売する。価格は未定だが「他社のメガネ型ディスプレイに比べ大きく違う価格帯ではない」(同社)としている。一般向けの発売も予定しているが、時期は未定。
SmartEyeglassは、スマートフォンからの画像や文字情報を受け取り、メガネの中に投影して、外の風景と重ねて見ることができるもの。IEEE 802.11b/g/n無線LANとBluetoothを内蔵し、スマートフォンからBluetoothで受信した文字や図形、写真などの情報を表示する。スマホアプリからBluetoothまたは無線LANを使ってSmartEyeglassに情報が転送され、両眼向けにレンズの下方領域に表示され、実際の風景と重ねて見られる。表示位置などの調整は不要。
本体の側面から高輝度のLEDを投写して、薄さ3mmのレンズ内に埋め込まれたホログラムによって光を反射させることで目の前にモノクロ(色はグリーン)で文字などの情報が、256階調/419×138ドットで表示される。透過率は85%以上、明るさは1,000cd/m2。ソニー独自のホログラム光学技術によりハーフミラーを使わずに高い透過性を持った薄型レンズを実現したという。
ホログラム導光板の薄さは1mmで、幅は約50mm。入射側ホログラムと出射側ホログラム(光学コンバイナー)を備え、マイクロディスプレイと緑色LEDで構成された光学エンジン部からの映像を、入射側から反射させながら導光して出射側へ表示する。導光板の外側には傷防止のレンズ、内側にはくもり防止のレンズを備えるため、レンズ全体では薄さ3mmとなるが、今後は更なる薄型化も目指す。
カメラも内蔵し、約300万画素の静止画や、640×480ドットの動画も撮影できる。加速度センサーやジャイロスコープ、照度センサー、電子コンパス、マイクも備える。有線のコントローラ部にスピーカーも内蔵する。重量はメガネ部が約77g、コントローラ部が約44g。なお、カメラ起動中は前面に赤いランプが点灯し、撮影中であることを周囲の人が分かるようにしている。
Androidスマートフォンとの連携を想定し、対応OSはAndroid 4.1以降。なお、カメラのビデオ機能を利用する場合はAndroid 4.3以降が必要となる。
視力矯正のメガネに重ねて使用することはできないが、ノーズパッド部は着脱でき、ディスプレイの矯正用のレンズだけを追加することもできるという。
有線接続のコントローラ部は、円形の一部が欠けたようなデザインで、くぼんだ部分のタッチセンサーでメニュー操作などを行なう。このほかにも、ハードウェアのボタンとしてカメラ撮影用や、音声操作用、メニューの「戻る」のボタンを装備。また、BluetoothやWi-Fi利用時に点灯するインジケータも備える。
試作機では、バッテリはコントローラ部に内蔵。バッテリ持続時間は、カメラの利用や通信の有無などによって大きく異なるため公開していないが、例として500cd/m2の明るさで表示してBluetooth接続し続けた場合は2時間30分~3時間利用できるという。
1月の「2014 International CES」と、9月初頭の「IFA 2014」で参考展示されたが、国内では初公開。ケイ・オプティコムやACCESS、ゼンリンデータコムといったパートナー企業が協力。SNSや道路のナビなど、様々なコンテンツ(アプリ)と組み合わせた形で体験できるようになっていた。
基本的な考え方としては、視界を覆って映像に没入するヘッドマウントディスプレイのようにリッチな映像を表示するのとは異なり、目に見える風景をなるべく邪魔せずに情報を得られるようにすることを目指しているおり、表示領域や色などは限定している。用途としては、産業向け用に絞らず、広く一般向けに開発しているという。スポーツ会場での情報表示や、道路のナビゲーションなどの利用も想定している。
19日より、開発者向けサイト「Sony Developer World」においてSDKを一般公開。エミュレータやサンプルコード、APIリファレンス、チュートリアル、設計マニュアルとガイドラインをダウンロード可能となっている。これを元にスマホアプリなどの開発者は対応アプリを制作できる。
SNSやスポーツ、旅行にSmartEyeglassを活用
説明会では、CESやIFAにも来場していたソニーのデバイスソリューション事業本部 SIG準備室 統括部長の武川洋氏が、SmartEyeglassのコンセプトを紹介。アプリのデモなどを行なった。
SmartEyeglassの原型と言えるのが、'12年3月から北米の映画館チェーン「Regal」で導入された字幕表示メガネ「STW-C140GI」。これは聴覚に障害を持つ人向けのもので、それまでは手元に直視型のディスプレイを持って映像と字幕を交互に見るという方法だったが、映像に集中できないという不満があったという。そこで、このメガネ型ディスプレイは字幕を表示する奥行きを調整できるため、どの席からでも字幕が劇場のスクリーンと重なって見えるのが特徴。
一方、民生向けに開発中のSmartEyeglassは、これまでCESやIFAといった展示のほか、「Wip-jam」(2月)でアプリ開発者向けにデモも実施。CESでは4日間で8,000人以上、IFAでは6日間で約5,000人が体験し、見やすさやレンズの透明度の高さなどが評価され、デザインについても「大きめのスポーツグラス程度で、普通のメガネと比べて違和感がない」といった反応だったという。
ソニーのパーソナル3Dビューワとして展開しているHMDの「HMZシリーズ」のような没入感を求めるのではなく、「主役は常に現実世界で、邪魔にならないシンプルな情報表示にフォーカスする」という。
このSmartEyeglassとSDKを使ってアプリなどを開発する企業も来場し、今後の正式サービス開始を目指すアプリなどのデモが行なわれた。
ユークリッドラボは、自分の近くにいる人がSNSに発信した情報を自動解析し、リアルタイムでスマホに表示するアプリ「Loca!ive」(ローカライブ)を提供している。今回はこれをSmartEyeglassと連携するデモを実施した。ツイートなどをSmartEyeglassの画面に1件ずつ自動更新で表示するほか、SmartEyeglassのカメラで撮影した写真と、音声入力した文字を投稿することができる。
「eo光」などのサービスを展開しているケイ・オプティコムは、トレーニング向けアプリ「ハシログ」とSmartEyeglassを連携したサービスを、「大阪マラソン2014」(10月26日開催)においてACCESSと共同でトライアル。走行タイムやラップタイム、トイレの混雑状況、名所情報、家族や友人からの応援メッセージなどをSmartEyeglassに表示させるという。
ゼンリンデータコムは、SmartEyeglassに特化したスマホ用の歩行ナビアプリとして、「光で導く」という考え方を提案。これは、目的地の建物など検索/入力すると、そこを“光の柱”のように表示し、それを目指して進むと、近づくほど光が大きくなる。目的地までの直線距離も表示できる。また、カーナビのように、矢印と推定時間で表示する通常案内モードも用意する。
ソニーがデモしていたのは、同社のカメラなどで採用されている顔認識技術を元にしたもので、SmartEyeglassを掛けて人の顔を見ると、その人の名前や肩書、顔写真などをディスプレイに表示するというもの。今回のデモではデータをスマホ端末内から取得して表示しているが、SNSなどのデータを活用することなども検討している。
また、「Wikitude City Guide」という旅行向けツールも開発中。AR(拡張現実)技術により、ハンズフリーで名所などの位置や関連情報を確認しながら旅行を楽しめるというもので、スマホのARアプリのように、実際の建物などの風景に、その名前などの情報を重ねて見ることができる。WikipediaやTripAdvisor、Yelp!、Hotel.comなどのコンテンツとの連携も想定している。