ニュース
パナソニック津賀社長とシャープ高橋社長が語るCEATECの手応え
テクニクス・円安、くるま。8K&クラウド+ロボット
(2014/10/7 16:25)
CEATEC JAPAN 2014の開催初日となる10月7日、電機大手の経営トップが相次いで会場を訪れた。各社トップが自社ブースを見学するとともに、他社ブースを訪問。各社の代表的な展示について、トップ同士がお互いに説明しあう姿が会場のあちこちでみられた。なかでも、パナソニックの津賀一宏社長と、シャープの高橋興三社長は、自社ブース前で報道陣の質問に答え、CEATEC JAPAN 2014の展示内容の狙いなどについても言及した。パナソニックの津賀社長と、シャープの高橋社長の会場でのコメントを掲載する。
パナソニック 津賀社長が語る「テクニクス・円安・くるま」
──テクニクスを復活させた狙いはなにか。
津賀:過去10年間は映像系に重きをおき、技術開発、製品開発を行なってきた。だが、結果として、テレビの薄型化が進むなかで、なかなかいい音が出せなかった。将来、映像と一体化するかどうかはともかく、音を強化するためには、一度、ピュアなオーディオに戻る必要があると考えた。その際に、テクニクスが持つ原音を忠実に再生するという技術資産と、ハイレゾオーディオという新たな技術を組み合わせた。時代の流れに沿った形で復活させたといえる。
テクニクスというブランドは、多くの国で好印象を持ってもらっている。過去に投資してきたブランドを活用して、新たな世界を立ち上げるというのが今回のテクニクスブランドの使い方である。パナソニックは、テレビメーカー、とくにプラズマテレビメーカーとしてのイメージが定着していたが、これからは家電だけでなく、クルマもやる、住宅もやるというように企業のイメージが変わっていくことになる。プレミアムなイメージ、憧れの暮らしといったイメージを持たせるという意味でも、テクニクスは活用できる。
──中期経営計画が折り返し地点に入った。2015年度の営業利益3,500億円以上、営業利益率5%達成への手応えはどうか。
津賀:3年間の中期経営計画の1.5年は極めて順調である。みんな頑張ってくれているし、運も良かった。前倒しして、早く実現できるに越したことはない。フリーキャッシュフローで累計6,000億円という目標は達成したため、いまは営業利益の達成に力を注ぐ。
そして、営業利益達成が、前倒しになる可能性もないとはいえない。だが、いつに前倒しになるのかということは言えない。気持ちとしては、加速したいと思っている。営業利益率5%の達成については為替の影響もあり、一概にはいえないが、私は、43事業部のすべてに営業利益率5%以上の達成をお願いしている。半分の事業部が5%以上を達成し、半分以下が5%に届かないということでも、平均すると5%に達するというのがまずは目標だ。5%の達成が難しい事業部もあるのも事実だ。全部の事業部が5%以上を達成すると、トータルでは、さらに高い営業利益率になる。
──円安の進行が進んでいるが、その影響はどうか。
津賀:事業計画では1ドル105円を想定しており、それよりは安く振れている。この円安が一時的にどう影響するかというよりも、長期的にどうなっていくのかが重要。為替が動くことが事業を難しくする。円安、円高はともにメリット、デメリットがあるのは事実であり、当社の事業をみても、メリットとなる事業と、デメリットとなる事業が半々に分かれている。だが、それよりも為替の安定化が大切である。為替が安定すれば、いまの水準が悪いとは思っていない。ただ、これが115円、120円になると円安が進行しすぎだという判断になる。
──テスラとの協業が進んでいるが。
津賀:個別の自動車メーカーとどんな技術で協業するのかといったことは事業の性質上、話すことはできない。それぞれのカーメーカーの期待に応えられるように、別個に開発するものもある。自動運転についても、すべてをやるというのではなく、駐車アシスト、前方の認識技術などといったように部分ごとにやっていくことになるだろう。これは、すべてのカーメーカーが対象にとなり、協業の機会があるもので、テスラも対象外ではない。だが、テスラとやるのかどうかは言えない。
二次電池の生産拠点への投資は、テスラに向けて電池を供給する専用工場への投資であり、テスラがいつからどんな規模でクルマを生産するのかといったことに追随していく。我々の電池の供給能力が足りないため、テスラがクルマを作りたくても作れないという状況はなんとしてでも回避する。
だが、大きな投資を一気に行なうと、投資のリスクとともに、立ち上げのリスクも発生する。人で工場が作られるため、安定した品質でモノづくりをするにはステップを踏みながら工場を立ちあげていくことが必要となる。これによって生産量を高める。時期についてはテスラの要求に遅れないように、ということになる。生産拠点は、現時点では、整地を進めている段階であり、最初の規模は数100億円。量産化にあわせて、同様の規模の投資を積み重ねていくことになる。
8K、クラウド+ロボットを提案するシャープ高橋興三社長
──今回のCEATEC JAPAN 2014のシャープブースはなにを展示の目玉にしているのか。
高橋:CEATECの原点に返って、8Kに代表されるテレビについても数多くの製品を展示し、そこにも手を抜いていないということを訴えた。さらに、「ともだち家電」による白物家電の展示にも力を注いだ。ココロエンジンや、スマホに搭載したエモパーなど、クラウドを使いながら、ロボットのようなものを提案しているのも特色のひとつだ。
今回のシャープブースのテーマは、「Discover Good Life」であり、生活に安らぎと安心感を与えたいと考えた展示を行なっている。いわば、BtoCにフォーカスしたものにした。BtoBが収益改善の鍵になるといわれるが、我々が力を発揮できるのはBtoBtoCの領域になる。
──液晶テレビの次の柱になるものはあるのか。
高橋:売上高構成比の3分の1弱が液晶。様々なプロダクツ関連が6割ある。今回、お見せしたように、白物家電だけでなく、スマホ、テレビなどにも、ココロエンジンを活用するといった提案を行なっていきたい。
──8Kの展示をはじめ、新たな技術開発が進んでいる感じがするが。
高橋:経営環境が厳しくなり、整備投資は抑えたが、研究開発投資は抑えていない。それをやめたら、シャープは終わりだ。
──今年は、CEATEC JAPAN 2014において、ソニーが展示をやめたが。
高橋:まだすべてをまわり切れているわけではないが、自動車メーカーが出展していたり、富士通や東芝が植物栽培の展示をしていたりと広がりがある。ソニーが出展していないのは寂しいが、オーディオ、ビジュアル関連の展示会が変化しつつあるなかで、企業がそれを模索している段階にあるのではないか。シャープブースは、今年は家庭内を中心とした提案だが、来年はもう少し違う世界の提案などが出せたらいいと考えている。
──中期経営計画が折り返し点を迎えたが、手応えはどうか。
高橋:決して楽にこれたわけではないし、今年度前半も厳しかった。社員の努力だけでなく、多くの支えていただいている方々のおかげがここまできている。折り返した後半においては、最初の計画立案から1年半経っていることから、全般的な見直しをしなくてはいけないだろう。むしろ、同じままだったらおかしい。昨年5月の社長就任時に、2016年度以降にビジネスになるものとして、5つのカテゴリーを設定した。このうちのいくつかが小さな商売として現実化している。こうしたものを踏まえて見直しをしたい。
──欧州の構造改革に踏み出し、AVおよび家電製品に関してシャープブランドを貸与したビジネスを開始するが。
高橋:欧州における「構造改革」という切り口での取り組みは終わったといえる。これからは、残ったビジネスをどうするか、どう伸ばしていくかということになる。また、この提携は、単純なブランド貸しのビジネスではなく、シャープが設計した製品、生産したものも売ってもらうことであり、販売部門をお願いしているという姿勢の方が強い。家電そのものが変わるなかで、新たなビジネスと位置づけている。
一方で全世界を見渡すと、東南アジアが伸び率が思ったほど強くない。ここをどうすするかが課題といえる。米国ではスマホは、反響は良かった。だが、これがこれからどうなるかわからない。100ドルスマホが登場するという話があるが、シャープとして、いろんなことを考えたい。今回お見せした「エモパー」がどれぐらいの支持を得るのかわからないが、それもポイントのひとつになるだろう。中国は、テレビは割と順調に伸びている。ただ気にしなくてはいけないのは流通の動き。ネットへの対応がどうなるか。マージンが違うのでその差がどうなるかが気になる。