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ヘッドマウント映像でVRがさらに進化。「3D&バーチャルリアリティ展」

 「第23回 3D&バーチャルリアリティ展」が6月24日に開幕した。会場は東京ビッグサイトで、期間は6月26日まで。3DやVR(仮想現実)などの映像技術だけでなく、出力機器である3Dプリンタも数多く展示されている。入場は無料だが、事前申し込みが必要。なお、同期間は「日本ものづくりワールド2015」として、「設計・製造ソリューション展」や「機械要素技術展」なども併催されている。

3D&バーチャルリアリティ展

HMD映像を見ながらエンジン組立て、ヘッドマウントカメラで表情からCGキャラ作成など

 展示の中で特に目立つのは、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を使ったVRやAR(拡張現実)を、工場などの作業に活かすというデモ。エプソンが23日に発表した「MOVERIO Pro BT-2000」や、キヤノン「MREAL」などを使った体験デモが用意されている。

 画像処理ソフトの開発やハードウェアの輸入販売などを手掛けるクレッセントのブースでは、「MREAL」を活用した「エンジン組付シミュレータ」を紹介。これは、車のエンジンを組み立てる作業をVR映像を見ながら仮想で体験しつつ、体験者の姿も“3Dマネキン”のデータとしてアーカイブ化することで、正しい姿勢や動作などを社内で共有可能にするもの。既に自動車メーカーへの販売に向けて話が進んでいるという。

クレッセント「エンジン組付シミュレータ」のデモ

 ヘッドマウント型のMREALを被り、手足や胴を含め10カ所のマーカーを装着。英Vicon製のハンドヘルドトラッキングツール「Apex」を手に持って操作する。手元のボタンを押すと、VR映像では実際の手に電動ドライバを持ったような姿に変わり、作業を体験可能。正しい場所にドライバーを接触させるとコントローラの振動と音声で通知し、誤っている場合は別の音と振動で注意を促す。これにより、映像や音声のマニュアルに従いながら正しく組立てられる。さらに、もう1台のMREALで作業している人の様子をとらえると、その人の動作が正しいかどうかなどを確認可能。

ヘッドマウントディスプレイと、コントローラ
全身にマーカーを装着

 VRによる“見える化”から、さらに一歩進んだ形として、装着者以外にも情報を共有できるような今回のシステムを提案。今後は、心拍数や視線といった情報の活用なども検討している。クレッセントはアーティストのライブステージ映像やゲームなども手掛けており、今回のような作業向けVRだけでなく、エンターテインメント向けへのVR活用も様々な形で進めているという。

HMD装着者の見ている映像。コントローラの部分が電動ドライバに
装着者の映像も3Dマネキンとして記録される

 クリスティ・デジタル・システムは、24日に発表した4K/3D対応プロジェクタ「Christie Mirage 304K」以外にも、業務向けの映像製品を紹介している。「HoloDesk2 with TechViz」は、マーカーが付いた3Dメガネを装着してディスプレイ上の3DCGを見ると、様々な角度から対象物を眺められるというシステム。

HoloDesk2 with TechViz

 今回のデモでは、画面にCGで表示された部品の向きを変えると、それをつなぐケーブルのどの部分にどの程度の負荷がかかるかをサーモグラフィのように色分けして表示。手元のコントローラで配置を変えながら、様々な角度から眺めてどの配置が適切かを判断できる。ディスプレイは2,560×1,600ドットのリアプロジェクション型で、光源はLED。

リアプロ方式のディスプレイで表示された映像
マーカー付きの3Dメガネ。奥に見えるのがトラッキングセンサー
ケーブルの青い部分は負荷が低く、赤に近いほど高いことを示す。コントローラで操作しながら、どの向きが最適かを判断

 また、工業デザイナーなどプロ向けの84型4Kディスプレイ「Christie QuadHD84」と、LUMISCAPHE(ルミスカフ)のソフト「P3D」を組み合わせて紹介。P3Dは、オリジナルのCADデータをDAM(デジタルアスペクトモックアップ)に変換し、レビュー用の3D画像をリアルタイムで作成可能というもの。

Christie QuadHD84とLUMISCAPHE P3Dのデモ

 このほかにも、小型のディスプレイモジュールを並べて大型のビデオウォールを作れる「Christie MicroTiles」を使ったデモ「小人が住まう黒板」も行なっている。画面にタッチすると、画面内を動き回る小人にちょっかいを出せるというもの。

「Christie MicroTiles」のデモ

 ナックイメージテクノロジーのブースで展示されていたのは、ヘッドマウントカメラ(HMC)を装着した人の表情から、リアルなCGキャラクターを作成できるというシステム「Dynamixyz Performer ソフトウェア & HMCシステム」。映画やゲームなどのコンテンツに活用されているほか、ライブでアニメーション化するといった演出も可能にするという。HMC以外に、一般的な固定カメラでも利用可能だが、HMCを使うと頭の位置が固定されるため高精度に認識できるのが特徴。

ヘッドマウントカメラで撮影した映像から表情を解析
CGキャラに表情を付けられる
ファロージャパンは、レーザー照射のスキャニングシステム「FARO Edge ScanArm HD」をデモ。本体を移動できるのがポイントで、測定室などに持ち込めない大きな部品の計測などに活用できるというWi-Fi/Ethernet/Bluetooth/USB接続に対応し、一台のパソコンから複数台の測定器を管理できる
日本バイナリ―は、Alioscopy製の裸眼3Dディスプレイを展示。31.5型の4K(3,840×2,160ドット)は約200万円、HDは21.5~55型を用意。写真の24型は約80万円。3Dはレンチキュラー方式で、サイネージなどに利用されているという

3Dプリンタも数多く展示

 3D&バーチャルリアリティ展と同じ東3ホールでは、併催の「設計・製造ソリューション展」の3Dプリンタ/RPゾーンがある。多数展示されていた3Dプリンタの中から一部を、プリンタによる出力例と共に写真で紹介する。

協栄産業は、ProJet 5500Xなどの本体と作成例を多数展示
ローランド・ディー・ジーは、「MODEL A PROII MDX-540」専用のカバーやスタンドを参考出品
ローランドと大学などのコラボレーションも
丸紅情報システムズは、ストラタシス製の3Dプリンタ「Fortus」や、ライトウェイトスポーツカー「CIPHER」開発への3Dプリンタなどの活用例を紹介
NTTデータエンジニアリングシステムズは、ハイエンド3Dプリンタ「EOS」シリーズでの作成例などを展示

(中林暁)